川の臨める柵にもたれかかり、 安酒をあおる。
自分で言うのも傲慢なように思えるが、今日は珍しく周りに誰もおらず一人なので、思いつきで感傷に浸っているところだ。
風が酒で火照った顔に当たって涼しく感ぜられる。 目に映る景色は、沈む夕日とそれを反射する川とで中々綺麗に見えた。
こんな風にするのも悪くはないな、とぼんやり思っていたら、近くで足音がすることに気がついた。
ゆっくり振り返ると、なんとびっくり、ソビエトがそこにいた。
あからさまに嫌そうな表情を浮かべているところを見ると、流石に失礼じゃないかと憤りの気持ちが湧いてくる。
ソ連
アメリカ
悪いけど、まだここから離れる気はないから。
そんなに俺といるのが嫌なら自分から離れろよ、と言外にそう含みながら、俺は顔を元の位置に戻した。
今はこれを堪能していたい。
しばらくすると煙草の嫌な匂いが風に乗って漂ってきた。
あいつのことだからすぐにここから立ち去るだろうと思っていたが、どうやら俺と同じように、柵に体を預けながら煙草まで吸い始めたようだった。
その行動を不思議に思いつつも、聞くほどでもなかったので、俺は結局黙ることに決めた。
それからはただ穏やかな時間が流れた。
暫く目を閉じていたので、まぶたを開けたときには数瞬の間眠っていたんじゃないかと錯覚した程だった。
隣にこいつがいることを除けば、 案外良い空間だと思える。
アメリカ
ソ連
アメリカ
と、言ってみた後で少し後悔した。
綺麗な景色に、あるいは酒にあてられ、普段の俺ではおよそ言わないようなことを言ってしまった。
しかも相手は、あいつだ。
できた試しもないのに、血が通った会話を求めるなんて、勝手に期待して気持ち悪い。
そう自分に言って、自嘲するように少しだけ笑った。
ソ連
だから、そんな返事が返ってきたことに驚いた。
反射的にあいつがいる方を見やる。
ソビエトは紫煙をくゆらせ、真っ直ぐこちらを見ながらこう言った。
ソ連
それを聞いて、あぁ、そうだ、コイツは狂っているんだった、と思う。
こんな血塗れの世界の中で、叶うかもわからない夢と希望を抱くことは、正気といえるのだろうか。俺にはわからない。
いつまでも折れないソビエトに何も言えず、そうして俺は、目を逸らした。
ソ連
そう言うソビエトは、神へ誓いでも立てているようだった。
犠牲ね、と少し苦笑して酒を一口飲む。
たとえ、世界が核戦争で滅んだとしても、ソビエトはそのことを見失わないでいられるのだろうか。払った犠牲は無駄なんかじゃなかったと、それでも信じていられるだろうか。
アメリカ
俺はお前たちが好ましくないことをしたら、当然、立ち塞がるけど。
ソ連
不機嫌そうに言うソビエトに、もはや諦めの気持ちが出てきた。
アメリカ
俺も今の秩序守るために頑張るよ。
夢見がちなガキだ、と思う。
なおのこと沈んでいく夕日に向き直り、俺は最後の数滴を流し込んだ。