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# 16 . いいんだよ
あの後三人は少しの検査をして 桃くんは高熱だったから また個室に移った
青先生は腕を撃たれてたから 休み休みで仕事してる
赤
黄
赤はあの一件以来 魘されてる
なのに僕は手を握って 撫でてあげることしか出来ない
夢は今の医療でも まだまだ未知の世界だ
対処ができない
橙
紫
橙
紫
黄
まだ眠たそうに欠伸する
かわいくて笑ってしまう
紫
橙
紫
橙
橙
僕には何を喋ってるか分からないけど きっと桃くんのことな気がした
紫
黄
ほら、やっぱり
黄
紫
紫
そう言って手を振る
黄
僕も手を振り返す
橙
黄
橙
まだ書き終わってないみたいだけど 何を言いたいのかわかる
黄
そう一言書いて鉛筆を置いて 泣きそうな橙くんの頭を撫でる
橙
溜めていたものが 一気に溢れ出るように泣いていた
心の傷が深いこの子達に また傷を負わせてしまった
ほんとにダメだな
黄
でも今の僕には 頭を撫でてあげることしか出来ない
声をかけても 橙くんに届くことの無い声を 僕は発し続ける
少しでも安心して欲しいから
少しずつ人が 多くなってきた廊下を歩く
そろそろ外来の時間だ
にしても桃くんは 脱走してないといいけど
熱があっても 本当に不安な時は青先生目掛けて 一直線に走るから困る
熱が高くなって 体調が悪くなる一方だから 体調が悪い時は 絶対一人で行動しないように 言ってはいるけど
効果はあんまり無い
だから個室の時は 起きる前に青先生じゃなくても 誰かが傍に居るようにしてる
紫
青
ちょっと離れた後ろの方から 青先生の声がして振り返る
紫
紫
青
少しソワソワしてる
当たり前だけど青先生も 桃くんを心配してるから 休憩時間削ってまで来たのか
紫
青
青
ちょっと焦ってる笑
紫
紫
青
紫
お互いに言い合えるこの関係が すっごい嬉しく感じた
何より楽しい
青
紫
紫
青
俺は桃くんの様子を見に行こうとして 病室出たけど青先生が行くってことは 俺行くとこないから 橙くん達のとこ戻ろ
紫
なんか温かいものでも 買っていってあげよう
最近急に寒いし
紫
紫
向かい側から 走ってくる子がいたから止めた
車椅子の子とか松葉杖の子とかいて 走ってたから危ないから
紫
赤
走ってた子は赤くんだった
泣いてたのか 頬を触ると熱く感じた
っていうか 黄先生が病室にいたはずなのに なんでここに…
紫
赤
赤
言葉が詰まった
でも何が言いたいかくらいは 俺にもわかるよ
紫
俺が赤くんの肩を掴むと 赤くんは驚いて目を丸くした
紫
言葉を言いかけた時に 少し離れた所から 走ってくる音が聞こえた
赤
その音は赤くんにも 聞こえていて 赤くんは血相を変えて 思いっきり俺の手を振り払って 走っていってしまった
紫
俺の声が届かないほどに 何かがあの子を覆っている
黄
黄
黄先生は青い顔をしていた
紫
紫
赤くんに弾かれた手が まだじんじんと痛く感じる
黄
黄
紫
みんな不安定だ
自分を守っていたものが 一時的に無くなった子
自分を守るものが 分厚くなってしまった子
不安的に守るものの厚さが 変わっていってる子
紫
黄
黄
紫
黄
「 赤くんのことよろしくね 」 って言おうとした途端に 走って行っちゃった
まあ俺なんかに言われなくても 百も承知だよね
紫
紫
優しくて 我慢強くて 泣き虫な子
また傷を増やしちゃったな
紫
スライドドアを優しく開いて 橙くんの名前を少し強く呼ぶ
橙くんは俺の声を聞くと いつもは俺の顔を見るよりも先に 抱きついてくるのに
橙
声が震えてた
それを笑って隠した
紫
橙
手が震えてる
紫
橙
いつもは目を合わせるのに 今日は目を合わせようとしない
紫
鼻先が赤い
俯いてて目が見えないけど きっと充血してる
っていうことは泣いてた
紫
橙
紫
橙
やっぱり手は震えてて 目は見てくれない
本音を言う怖さは 俺もよく知ってる
手話する俺の手だけを じっと見てる
それしか出来ることが ないんだよね
紫
俺の手も震え出した
上手く動かない
紫
橙
橙
手を下ろしてしまった
やっぱり伝えてくれない
言葉と違って手話は 感触が残る
紫
本当に情けない
新たに心に傷を増やしてしまって それをケアして寄り添うどころか まともに会話することが出来ない
紫
橙
珍しく大きい声
俺の弱音をかき消すようだった
橙
弱々しく口にしたあとは 手を上げて手話を始めた
橙
小さい手で弱々しくも 気持ちを伝えてくれた
紫
紫
安堵の笑いと涙
橙
橙
俺に抱きながら泣いて ゆっくり言った
紫
紫
俺も抱き返して 聞こえるように耳元でゆっくりと けどハッキリて口にした
暖かいなあ
泣いて甘えていい 弱音を吐いてもいい ただまた笑ってくれればいい
俺が望むのは 橙くんたちの幸せだよ
橙
橙
今度は目を合わせて 手話をしてくれた
俺も目を合わせて 手話をし返す
紫
紫
橙
優しい笑顔
この暖かさは 他では味わえないような 暖かさだった
黄
名前を呼んでも こっちを見てもくれない
近づいたら 飛び降りてしまいそうで怖い
寒い。背筋が冷たい
赤
冷たい声 冷たい表情だった
ただひたすらに怖い
黄
子供みたいな文言
僕は自分の気持ちを 言葉にするのが苦手で 思ったことを言おうとすると 幼く聞こえる
けど本当に大好きで そばにいて欲しくて
赤がいないと 息苦しく感じるようになった
赤
赤
赤
黄
赤
黄
想像しただけでも吐き気がして 寒気も襲ってくる
今すぐにでも赤に触れて その温もりを確かめたい
寒くてたまらない
赤
震えていて体の芯から 絞り出したかのような謝罪だった
謝って欲しいわけじゃない ただ生きて欲しい
黄
赤
黄
「 そんな顔させた 」って…
赤
黄
僕が視界に入ってない 声が届いてない
赤
フェンスの方に ふらふら歩いていく
黄
急いで走り出して 赤の手を掴む
冷たかった
赤
黄
黄
怯えたように泣いていた
桃くんたちと 同じ部屋になるちょっと前
出会って 怪我が治ってきた頃にも 同じようなことがあった
赤
その時も同じ言葉だった
赤
黄
赤にとって「 生きて 」が 最大の重荷になることは よく知ってるつもりだよ
けどね生きて欲しいの
赤
赤
赤
黄
黄
赤がいない世界は きっと物足りなくて きっと寒いんだ
そんな世界は嫌だな
大変長らくお待たせしました…
コメントでモチベ貰って ちびちび頑張ってました
全然投稿されないのに コメントしてくれて ありがとうございます
ほんとに支えになってます!
時差コメントで 「これこんな投稿してないんや…」 ってなってるので助かってます…
「 時差コメ失礼します! 」 とか畏まらなくていいですから じゃんじゃん「 待ってるで 」 みたいなコメントしてください
こちらこそ投稿してなくて 申し訳ございません状態なので
では!おつです
コメント
6件
最高か???(いきなりタメでごめんなさい!)
待ってましたー!!✨ やはり病弱系はいいなぁ、、って思いますね、、🤔 今回も最高すぎます😭 続き待ってます!