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毎度出てくるイラストが可愛すぎます🥹🥹🥹
雨零 涼
夜に沈みきった街の中。音も人さえも無くなったような"あの日"の交差点に自分はいた。 あまりにも静か過ぎる街の中では、自分は異物のように感じられた。
自分は道路の真ん中に立っていたようだ。街灯も消えたここはとても真っ暗だった。 どうしてこのような場所に立っていたのだろうか。ここに来るまでの記憶がない。
雨零 涼
雨零 涼
ふと、自分が何かを握っていることに気付いた。 恐る恐る、自分の握っているものを覗き見る。
花だ。
白い、ヒナゲシの花。それを1輪だけ握りながら、この道路に立っていたのか。
とりあえず家に帰らなければ。ここに来た時の記憶がない以上、姉さんはきっと家に居る。こんな真夜中に家に1人にするわけには行かない。だからはやく、
早くこの場所から_..
その時、パチンと奥の方の街灯が付いた。
その街灯が照らし出した道路には血溜まりが一つ。 その上に、幼い少女が1人。
白いワンピースを着た彼女は裸足で血溜まりの上に立ち尽くしており、 ワンピースの裾は血によって赤く染め上げられていた。
ひっく、と啜り泣く少女の髪には紫色のスカビオサの髪飾りが付いていた。 彼女の静かな泣き声が静かな街に木霊する。
その少女の姿があまりにも居た堪れないもので、気づけば自分は声を掛けていた。
雨零 涼
雨零 涼
???
???
雨零 涼
???
雨零 涼
雨零 涼
???
雨零 涼
???
雨零 涼
先程よりも大きい声で泣き始めた彼女に何も返せぬまま立ち尽くす。
自分の両親すら思い出せないと言われれば成す術なんてほとんどない。 一緒に探そうと言った手前、この少女以外に周りに人影が見当たらない以上、聞き込みすら不可能だろう。
???
???
譫言の様に口をパクパクと開いて溢す言葉は「なんで」という疑問だけ。 目の前にいる自分すら虚ろな瞳には映らなかった。
???
もう意味なんてないのに、そう消え入りそうな声で呟いた少女がこちらを見つめた。
あ、知ってる。この顔。
この少女は
ピピピ、ピピピと太陽の光と共に夢から意識を切り離すアラーム音。 朧げだった意識が一気にぐん、と覚醒して一気にベッドから身体を起こす。
雨零 涼
雨零 涼
夢の中にいたあの少女から引き剥がされるように起こされた体は、どうにも喉の渇きを主張していた。重たい瞼を擦り渇きを潤すためにキッチンに向かう。
昨日の学校からの帰り道から身体はずっと不調を訴え続けている。 喉が乾燥することは変ではないが、その他にも頭痛がセットで痛みを主張した。
身体の芯が真っ二つに裂けて、中に隠れている「ナニカ」が溢れ出すような感覚。 あの帰り道の感覚が、身体に焼け付くようで。
天華憂と名乗った少女に出会ってから、いつもの調子が出ない。
とりあえずは今日も学校だ。いつまでもこの様にうだうだと考え続けるわけにはいかない。 自分と誠の身支度を早く終わらせて皆と集合するため、足を急がせた。
水道の水を2杯程喉に通せば、渇きの訴えは収まった。 ぼんやりとした頭でスマホを開いて目を通せば、ニュースだとか天気予報のちょっとした通知とメッセージアプリからの通知が数件来ていた。後で確認するか…
そのままその足でリビングへと向かう。 ソファーに座りながら頭をこくりこくりと揺らしている姉の肩を叩いた。
雨零 涼
雨零 誠
雨零 誠
雨零 涼
親に甘える幼子の様な自分の姉を見て、呆れたようにため息を少し吐く。 このまま眠ってしまわないよう肩を揺らせば「わぁ」なんて気の抜けた声を出すものだから 思わず笑ってしまった。
雨零 涼
雨零 誠
雨零 涼
綺麗なその黒髪にゆっくりと手を入れて、優しく梳かす。 手入れの行き届いている彼女の髪はすんなりと櫛を受け入れてくれたので、そのまま真っ直ぐに直してから、三つ編みに結おうとした所で手が止まった。
雨零 涼
雨零 誠
雨零 誠
雨零 涼
雨零 涼
雨零 誠
雨零 涼
雨零 涼
雨零 誠
雨零 誠
雨零 涼
