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アメノヒ

1 - アメノヒ

♥

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2019年08月27日

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雨の日は嫌いだ。

開け放った窓から、風とともに湿気の含んだ雨の香りが流れ込んでくる。

この香りが、私は苦手だ。

濡れるのは嫌だし、傘を持っていくのもめんどくさい。

けれど、しとしとと降る露雨と呼ばれる雨だけは、何故か嫌いになれなかった......。

なんて矛盾した感情だろう。

数学の先生の話を半分聞き流しながらそんなことを考えていた。

帰りのHRが終わると、すぐさま鞄を掴んで教室を出た....。

昇降口の傘立てから、シンプルな水色の傘を引っこ抜いて、空を見上げた。

まだ止みそうにないなと、思いつつ、水溜まりを踏まないようにゆっくりと歩き出した。

ときだった。

吉田 煌

ごめん花乃さん!ちょっと駅まで入れて!

返事をする前に、そいつは私の傘に入り込んできた。

そいつが誰かを見なくても分かるくらいには、私はこれを繰り返している。

だから大袈裟に溜息をついてみせた。

花乃 小織

傘、また忘れたんですか?吉田

吉田 煌

今日寝坊しちゃってさー、天気予報見てないんだ

.......ギロッ.............

吉田 煌

ほんとごめんって。今日で最後にするからさ、な?

花乃 小織

その言葉は聞き飽きました!わざわざ遠回りする私の身にもなってくださいよ!

もう一度溜息をつくと、不意に右手が軽くなった。

吉田 煌

俺が持つよ!

花乃 小織

入れてあげてるのはこちらなんですから当然です。

吉田 煌

相変わらず花乃さんは堅いなぁ。

花乃 小織

あなたが軽すぎるだけです

吉田 煌

..........反論できないのが悔しい‪w

吉田は、隣の席の男子。遊び人で有名な彼は、何故か雨の日だけは他の女の子を放って、こうやって私に絡んでくる。

うざったいとは思うものの、まぁ嫌いではない。

というとも、私には、彼以外に話せる人がいないからだ。

向こうが勝手に話しかけてくるだけだけれど。

私のクラスは明るい人が多い。 昔から人見知りが激しく、テンションの低い私は、その雰囲気についていけなくて、孤立しているのだ。

そんな私を気にしているのか、唯一話しかけてくるのが吉田というわけ。

花乃 小織

本当、なんで吉田は私なんかに構うんですか?

吉田 煌

なんでって、そりゃ女の子とは仲良くなりたいからに決まってるじゃん?

花乃 小織

.......聞いた私が馬鹿でしたね.......

吉田 煌

ま、それは一割冗談だとして、

花乃 小織

ほぼ本音じゃないですか.......。まあいいです。残りはどんな理由があるんです?

その言葉に、吉田は何故か視線を泳がせ始め、なんとなく緊張しているような、そんな感じがした。

さっきとは違い若干震えている声が、私の思考を凍らせた。

吉田 煌

.......好きな子のこと、もっと知りたいなって思ったから

花乃 小織

.............い、今何か、おかしな言葉が聞こえたような気がするんですが

...........好き?誰が?誰を?

そんな考えを見透かされたように

吉田 煌

だからっ

と怒ったような声で話し始めた。

吉田 煌

俺が、花乃さんのこと好きだってこと!!

吉田 煌

わざと傘忘れてたの!一緒に帰りたかったから!

花乃 小織

え、っと.......。その、ちょ、ちょっと待ってください、整理させて!

思考回路がオーバーヒートしそうだ。

よ、吉田が私の事す、好きだって? で、私の事を知りたいから、雨が降ると分かっていてもわざと傘を持ってこなかった、とそういう話?

ぐるぐると回る「すき」の2文字。

ようやくそれが私に向けられた好意だと気がづいて、

自分の体温が上昇していくのがわかった。

熟れたりんごみたいに赤くなっているだろう頬をおさえて俯く。

こんなに真っ直ぐに好意を伝えられたことなんて初めてで、くすぐったくて恥ずかしい。

どうしよう。こういう時ってどうすればいいの...........?

慌てる私を無視して、告白したことで冷静さを取り戻したらしい吉田が、私をよそに話し始めた。

吉田 煌

最初は地味な子だなって思ってたんだけど話しかけてみて花乃さんの性格とか可愛さとか、化粧して着飾ってる子たちより何十倍も素敵で、なんていうのかな。元から持ってるものが小織の方が、

花乃 小織

も、もういいです!止めてくださいっ

流石は遊び人。 褒め言葉もすらすらと出てくるし、いつの間にか小織呼びになってるし。

私はまだ火照ってる頬から手を離して鞄の持ち手をぎゅっと握って俯いた。

どうしていいのか分からないのなら、本人には聞いた方が早い。

だから、

花乃 小織

どうしてほしいの?

と小さく尋ねる。

吉田 煌

返事が欲しい.......かな

花乃 小織

.............わ、私は、好きってどういう事なのか、よく分からないんです。

花乃 小織

でも、吉田が、そう言ってくれたのを、嬉しいなって思いました。

花乃 小織

こうやって帰るのも、楽しみだったのかも.......

花乃 小織

だっ、だから

花乃 小織

あなたが望むなら、彼女とやらになってもいいです。

ふわりと微笑んでそう言うと、吉田はあからさまに嬉しそうな表情になった

花乃 小織

ただし、

と私は付け加える。

花乃 小織

一つだけ条件を。

花乃 小織

私たちはまだ学生ですから、節度のあるお付き合いを_______________

吉田 煌

じゃあ、こういうのはダメ?

花乃 小織

何が、

と聞き返した声は吸い込まれてしまう 。ほんの一瞬だけ、唇に熱が触れて、離れていった。

気がつけば私は、傘の下から抜け出して、走っていた。

追いかけてくる声に対して、全力で叫ぶ。

花乃 小織

吉田の馬鹿っ!!もう知りませんっ!

全身にあたる雨粒が、この熱を覚ましてくれたらいいのに.......

こんなにも恥ずかしいのに、嬉しくて、もっともっとって欲張りになってしまう。

この気持ちが、「すき」って感情?

私、煌のこと、好きってことなのかな.......?

雨の日は、やっぱり嫌いだ。

でも、少しだけ、好きになったかも、しれない。

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