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桃赤

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桃赤

1 - 第1話

♥

580

2025年04月07日

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16時

教室はがらんと静まって

さっきまでの賑やかな声はなくなる

窓側の席に座ってぼーっと空を眺める

夕日と冷たい風

この時間が好きだ

それと

よ、りいぬ

この人

お待たせ。行くか

うん

この時間が好きなのは

それだけじゃなくて

今日ここ空き教室だから

鍵は?

ちゃんとあるよw

空き教室

それが

2人だけの秘密の場所

教室に入ったとたん

ドク、ドクと心拍がだんだん早くなるのがわかる

多分これは緊張

でも

こいつに知られるのだけは嫌だ

図に乗るし。

何より

そういう関係じゃないし

可笑しいだろ

カーテン閉めるからそこ座ってて

わかった、

ぱちん、と1つずつシャツのボタンを外す

電気は?消そうか

ぁ、いい、消さないで

キョトンとした顔をみせる

いつもなら消すのに、って言いたげ

な〜に?w顔みてシたくなっちゃった?

ホントに、いつもうざ

...早くしろ

否定しないんだ、かわい

真っ黒なスーツからふと香るこの匂い

落ち着く

近付いた時にだけ香るのがずるい

大人って感じがして

少し寂しい

っま、て...もっと、優しく、

...ん、わかった

でもこの匂いに包まれてると

この人が、先生が

ちゃんと今はここにいるんだって安心する

ぁ、っも、むりっ......//

...っいいよ、

首に手を回して

ぎゅっと力を込めると

あっちの熱も伝わってきて

俺と先生の体温が同じくらい熱くなってることがわかる

嬉しい

はい。大丈夫?

タオルと飲み物を渡される

俺が好きな校内の自販機のジュース

いつもより激しくしてごめんね

確かにいつもより激しかった、かも?

夢中で気づかなかった

......まあ別に。いいけど

顔みると、ダメだった

っんぐ、っ...ゲホッ...ゴホッ

びっくりして飲み物でむせてしまう

おいおい、!大丈夫か?

それって

ほらタオルあるから、体も拭けよ

...ありがと、

ってやば、部活もとっくに終わってる

そろそろ帰らないと下校時間過ぎるな

俺は帰宅部だから部活時間に先生とたまに会うようにしてる

でもバレたら流石に不味い

もう帰らないといけないのか

あ、うん、おれ帰るね

今日は仕事終わってるし車で送るよ

あの匂いがいっぱいの車

先生の、くるま

いつもは落ち着くはずなのに

落ち着かない

りいぬ?

っえ、ぁ、なに?

だから、お前ほんとに大丈夫?熱でもあるのか?

ちが、車...落ち着かなくて

ふは、wなにそれ、今度ドライブデートでもする?

ムカつく

どうせ出来もしない約束を

ヘラヘラとしやがって、!

放課後の約束も

どうせずっとは続かないのに

ヘラヘラしてて、呑気で。

この関係が終わってもいいって思ってるんだ

あれ、でも

"この関係"

って何なんだ...?

りーぬ!!

そんなことを考えてるヒマもなく

気がつけば先生の顔が目の前に

ほんとに、今日どうしたの

心配そうな表情で顔を近づける先生に

このままあと少し近づけばキスできそう

なんて馬鹿な事しか頭になくて

匂いにクラっとしてしまって

考えてるより先に体が動いてた

先生と俺の唇が重なって

その後

すぐ突き放された

俺は急いで車を出て

家までただひたすらに走った

少しでも足を止めたら

泣いてしまいそうで

突き放された後

は、いや、駄目だろこんなの。

なんて言われたら

先生との約束で

放課後、あの時間以外の性的接触は無し

そう約束したのに

わかってたのに

あいつも気を持たせるようなこと言って

ほんとムカつくんだよ

っ、ぐす、うっ......うぅ...

...あ、急いでて、タオル、持ってきちゃっ、た、

やっぱりそれはいつもの先生の匂いで

だけど遠くに行ってしまったような

そんな寂しい匂いがした

頭がズキズキと痛む

昨日帰ってからずっと泣いてて

気づいたら朝になってた

結局一睡もできなかった

保健室で休むことになるなら欠席すればよかった

はぁ......頭いた、

やほ!りいぬくん!