そう聞き、またいつもの慣れた手つきで髪を交差させて三つ編みを作る。 どこにでもいる、平凡な一家の朝の風景。ただそこに、両親の会話がないだけで。
たまには、懐かしい記憶に縋る朝があってもいいだろう。
そう思いながら姉と両親について久しぶりに話した朝。 姉はぼんやりとした瞳で何処かを見つめていた。
白蜜 恋鞠
喜唱 奏音
小鳥遊 結翔
真宵 泉樹
小鳥遊 麗菜
雨零 涼
家で少しもだもだしていたからか、集合場所には自分以外のメンバーが揃っていた。 「おはよう」と自分と挨拶を交わしてくれる皆の声が耳馴染みが良くて落ち着く。
真宵 泉樹
白蜜 恋鞠
小鳥遊 麗菜
遅れてきた俺の姿を見るなり、珍しいと呟く2人。 そんな2人の姿を他所に「体調でも悪いのか」なんて聞いた麗菜の発言に恋鞠と奏音があからさまに驚いて俺の顔を覗き込んだ。結翔も奥で怪訝そうにしている。
喜唱 奏音
白蜜 恋鞠
雨零 涼
雨零 涼
小鳥遊 結翔
真宵 泉樹
小鳥遊 麗菜
雨零 涼
そんな会話をだらだらと続けていると、奏音がふと思いついたかのようにくるりとこちらに振り向き、俺の右肩にぽんぽんと手を置いてきた。
喜唱 奏音
喜唱 奏音
雨零 涼
思わず気の抜けた声で「は?」と返してしまう。 そんな自分を知ってか知らずか奏音は悪戯が成功した子供のようにニマニマとしていた。
喜唱 奏音
喜唱 奏音
真宵 泉樹
喜唱 奏音
奏音のふざけた言葉に明らかに呆れを示す泉樹の視線を受けたからか知らないが、おどける奏音を横目に俺は俯きながら固まっていた。
雨零 涼
白蜜 恋鞠
喜唱 奏音
図星。そう、図星である。変にリアルで歪な夢を見て萎縮しているのも事実。
しかし、それをこんな皆の揃った場所で晒されて冷静でいられるほど"雨零 涼"という人間は大人びてなどいなかった。
雨零 涼
雨零 涼
喜唱 奏音
白蜜 恋鞠
真宵 泉樹
小鳥遊 麗菜
小鳥遊 結翔
そう、つまりは端的に言うとムカついたのだ。
ここから無駄に抗議をしようとしてもからかわれて終了。黙っても憐れまれるだけだ。 この状態から導き出せる答えは「拗ねる」ということ。奏音相手には一番効くだろう。
奏音はこの手のタイプが一番苦手だ。だからこそ意趣返しとして使わせてもらおう。 焦ったような声が聞こえてもお構い無し、ということで。
喜唱 奏音
喜唱 奏音
喜唱 奏音
小鳥遊 結翔
喜唱 奏音
喜唱 奏音
小鳥遊 麗菜
ぎゃあぎゃあと吠えあう後ろの友人達の会話を聞きながら、俺は学校に向かった。
3時間目の終わり、俺は結翔と2人でどうでもいいような話で時間を潰していた。
小鳥遊 結翔
雨零 涼
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
雨零 涼
小鳥遊 結翔
特に自覚のなかった俺の反応にお手上げだと言わんばかりに小さくため息をついた結翔は、そういえばと俺に"彼女"の話をしだした。
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
彼女の名前が出た瞬間に空気が重々しくなったような錯覚に落ちた。 1日経ったあとでも未だに消えないあの日の感覚。喉が乾燥して落ち着かない。
大丈夫、大丈夫だ。心を落ち着かせる為に何度も言い聞かせて自分を誤魔化す。 だってここには、彼女の存在はどこにもないのだから。
小鳥遊 結翔
聞き慣れた彼の声に反応して一気に意識が浮上する。
雨零 涼
小鳥遊 結翔
雨零 涼
朝の奏音の発言もあってか、彼の表情は少し心配を浮かばせていた。 結翔のことだから、体調を気にしているのだろう。大丈夫だと言ったはずだが…
彼は俺が思うに…少々俺達に過保護すぎると思う。 妹である麗菜以外は少なくとも彼以上の体力自体は持っているはずだ。
そこが、結翔の美徳とも言えるのだろう。
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
雨零 涼
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
雨零 涼
