山田桜
……
私は高校を卒業した後、実家を離れて大学のために一人暮らしをする事になった
まだ不安で不安で仕方ない。
山田桜
(上手くやってけるかなあ……)
私は心を落ち着かせるためにお母さんに電話をした……
つもりだった
でもその電話に出たのは聞き覚えのある爽やかな声、
及川徹
もしもーし?
山田桜
え、あ、及川さん!?
私は驚いて思わずスマホを落としてしまった
山田桜
ど、どうして……お母さんに電話したのに
及川徹
あ、桜ちゃん?久しぶり
及川徹
間違い電話って事かな?
山田桜
あ、は、はいすみません
及川徹
いいよ全然!
及川徹
それより声が震えてるけど、どうかした?
及川さんは声からして私を心配してくれてる
山田桜
あ、えっと……
山田桜
実は、今日から一人暮らしで
山田桜
知らない街で、知らない人と上手くやってけるか不安で……
及川徹
……そっか
及川徹
俺も笑
及川徹
最初は不安な事が沢山あるかもしれない
及川徹
でもさ、それに怖がってたら
前に進めないよ?
山田桜
!
山田桜
前…に……
及川徹
俺もちょっと前まで不安だった
及川徹
でもさ、不安の代わりにきっとこの先、新しい発見があると思うんだ
山田桜
……
及川徹
だから、頑張れ
及川徹
1歩踏み出して、立派な大人になるんだよ
山田桜
はい!!
及川徹
ふふっ、
山田桜
ていうか、及川さんて今どこに居るんですか?
山田桜
卒業してから全く連絡取ってませんでしたね笑
及川徹
あぁ、俺は……
及川徹
……
山田桜
?及川さ……
及川徹
すっごく楽しい所
及川徹
俺自身を成長させてくれる
及川徹
そんな場所にいるよ笑
及川徹
じゃあね
山田桜
え、あ、ま、待って!
及川徹
何?
山田桜
最後に、一つだけ言わせてください
及川徹
?
山田桜
私、及川さんが卒業してからある気持ちに気づいたんですっ、
山田桜
私及川さんの事……
プツン
私がずっと言いたかった気持ちを伝えようとした瞬間、電話は音を立てて切れてしまった
及川徹
……
及川徹
ごめんね、桜ちゃん
君が言おうとした言葉は
何となく分かってしまった
でも俺は、その気持ちに答えられない
俺は俺の生き方で、
桜ちゃんは桜ちゃんの生き方で、
及川徹
もう俺たちは……
交わることの無い関係なんだから
山田桜
……
山田桜
グスッ、あーあ
タタタッ
連絡先を消去しますか?
山田桜
(及川さんの気持ちは十分分かった)
山田桜
(もういいんだ)
はい
山田桜
さようなら、
ポチッ
山田桜
……うん、
たまたま繋がった間違い電話
及川さんには背中を押して貰えた
そして……ずっと心残りだった気持ちが晴れて逆にスッキリした
山田桜
でもあれくらい言わせてくれればなー
でも言ってしまったらもう取り返しはつかないし、
きっと及川さんも察してくれたんだと思う
山田桜
ありがとう、及川さん
あなたに出会えて
幸せでした。