気がつけば
手漕ぎボートにペ神と乗っていた
彼だけが一生懸命に漕いでいた
私達は海を横断していた
何故かは分からない
ペ神が
「あ、右。」と呟いた
私は自分でも驚くほど早いスピードで右側をみた
ハリボテのような山が連なっていた
何故かがっかりした心情になった
「俺の言うこと、あんまり信用しちゃダメだよ」
ペ神の意図は分からなかった
しばらくすると
「あ、左。」とまたもや彼は言った
私は嘘だと思った
むすっとしてペ神の顔を見つめる
今度は本当だ、と彼はけらけら笑っていた
左側には
またもやハリボテのような大きな風車と花畑があった
「あそこでよく、兄さんは煙草を吸ってたよ」
そこで初めて、私は兄さんを探していたとこに気がついた
それにしても
あんなハリボテのような場所で兄さんは煙草を吸うのだろうか、と
想像すると風車より大きな兄さんが出てきて
なんだかおかしくってくすくす笑ってしまった
ペ神が着いたと言うとで陸に足を付けると
じわじわと暑いことに気が付き始め
10分後には汗だくだった
私は室内に入ろうと彼に言い
人が溢れかえるデパートに入っていった
ペ神はすこし哀しそうな顔をしていた
室中で十分涼み
日も沈み始めた頃
そろそろ外に出ようか、と
提案した私にペ神はまた哀しそうな顔をした
意味がわからなかった
出口にも人が多くて
それでも何とか進んでいた時
息を飲んだ
私の目の前に、私たちが探していた、大きな背中を
手が届きそうな距離で見つけた
「っ兄さん!!!」
そう叫んで足を思い切り動かし手を伸ばしかけた頃
ペ神が私の肩から脇腹辺りをがっちり掴んだ
「なんで、?待って、待って、兄さん!!!!」
あぁ、どうして
あの背中は、あの紫のストールは、あの煙草の匂いは
紛れもなく兄さんなのに
あと少し早かったら
手が届いたかも知れないのに
突然叫んだ私に
周りは興味の目で私を痛いぐらい見つめたのに
彼だけは…兄さんだけは
私をちらりとも見なかった
私は抑えたペ神は
苦しそうに謝った
なら、行かせてよ、
そう、口には出さなかった
「まだ…まだその時じゃない」
今日のペ神はなんだか変だった
目が覚めた
どうやら夢だったらしい
あの場所のような暑ぐるしさが部屋中にあった
目尻には少しの涙
あぁ、どうして
そう呟いた時、肩から脇腹の辺りが少しずきりとした
昨日見た夢
とんでもねーぐらい兄さんに会いたくなった
夢だからなんでペ神が私を止めたか分からない
コメント
4件
めちゃくちゃ感動的な夢っすね…やっぱ小説が書くのが上手い人は夢まで小説になれるのか。
夢に帰りてー