自分で彼女の話題を振っておきながら、顰めっ面で唸っている結翔の顔を眺める。 眉間にシワを寄せているその顔はあまりにも不機嫌そのものだ。
本当に顔に出やすい奴だなと思う。そういう所は妹と似ている…かもしれない。が、 俺が言いたいことはそういうものではない。
なぜこんなに彼女の事となると彼は不機嫌になるのだろうか。 些細な疑問を思ったままにぶつけてみた。
雨零 涼
小鳥遊 結翔
雨零 涼
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
雨零 涼
凄い勢いでマシンガントークを終わらせた結翔は何やらはぁはぁと肩で息をしていた。
優しい彼が苦手意識を持つタイプに対してここまで語る人だとは思っておらず、 少しばかり呆気にとられていた。が、よくよく考えてみると疑問が一つ。
雨零 涼
小鳥遊 結翔
小鳥遊 結翔
雨零 涼
小鳥遊 結翔
腑抜けた声を出して結翔が固まった。
雨零 涼
雨零 涼
雨零 涼
雨零 涼
雨零 涼
固まった結翔に対して追い打ちを食らわせるように、 彼の苦手な人物像と泉樹の類似点を並べていく。
小鳥遊 結翔
雨零 涼
その時、タイミングよく4時間目を始まりを告げるチャイムが教室内に響いた。
きらり、と窓から差し込んだ日光が自分の頬を照らす。 丸い太陽の光が地平線に溶けゆくその様を眺める時間を、自分はなんとなく好んでいた。
図書室から見える校庭の人影は少なくなってきた。 日が落ちる時が近くなってきた証だろう、運動部も帰る時間だ。
自分もそろそろ自宅に帰らなければならない。帰らなくとも家族は気にしないけれど。 僕が家に帰らなかったことを知れば彼らはきっと心配する。してくれる、だろうから。 …彼らの心の一部を占領できるのなら、帰らなくてもいいかもだなんて。
_…ちょっとだけ、我儘が過ぎたかな。
ガタンと椅子から立ち上がって本を戻そうとした時、奥から一つ足音がした。
真宵 泉樹
???
天華 憂
僕の声に反応を返したのは、意外にも言葉の交わした事のある転校生だった。 言葉の端々からは育ちの良さが少なからず感じられる。
真宵 泉樹
天華 憂
天華 憂
真宵 泉樹
真宵 泉樹
天華 憂
社交界。自分も社長の後継ぎ息子というレッテルを貼り付けて両親に付き添う事があった。親は自分より周りの大人にしか興味を持っていなかったから、結局は外からの印象を良くしようとして自分を連れ添っただけだった。
だからこそ、僕はあの空間が嫌だった。こんな場所に立たせる親を少し恨んだ。 そんな場所でやっていけるほど表情を作れるようになった自分が嫌だった。
様々な人間の思考が絡み合う上の世界。気持ちの悪い、心にも無いお世辞。 自分に話しかける人物が少なかったのが唯一の救いだった。
そんな中、僕に声を掛けた数少ない人の内の1人。…それが憂さん。
なんとなく似たような境遇に立つ人だったから特に嫌悪感もなかった。 それに、少なくとも談笑中の男女に横槍を入れる人もいなかったから、話しかけられる機会も減って、正直少しだけだが利用もさせてもらっていた人。
真宵 泉樹
天華 憂
天華 憂
真宵 泉樹
天華 憂
天華 憂
真宵 泉樹
天華 憂
何処となく流れる張り詰めた空気。それは、お互いの立場上仕方ないことで。
唯一仮面を外して、自分自身で向き合えていたこの居場所に。 お互いという仮面を知る人物が現れてしまえば、警戒してしまうのも仕方のないことだ。
そこで彼女は、一つ「休戦」という手段を用いた。
天華 憂
天華 憂
真宵 泉樹
天華 憂
天華 憂
真宵 泉樹
天華 憂
天華 憂
彼女はそれだけ言い残して、風のように去っていった。
なんとも言えない感情だけを取り残して。
真宵 泉樹
その時、ピコンと自分の持つスマホからメッセージアプリの通知が一つ。 送信者の名前には見知った文字が並べられていた。
真宵 泉樹
真宵 泉樹
内容は至ってシンプル。結翔と麗菜と泉樹で休日に出かけないかという誘いだった。 何気ない幼馴染とその妹との休日、でもそれだけで破笑してしまうほどには嬉しくて。
僕はその返信を入力し始めた。