え、ころちゃ

へへ、なんか今日元気ないし心配で来ちゃった

ころちゃんは同じクラスの友達で

こうやっていつも俺の事を気にかけてくれる

どう?体調は

...もう良くなったし、午後からは戻れそう!

よかったー!お昼一緒に食べよ!りいぬくんこれ好きだったよね

俺の好きな、ジュース

昨日のことを思い出してしまう

せっかくころちゃんが心配してくれてるのに

だめだな俺

もう早退しようかな

これ以上ころちゃんに心配かけたくない

先生にも会いたくない

っごめん、ころちゃん、やっぱ俺......

ん、誰か来た、保健室の先生かな?

おー、ころんここに居たのか、おまえ課題早く出せ

この低くて少し甘い声

...さとみ、先生、っ

どうしよう次の言葉

なんて言えば

っわー!ちょっと待って、終わってるから!何なら取ってくるから!

まってころちゃ、

ごめん待ってて!りいぬくんは先食べてていいよ

ころちゃんは俺を置き去りにして慌てて教室に戻って行った

て事は、ふたりきり

ったく、あいつは...

全身に冷たい血液がじわじわと広がる

やっぱり、体調悪かったのか?

へ、?

これは俺に向けられた言葉でいいんだよね?

...い、や、ちょっと夜更かししちゃって、w

なんだよ!心配したのに、程々になw

やっと喉から捻り出した震え混じりの言葉も

いつもの様にヘラヘラとかわされる

何でだよ

昨日の事は?

最初から無かったことみたいにすんな

またふつふつと怒りが湧いてくる

でもまあ確かにキスしただけ

キスなんて放課後数え切れない程してるし

今更わざわざ掘り返すようなことでも ないか

...っおい、りいぬ、

......っへ、グス...

怒りがぱちんと消えた途端

逃げ場の無くなった感情は涙になって溢れた

もう泣き疲れてるのに

こういう事が言いたかったんじゃ......くそ

いつもの雰囲気とは違った余裕のない表情をした先生

そのあと、また大好きな匂いに包まれた

俺をぎゅっと強く抱きしめていて、その手は震えてた

声も余裕がなく震えていた

ごめん、...少し話したい

もういい?離れろよ

...っころちゃ、これは違くて、!

お前まさかりいぬくん狙ってたとは

...ころん、見てたのか

何を?ハグしてたこと?それとも......りいぬくんを泣かせたこと?

りいぬくん、行くよ

あんなに怒ってるころちゃん初めて見た

あの後ころちゃんはずっと無言のままで気づけば放課後になった

ころちゃん、もう部活行っちゃったよね

先生に会う気分にもなれない

もう帰ろ

りいぬくん、一緒に帰ろ

...え、ころちゃん、部活は?

今日は休みになったからさ!ほら行こ

よかったいつものころちゃんだ

...昼休みの事なんだけど、ごめん

...へ、あー大丈夫!ころちゃんが謝ることじゃないよ!

違う!本当は気づいてたのに、何もできなかった

りいぬくんが辛いって知ってて、でも僕勇気がなくて

まって、!そんなに謝ることじゃないし、それに俺が悪いしさ!

でももう決めた、僕だったらりいぬくんを泣かせたりしない

...僕じゃだめかな

頭が追いつかない

いつもは柔らかい表情が一気に真剣な顔つきに変わる

ころちゃんのことは大好き

初めてころちゃんの目を見てドキッとしてしまった

でも恋愛的なものじゃなくて

曇りのない瞳に心を見透かされてるようで怖くて

逃げてしまいたくなった

......ごめん、俺、気づかなくて、その

あは、なんて冗談だよ!wせっかく可愛いんだからそんな顔しないで?...ね?

......ころちゃ、ごめん、俺...っ

だからー!ごめんはもう無し!ご飯でも食べに行こ!

