16時
教室はがらんと静まって
さっきまでの賑やかな声はなくなる
窓側の席に座ってぼーっと空を眺める
夕日と冷たい風
この時間が好きだ
それと
桃
この人
桃
赤
この時間が好きなのは
それだけじゃなくて
桃
赤
桃
空き教室
それが
2人だけの秘密の場所
教室に入ったとたん
ドク、ドクと心拍がだんだん早くなるのがわかる
多分これは緊張
でも
こいつに知られるのだけは嫌だ
図に乗るし。
何より
そういう関係じゃないし
可笑しいだろ
桃
赤
ぱちん、と1つずつシャツのボタンを外す
桃
赤
キョトンとした顔をみせる
いつもなら消すのに、って言いたげ
桃
ホントに、いつもうざ
赤
桃
真っ黒なスーツからふと香るこの匂い
落ち着く
近付いた時にだけ香るのがずるい
大人って感じがして
少し寂しい
赤
桃
でもこの匂いに包まれてると
この人が、先生が
ちゃんと今はここにいるんだって安心する
赤
桃
首に手を回して
ぎゅっと力を込めると
あっちの熱も伝わってきて
俺と先生の体温が同じくらい熱くなってることがわかる
嬉しい
桃
タオルと飲み物を渡される
俺が好きな校内の自販機のジュース
桃
確かにいつもより激しかった、かも?
夢中で気づかなかった
赤
桃
赤
びっくりして飲み物でむせてしまう
桃
それって
桃
赤
桃
桃
俺は帰宅部だから部活時間に先生とたまに会うようにしてる
でもバレたら流石に不味い
もう帰らないといけないのか
赤
桃
あの匂いがいっぱいの車
先生の、くるま
いつもは落ち着くはずなのに
落ち着かない
桃
赤
桃
赤
桃
ムカつく
どうせ出来もしない約束を
ヘラヘラとしやがって、!
放課後の約束も
どうせずっとは続かないのに
ヘラヘラしてて、呑気で。
この関係が終わってもいいって思ってるんだ
あれ、でも
"この関係"
って何なんだ...?
桃
そんなことを考えてるヒマもなく
気がつけば先生の顔が目の前に
桃
心配そうな表情で顔を近づける先生に
このままあと少し近づけばキスできそう
なんて馬鹿な事しか頭になくて
匂いにクラっとしてしまって
考えてるより先に体が動いてた
先生と俺の唇が重なって
その後
すぐ突き放された
俺は急いで車を出て
家までただひたすらに走った
少しでも足を止めたら
泣いてしまいそうで
突き放された後
桃
なんて言われたら
先生との約束で
放課後、あの時間以外の性的接触は無し
そう約束したのに
わかってたのに
あいつも気を持たせるようなこと言って
ほんとムカつくんだよ
赤
赤
やっぱりそれはいつもの先生の匂いで
だけど遠くに行ってしまったような
そんな寂しい匂いがした
頭がズキズキと痛む
昨日帰ってからずっと泣いてて
気づいたら朝になってた
結局一睡もできなかった
保健室で休むことになるなら欠席すればよかった
赤
青
赤
青
ころちゃんは同じクラスの友達で
こうやっていつも俺の事を気にかけてくれる
青
赤
青
俺の好きな、ジュース
昨日のことを思い出してしまう
せっかくころちゃんが心配してくれてるのに
だめだな俺
もう早退しようかな
これ以上ころちゃんに心配かけたくない
先生にも会いたくない
赤
青
桃
この低くて少し甘い声
赤
どうしよう次の言葉
なんて言えば
青
赤
青
ころちゃんは俺を置き去りにして慌てて教室に戻って行った
て事は、ふたりきり
桃
全身に冷たい血液がじわじわと広がる
桃
赤
これは俺に向けられた言葉でいいんだよね?
赤
桃
やっと喉から捻り出した震え混じりの言葉も
いつもの様にヘラヘラとかわされる
何でだよ
昨日の事は?
最初から無かったことみたいにすんな
またふつふつと怒りが湧いてくる
でもまあ確かにキスしただけ
キスなんて放課後数え切れない程してるし
今更わざわざ掘り返すようなことでも ないか
桃
赤
怒りがぱちんと消えた途端
逃げ場の無くなった感情は涙になって溢れた
もう泣き疲れてるのに
桃
いつもの雰囲気とは違った余裕のない表情をした先生
そのあと、また大好きな匂いに包まれた
俺をぎゅっと強く抱きしめていて、その手は震えてた
声も余裕がなく震えていた
桃
青
赤
青
桃
青
青
あんなに怒ってるころちゃん初めて見た
あの後ころちゃんはずっと無言のままで気づけば放課後になった
ころちゃん、もう部活行っちゃったよね
先生に会う気分にもなれない
もう帰ろ
青
赤
青
よかったいつものころちゃんだ
青
赤
青
青
赤
青
青
頭が追いつかない
いつもは柔らかい表情が一気に真剣な顔つきに変わる
ころちゃんのことは大好き
初めてころちゃんの目を見てドキッとしてしまった
でも恋愛的なものじゃなくて
曇りのない瞳に心を見透かされてるようで怖くて
逃げてしまいたくなった
赤
青
赤
青
赤
下手くそ
ころちゃんは嘘をついてくれた
だってころちゃんの表情、俺と同じだった
大好きな人に距離を置かれた時の
寂しい顔
青
桃
青
桃
青
桃
青
あれから先生に会うことも無く新学期になった
今となれば馬鹿だったと思う
好きな相手をセフレみたいにして
そりゃ上手くいくわけないよねw
もう終わった事だからどうでもいいけど
青
赤
赤
青
赤
黄
わあ、フワフワしてて可愛いしスタイルもいい
青
赤
黄
青
赤
黄
赤
帰り支度を終えると先生は俺の席の近くにいた
近くで見るともっと顔整ってる...
黄
へにゃっと笑うとこの人の空気に捕まって見惚れてしまう
俺も口角が揺らぐ
その口角がぴたりと下がったのは
黄
"さとみ" その名前を耳にしたから
赤
黄
そういえばなんかずっと違和感あると思ったら
この人から、あの匂いがする
さとみ先生の匂い
赤
黄
この人一体どこまで知って、
さとみ先生との仲は
どこまで
黄
赤
自分の焦りすぎた反応に逆に笑えてくる
余裕なくなってて馬鹿みたい
赤
黄
るぅと先生の指元がキラッと光る
俺が目線を下げたのを悟ったとたん表現がころっと変わった
すごく幸せそうな
黄
あの時のあの感情がまたじわじわと蝕む
せっかく知らないフリしてしてたのに
終わった事だと思い込んでたのに
俺の中でしっかりと"終わった事"として消化されてはなかった
俺はるぅと先生とは正反対
素直に感情を言葉に出来ないし、表情もころころ変えられない
可愛げもない
赤
黄
桃
黄
赤
いつもいつもタイミング最悪
少しは空気読めよ
桃
赤
逃げ場の無くなった怒りは
今度は気づいたら先生にぶつけてた
こういう所が可愛くない
赤
赤
お前なんか
その続きが言えなかったのは
さとみ先生もあの顔をしていたから
寂しそうな心細い顔
また勝手に自分と重ねてしまって喉が詰まった
♡好評だったら続きますノωㅜ