繋ぐ（かげよこ）

基と会ってから高頻度で見るようになった夢

7人での楽しい思い出の夢のなかに

たまに出てくる悪夢

ここ2ヶ月でよく見るようになった

焼肉屋で6人をみてから、１ヶ月が経った

日に日に7人でまた…

という想いが増していってる気がするのには

気づかないふりをしている

今日は新しいバイトの初日だった

今回はいないことを願って

でも、どこかで願っているのかもしれない

出くわすことはなく

説明を受けバイトがスタートした

そこは、

思い出の場所だった

思い出すと笑えてくる

あの頃が一番楽しかったのかもしれない

いや、そうだろうな

月曜日、3人だけ部活がない日で

ここでよく放課後話していた

ここを選んだのには

乗り越えたかったから。

上書きしておきたかった

乗り越えるのはまだまだ先そうだった

ドアのベルが鳴った

そこには基と奏がいた

急いで顔を下にしたが

１回基と会ってるからかすぐ気づかれてしまった

周りに店員がいなかったことから

接客せざる負えなかった

内心苦しかった

久しぶりにみた奏の顔が

ここでまた3人で会ったことが

切なくも嬉しくも感じた

するとすぐ基がベルを鳴らした

基の視線が見たことのないぐらい冷たかった

初めて3人でパスタをシェアしてから

俺らの鉄板になっていたメニューだった

心做しか震えてしまった声に恥ずかしさを覚える

でも基は一切目を離さなかった

言わなくても分かってしまった

嫌ぐらい注文したあのパスタは

嫌でも忘れてはいなかった

後ろで話す2人が

別世界に感じて

少しばかり後悔してしまった

立ち去ろうとしたら

奏に腕を掴まれた

乗り越えなきゃいけないのに

こうしたのは自分なのに

救い出して欲しい

と思ってしまった

決めたのに

崩れてしまった

そう言って2人から離れた

17時にバイトが終わるのは本当だった

時刻は17時15分だった

店から出ると

2人がいた

ベンチに座っていた2人はびっくりした様子でこっちを見てきた

近くのファミレスに行き

俺の前に奏、奏の隣に基と座った

これは、昔からこの座り方だった

俺が下を向いていると

基から切り出した

顔をあげることなく聞く

言いたいこと

呼び出した理由は

検討はついていた

なにも言えなかった

なんと言えばいいか分からなかった

救い出してほしかったけど

本当のことを話す勇気が

俺にはなかった

奏の顔が見たことないぐらい苦しい顔をしていた

今まで俺だけが苦しい想いをしていたのかと思っていた

でも、違った

我慢していたものがずるずると

崩れる音がした

ひとつ、またひとつ

この2年我慢していたことを吐き出す

いつの間にか

大きなトラウマになっていた

大好きって

なにがだよ

懐かしい感覚で

目の奥が熱くなった

6人と会わなくなってから

友達や恋人を作ることがトラウマで出来なくなってしまった俺は

感情と、自分が

分からなくなっていたのかもしれない

それをこの2人がちょっとずつ助けてくれているのかもしれない

7人で集まれる未来

想像は

するのが怖かった