テラーノベル
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その日のレコーディングは、いつもより少しだけ、長く感じられた。
LANはマイクスタンドにもたれかかるようにして、最後のサビを歌い終えた。スピーカーから流れ出す自分の声は、いつになく遠く聞こえる。一瞬、スタジオの照明がチカチカと揺らいだような気がして、LANはぎゅっと目を閉じた。
こさめ
こさめの明るい声が響く。だが、その声もどこか遠い。頭の芯がじんわりと重く、目眩がする。これはまずい、と思った。最近、立ちくらみが多かったのは自覚していたが、ここまで本格的に来るのは久しぶりだ。
LAN
なんとか声を出そうとするが、喉が張り付いたように感じる。歩こうと一歩足を出した瞬間、足元がぐらりと揺れた。
LAN
バランスを崩した体を、誰かの腕がしっかりと支える。顔を上げると、そこにいたのは心配そうに眉を下げたなつだった。
なつ
その声に、他のメンバーも異変に気づいて集まってくる。
みこと
すち
いるま
リビングスペースのソファに座り込むと、ひんやりとした感覚が少しだけ心地よい。 LANは大きく息を吐いた。
LAN
正直に告げると、みんなの心配そうな視線が突き刺さる。
なつ
すちが持ってきた水を一口飲むと、少し落ち着いた。
しかし、飲んだ水が胃のあたりで不快に揺れるのを感じた。 急に、込み上げるような吐き気が襲ってくる。
LAN
口元を押さえる間もなく、こみ上げてくるものを抑えきれなかった。 LANは慌てて顔を伏せ、床に胃の中のものを吐き出してしまった。
みこと
みことの声が頭に響く。だが、皆の反応は素早かった。
なつ
すち
こさめ
いるま
視界が歪み、世界がぐるぐると回るような感覚に襲われる。身体が震え、全身から冷や汗が噴き出す。情けなさと、迷惑をかけているという申し訳なさで、LANの目からは生理的な涙がにじんだ。
LAN
謝罪の言葉しか出てこない。しかし、誰一人として嫌な顔をする者はいなかった。
なつ
こさめ
すちは、新しい水とタオルを持ってきてくれた。
すち
LANは頷き、震える手で水を受け取って口をゆすいだ。少しだけ、気分が落ち着いた気がする。
みこと
こさめ
LAN
LANはポツリと呟いた。リーダーとして、常にしっかりしていなければならないというプレッシャーが、いつの間にか心の奥底に澱のように溜まっていたのかもしれない。
いるま
その言葉にLANの胸の奥がじんわりと温かくなる。そうだ、迷惑なんて考える必要はなかったのだ。彼らは家族のような存在で、どんな時も支え合ってきた。
なつ
他のメンバーも、それぞれのやり方でLANを気遣ってくれる。すちは冷蔵庫からゼリーを持ってきてくれたし、みことは毛布を掛けてくれた。こさめは、LANの隣に座って、何でもない話を小声で続けてくれた。
茜色の夕日が窓から差し込み、スタジオを柔らかく照らす。その光の中で、LANはメンバーたちの優しさに包まれていた。貧血で少しぼんやりとした頭でも、彼らの存在がどれほど心強いか、改めて実感する。
LAN
弱々しい声で呟くと、誰かがLANの頭を優しく撫でた。
なつ
その声は、いつもよりも少し低く、けれど温かいなつの声だった。LANはゆっくりと瞼を閉じた。一人で抱え込まなくていい。信頼できる仲間が、すぐそばにいる。その確かな温かさに、深い安心感を覚えた。
(この人たちがいれば、どんな困難も乗り越えられる)
LANは、心の中でそっと呟いた。夕日はゆっくりと沈み、スタジオは温かいオレンジ色に染まっていく。その光の中で、シクフォニの絆は、より一層深く結ばれていった。
真里奈 作者
真里奈 作者
真里奈 作者
真里奈 作者
真里奈 作者
真里奈 作者
真里奈 作者
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コメント
4件
うへへへ… 最高かよ…………((語彙力ばいばい
まって最高すぎる…リクエスト応えてくれてありがとうございます! 神様視点っていうか心の中?みたいなやつ、状況が分かりやすくて個人的にめっちゃいい書き方だと思います!!