まただ...
また、僕はベッドの上に居る
あれ程酒は飲まないようにと
自分に言い聞かせていたのに
酔うと記憶が無くなる
酔うと見境が無くなる
僕は物凄く酒癖の悪い
"酩酊者"
『かんぱ〜い!!』
あちらこちらで涼しい音が鳴る
僕はこの場所が苦手だった
会社員には付き物の飲み会
日々の疲れを酒で癒す会
そんなの、やりたい奴だけでやれば良い
とりあえずで誘うくせに
来ないと文句を言う同僚達
人の都合もお構い無し
本当、つくづく苦手だ
...ただ
悪くない事もある
チラリと視線を泳がせば
その先に居るのは高嶺の花
今日も相変わらず綺麗な笑顔をしている
彼女が参加している事だけが唯一の救い
いつから好きだったか覚えていない
気付けばいつも目で追っていた
僕は烏龍茶を片手に、こっそりと彼女を盗み見ていた
飲み会も終盤に差し掛かった頃
彼女が1人、席を立つ
きっと御手洗かな...と視線を逸らして見ないようにした
しばらくして戻ってきた彼女は
何故か僕の隣に座った
お酒は一切飲んでないのに、顔が赤くなって心臓がドキドキとうるさい
せっかく話し掛けてくれたのに、今思い返しても何を話したのか全然覚えていない
彼女も随分飲んだみたいだ
頬が赤く染まっていて
体が熱いのか、薄い上着をずらして肩を出している
目は眠たそうに細められ
お酒の匂いが混じった吐息は、彼女の体温の高さを示している
右腕に寄せられる胸元を見ないように、彼女の持つグラスばかりを目で追った
柔らかくて、温かくて、何だか良い匂いもして
すっかり彼女にのせられて、僕はお酒を口にしてしまった
その後の事は覚えていない
隣には穏やかな顔で眠る彼女の姿
あぁ、やってしまった
僕はとんでもない過ちを犯してしまった
どうやって償おうか
どうやって弁明しようか
二日酔いで痛む頭で考えるには荷が重い
とりあえずシャワーを浴びて
服を着て、それから考えよう
ベッドから抜け出そうとした僕を
小さな手が阻んだ
慌てて振り向けば
そこには子供の様に笑う彼女が居た
嬉しそうな笑顔を向けて
彼女は僕にこう言った
"やっと捕まえた"
その言葉にはどんな意味があるのだろうか?
そんな疑問も浮かんだが
こんな疑問も浮かんでいた
僕は一体
何に酔わされたのだろうか?
ーENDー
コメント
2件
すげぇ…彼女さんまさかの…