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夜は人の判断力を鈍らせる
だから私は夜にこそ決断を下す
第三埠頭
存在しないはずの取引場所
私は少し離れたビルの屋上から
双眼鏡越しに海沿いの闇を見下ろしていた
風が冷たくコートの裾がわずかに揺れる
et
予定時刻よりも2時間も前
倉庫の影に車のシルエットが見えた
一台、二台、
慎重すぎる程慎重な動き
ノクスの人間だ
et
通信越しにurの声が返る
ur
et
私は双眼鏡の焦点を合わせる
車から降りてきた人物の顔を、一人ずつ確認する
et
ur
urの声がほんの少しだけ低くなった
et
et
ur
urが続きを言う
私は何も言わず肯定の沈黙を返した
頭の中で、情報が組み替えられていく
誰が、何を知っていて、何を隠しているのか
その中にどうしても一人だけ思考から排除できない存在がいる
et
ur
et
et
通信が一瞬だけ途切れたような気がした
ur
即答
速すぎる
et
私はそれ以上追求しなかった
疑うなら最後まで
中途半端な問は相手に逃げ道を与える
だが胸の奥で嫌な感覚が広がる
ーー疑っている
それなのに彼の声を聞くと安心してしまう
それが、1番危険だった
ur
et
私は双眼鏡を下ろし端末を操作する
et
et
ur
et
et
urは少し考えた後、短く答えた
ur
その声はいつもと変わらない
だからこそ、私は余計に分からなくなる
彼は本当に何も知らないのか
それともーー
全てを知った上で演じているのか
夜明け前
事務所に戻った私は
集めた映像と記録を机に並べていた
第三埠頭に集まった幹部たち.彼らが受け取った情報経路。
線を辿っていくと、必ず同じ場所で止まる
et
名前のない空白を見つめた
直接的な証拠はないだが、逆に不自然なほど何も残っていない。
その時、ドアがノックされる
et
urだった
ur
et
彼はコーヒーを二つ机に置く
いつもの癖.私が飲む前提で、砂糖は入っていない
ur
urは私の向かいに座り資料に目を落とす
et
ur
et
私は彼を見る
et
urは一瞬だけ目を伏せた
ur
その反応を私は見逃さない
et
ur
et
彼は少しだけ笑った
ur
et
ur
この軽さが怖い
私はふと思ってしまう
もし彼が裏切り者だったら
もし、彼が自分を利用しているだけだったら
それでも
自分は引き金を引けるのだろうか
ur
urが珍しく真剣な声で言う
ur
ur
私は間を置いて答えた
et
ur
et
嘘だった
urはその嘘に気づいたのか、静かに微笑む
ur
その言葉が何故か胸に刺さる
夜は少しずつ明けていく
だが2人の間の闇は確実に深くなっていった
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