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里志が愛夜子の所へ引っ越して数日後のことだ。
里志が体を壊してしまった。市販薬を飲み、病院へはまだ行けていない。 里志は急遽仕事を休んだ。
今日は愛夜子が精神科通院する日。
通院前に愛夜子は里志のために、お粥さんをたっぷり作った。
愛夜子
里志
愛夜子の病院の予約時刻は午前9時。精神科は今日も満員だ。いつものように予約していても1時間以上は待つ。 愛夜子が呼ばれたのは10時過ぎにもなってからだった。
愛夜子
村野医師
長年愛夜子を診ている中年男性の村野(むらの)医師だ。
愛夜子
村野医師
愛夜子
村野医師
愛夜子
愛夜子は村野医師をとても信頼している。決して愛夜子の心を無理にこじ開けたりしようとはしない。もう10年以上この村野医師にかかっている。
かつて『診察』ではなく、某病院で『カウンセリング』を受けた際に愛夜子は『性虐待を受けたことについて』打ち明けた。するとその女性カウンセラーは『それは、何処までされましたか?』だなんて訊いて来たのだ。開いた口がふさがらなかった愛夜子。そんなぶしつけな真似をするようでは無論ダメカウンセラーだ。
愛夜子は不快感を覚え、すぐにそのカウンセリングを行った病院の当時の担当医師に苦情を告げた。
そのことがきっかけで今の小さなクリニックに変わったのだった。 クリニックは、住まいと同じ渋谷区にある。愛夜子は自転車で病院へ行っている。
里志に出逢うまでは、酷く情緒不安定だった愛夜子の診察時間は長かった。 最近では、ほんの10~15分程度で終わってしまう。めんどくさがっているわけじゃなく、心身の状態が良好だからだ。
愛夜子
村野医師
愛夜子
院外処方なので薬局へ寄り、マンションの自転車置き場に帰って来たのが11時半ごろだった。
里志、お粥さん食べられたかな、水分は摂れているかしら……
あれこれ細やかに里志を想う愛夜子。
エレベーターに乗り、自宅フロアに着いた。
里志のために1秒でも早く帰ってあげたい
フロアの廊下を曲がると、玄関前に里志と……里志と話し込む女性の姿が見えた。
誰よ!? もしかしてこの人が元彼女?!
ツカツカツカと自宅玄関へ向かう愛夜子。
里志
里志が慌てている。
愛夜子
望子
里志
愛夜子は衝撃と怒りの余り声を失っている。
望子
愛夜子
望子
里志
愛夜子
ギリギリギリと歯ぎしりをする望子。 里志は、ふらつきもあるらしく壁でやっとの思いで体を支えている。飲んだ市販の解熱剤が効いていないらしい。
里志
望子
里志
今、愛夜子は黙って里志の体を支えている。
望子
里志
愛夜子がその時諫めた。
愛夜子
里志は
里志
と言った。
愛夜子
望子は足早に去って行った。
里志
里志は、項垂れている。
愛夜子
里志
里志は、薄い硝子のように壊れやすい愛夜子の中に、決して誰にも消すことの出来ない神聖なる炎があることを知った。
***
里志
保険証を差し出す里志。
内科受付
受付の人に言われ、愛夜子とともに椅子に腰かける里志。
里志は診察の結果、風邪だと言われた。解熱剤だけ処方された。
愛夜子
いたわり続ける愛夜子。 里志はこんなに人に優しくされたことがないなと感じた。
さっきの今だ。嫉妬深い愛夜子が、自分の気持ちを底に押しとどめ、里志に尽くす。それも嘘偽りのない真心を感じたのだった。
帰宅し、話さないわけには行かないだろうと感じた。
里志
愛夜子
里志
愛夜子
里志
愛夜子も(なぜ?)ともちろん思っているし、つけ回されている感覚がし、病の恐怖心が蘇る。でも、里志がそばにいてくれるのだし、里志の健康が今一番だ。
里志は翌日少し熱が下がったが、塚本から電話があり
塚本
と言われ、そうすることにした。倉庫内作業のバイトも休むことにした。
里志
朝、お粥を食べながら里志。
愛夜子
里志
愛夜子
里志
愛夜子
里志
と里志が言った時
愛夜子
と愛夜子が言った。
愛夜子
里志
愛夜子
里志は、何処までも優しい愛夜子を悲しい程に好きだと感じている。愛夜子はなにも「里志の子どもだから」守ろうとしているわけではない。 小さな命が悲しい目に遭うのが耐えられないのだ。
愛夜子
里志
愛夜子
里志
苦しい出来事も、どんどん愛夜子と里志の愛を深めて行く。二人は懸命に考えている。
二日仕事を休んだ里志。体調は回復した。再び出勤だ。ただ、今日行けば明日は日曜日なので、本業である塗装の仕事もバイトも休みだ。
愛夜子
里志
もちろん愛夜子が愛情をたっぷり込めて作ったお弁当を持ち、麦茶の入った水筒を持っての出勤だ。
それっきり、望子は現れない。 あの日から2カ月半が経過した。
愛夜子
おなかに子がいる望子、まだ安定期ではない。愛夜子は赤ちゃんを心配している。
里志
里志の瞳が潤んでいる。
愛夜子
里志は思った。子を孕んでいる望子自身よりも、愛夜子のほうがよっぽど成熟し母親らしいと。 愛夜子は、心の病気があり、確かに出来ないことも多い。でも、こんなに深い情を底に秘めている。
まだ安定期ではない望子。そうそうウロウロとし、里志に食って掛かっていたらおなかの子どもが危険だ。 そして逆に、今現在は音沙汰がパタッと途絶えている。それもまた心配だ。 愛夜子の言う通り、里志はこちらから望子に、気遣いの言葉を掛けてやったほうが良いように思えて来た。
愛夜子は里志が望子に電話をする時、外へ出ておこうか、ベランダへ出ておこうかとも考えた。が、やっぱり気になるので、里志のいるリビングから少し離れたベッドルームでベッドの上に座って聴いていた。
里志
望子
里志
望子
里志
望子の様子が少しいつもと違う。しゃっくりを繰り返しヘラヘラしている。
里志
望子
さっきの里志の言葉を聴きつけ、愛夜子が立ち上がる。
ガチャリ……。ツーツーツー。
里志
電話は切れてしまった。
愛夜子
里志
愛夜子
里志
愛夜子は泣いている。色んな思いがグチャグチャに混ざっている。
愛夜子
里志
強く、強く愛夜子の繊細さを抱きしめる里志。 里志は、それでも暫く迷っていた。
すると愛夜子が
愛夜子
叱りつけるように言った。
里志
とその時だ。玄関チャイムが鳴った。
里志がすぐに玄関扉を開けた。
望子
そこには右手に手提げ袋、左手に缶チューハイをかかげる望子の姿があった。
里志
その場にしゃがみ込む里志。
愛夜子が慌てて玄関へ行った。豹変し、上目遣いにその愛夜子を睨み付ける望子。
望子
里志はすぐに立ち上がった。望子は手提げ袋からすかさず、なんと! 結構なサイズのダンベルを取り出した。
そして、あろうことか! みずからの腹に打ち付けようとしたのだ!
里志
里志が力ずくでやめさせたが、顔をゆがめる望子がその場に倒れた。
愛夜子
金切り声を上げた愛夜子。泣き叫びながらも必死で119番をする。 愛夜子は住所を言うだけで精一杯だった。