......ころちゃんありがと、

下手くそ

ころちゃんは嘘をついてくれた

だってころちゃんの表情、俺と同じだった

大好きな人に距離を置かれた時の

寂しい顔

あ、先生。やっと仕事終わり?

...もうりいぬと帰ったんじゃなかったのか

りいぬくんは家まで送ったよ、お前と違って薄情じゃないからね〜

りいぬ、なんか言ってたか...?

...あのさあ。これ以上りいぬくん傷つけるならバラすよ

っ、わかった...もうこの関係は終わりにする。もうりいぬに迷惑かけたくない

...それならいいけど。

あれから先生に会うことも無く新学期になった

今となれば馬鹿だったと思う

好きな相手をセフレみたいにして

そりゃ上手くいくわけないよねw

もう終わった事だからどうでもいいけど

最後のクラスもりいぬくんと同じで嬉しい!

ふふっ、俺もうれしいよ!

担任の先生って誰なんだろ?

んーなんか、転任してきた先生らしいよ?

えー!気になる...あ、来た

初めまして、るぅとです。慣れないと思いますが、よろしくお願いします、!

わあ、フワフワしてて可愛いしスタイルもいい

りいぬくん、優しそうな先生でよかったね!課題も見逃してくれたらいいな...w

ころちゃん、!課題はちゃんとやりなさい!w

では話は以上です。解散になりますので、皆さんまた明日!

じゃ、りいぬくん僕部活行くね!

うん、またね!

"りいぬ"...くんですか?

......るぅと先生、なんですか?

帰り支度を終えると先生は俺の席の近くにいた

近くで見るともっと顔整ってる...

ふふ、やっぱり。これからよろしくお願いしますね

へにゃっと笑うとこの人の空気に捕まって見惚れてしまう

俺も口角が揺らぐ

その口角がぴたりと下がったのは

さとみくんから話は色々聞いてますよ!

"さとみ" その名前を耳にしたから

っえ、と、仲良いんですね

あ、すみません、さとみ先生でしたね、ごめんなさい慣れなくて...

そういえばなんかずっと違和感あると思ったら

この人から、あの匂いがする

さとみ先生の匂い

話って、なにを、

そんな怖い顔して、どうしたんですか?

この人一体どこまで知って、

さとみ先生との仲は

どこまで

りいぬは良い生徒だって褒めてましたよ?

あ、あぁ......なんだ...

自分の焦りすぎた反応に逆に笑えてくる

余裕なくなってて馬鹿みたい

その、2人は知り合いなんですか...?

僕とは......。そうですね〜、

るぅと先生の指元がキラッと光る

俺が目線を下げたのを悟ったとたん表現がころっと変わった

すごく幸せそうな

これ!さとみ先生から貰ったんです、凄く綺麗ですよねっ

あの時のあの感情がまたじわじわと蝕む

せっかく知らないフリしてしてたのに

終わった事だと思い込んでたのに

俺の中でしっかりと"終わった事"として消化されてはなかった

俺はるぅと先生とは正反対

素直に感情を言葉に出来ないし、表情もころころ変えられない

可愛げもない

...そう、だったんですね、ごめんなさい、俺帰ります、

あ、ちょっと待って、これからさとみ先生と会う約束が...

るぅと、おせえぞ。校内案内しろって言ったのに遅刻するなよ...

あ、!さとみくん、すみませんりいぬくんと話してて

...あー、俺もう帰るので大丈夫です。

いつもいつもタイミング最悪

少しは空気読めよ

!まってりいぬ、お願い、ずっとあの日の話の続きがしたくて...

.....っうるさい!...今更何?可愛い恋人できてよかったね。

逃げ場の無くなった怒りは

今度は気づいたら先生にぶつけてた

こういう所が可愛くない

俺はずっと、っ!......もぉ、お前なんか!!

......っ、もう帰ります

お前なんか

その続きが言えなかったのは

さとみ先生もあの顔をしていたから

寂しそうな心細い顔

また勝手に自分と重ねてしまって喉が詰まった

♡好評だったら続きますノωㅜ

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コメント

1

ユーザー

すごくすきです🥲🩷❤️ ぶくしつです!

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