この作品はいかがでしたか?
0
この作品はいかがでしたか?
0
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朝、通勤通学の人であふれかえる 駅前の道を、私はバス停に向かって ひとりでとぼとぼと歩いていた。
チリン
とベルを鳴らして、自転車に乗った学生が私の横を通りすぎていく。
その背中を見送りながら、私は小さくため息を吐いた。
広崎梨奈
これまでは毎朝のように加瀬くんの隣に並んで、駅からバス停までの道を歩いていたのに
このところサッカー部は毎日朝練があるため、私は最近ずっとひとりで 登校している。
仕方のない事だと分かってはいるけれど、付き合い始めたばかりなのに
加瀬くんと全然二人で居られなくて、本当はちょっぴりさみしい。
だからせめて、視界に加瀬くんを入れておきたくて、休み時間も授業中も、
気づくと目で加瀬くんを追ってしまっている。
(|・ω・)|ガラガラ
教室についた私は、今日も無意識に加瀬くんの姿を探していた。
窓際の壁にもたれながら、数人の男子達と話をしている加瀬くんを見つけ、胸が トクン
と、音を立てる。
そっと見つめていると、親友のさつきが冷やかしてきた。
さつき
広崎梨奈
さつき
さつき
広崎梨奈
広崎梨奈
さつき
広崎梨奈
広崎梨奈
さつき
さつきが感心したようにつぶやいたその時、
男子1
加瀬くんを呼ぶ声が聞こえて、私は反射的にそっちの方に顔を向けた。
廊下には、加瀬くんを呼んだ同じクラスの男の子と、栗色のショートヘアーの、可愛らしい女の子が立っていた。
同じ学年ではないから、多分一年生。
パッチリした瞳でちょっぴりベビーフェイスな顔つきは、同性の私から見ても可愛いな、と思うり
加瀬君は彼女の姿を見つけると 「あ」 という顔をして近寄って行った。
加瀬君の周りにいた男の子達は、興味津々といった様子で見守っている。
加瀬功太
一年
彼女は何かを両手に乗せて、加瀬君の前に差し出した。
加瀬功太
と声をあげて加瀬君が彼女の手から、 ユニフォームの形をしたキーホルダーを、指でつまみあげる。
加瀬功太
加瀬功太
一年
加瀬功太
加瀬君がクシャッと微笑むのと同時に、彼女の頬がぽっと赤く染まった。
広崎梨奈
加瀬君は同じ学年だけでなく、後輩からも人気があるということは噂に聞いていた。
だからこうやって、他の女の子が加瀬君と嬉しそうに話しているのを見るだけで、なんとなく心がざわざわして落ち着かなくなってしまう。
彼女は加瀬君と話しながら、自分の鞄を指さしている。
つられるように彼女の鞄に目を向けた私は、はっと息をのんだ。
広崎梨奈
ペコっと頭を下げて、彼女は廊下で待っていた友達の所に走って行く。
きゃっ とはしゃぐように友達と話しながら去って行く後ろ姿を、私は無意識に目で追っていた。
広崎梨奈
広崎梨奈
男子1
男子2
加瀬功太
みんな冷やかす声をうしろに 聞きながら、私はうつむいた まま教室を出た。
ジャー
手洗い場で意味もなく手を 洗い終えると、ハンカチを 手にしたまま、ぼんやりと 立ちつくす。
加瀬君の気持ちを、疑ってはいない。
けれども、加瀬君とさっきの彼女の関係が、気になって仕方がない。
広崎梨奈
広崎梨奈
突然私の顔に、ぱしゃっと水しぶきがかかった。
顔を上げると、一年生の時に同じクラスだった三浦君が、いつの間にか隣に立っていて、指ではじいて水を飛ばしてくる。
三浦
三浦
考え事をしていてぼんやりしていた私は、かなりびっくりした顔をしていたらしい。
広崎梨奈
広崎梨奈
三浦
広崎梨奈
三浦
広崎梨奈
三浦
三浦
広崎梨奈
広崎梨奈
三浦
広崎梨奈
三浦
三浦
三浦君は、小首をかしげて少し考えてから口を開いた。
三浦
広崎梨奈
三浦
広崎梨奈
三浦
三浦
広崎梨奈
三浦
そう言って、三浦君はニッコリと微笑んだ。
広崎梨奈
なんだか脱力してしまった私だったがとりあえず三浦君にお礼を言う。
広崎梨奈
三浦
広崎梨奈
三浦
広崎梨奈
三浦君は私に顔をよせて、 小声でささやいた。
三浦
広崎梨奈
三浦
三浦
広崎梨奈
ヤキモチを妬いているのに気づかれて 恥ずかしくなった私が顔を赤くすると 三浦君はクスクス笑いながら私の頬にチョンと指でついてくる。
三浦
加瀬功太
名前を呼ばれてドキリとして後ろを振り向くと、加瀬君が不機嫌そうな顔をして立っていた。
三浦
三浦君は人懐っこい笑顔を見せて、加瀬君の肩をポンと叩く。
加瀬功太
三浦
三浦
加瀬功太
広崎梨奈
広崎梨奈
三浦
三浦君は、そのままクルッと背中を向けたまま、手を振って言ってしまった
広崎梨奈
広崎梨奈
広崎梨奈
あわあわしながらごまかそうとすると 加瀬君がふいっと顔をそむける。
加瀬功太
広崎梨奈
加瀬功太
広崎梨奈
まとう空気が、いつもと違うように感じて戸惑っていると、加瀬君は、ハッとした顔をして、髪をクシャッとした。
加瀬功太
広崎梨奈
加瀬功太
加瀬功太
加瀬功太
広崎梨奈
加瀬功太
広崎梨奈
加瀬功太
広崎梨奈
加瀬くんのすんだ瞳が、真っ直ぐに私を見つめてくる。
加瀬功太
加瀬功太
広崎梨奈
ぱぱっと俯いた私は、赤くなった顔でコクンとうなずいた。
広崎梨奈
胸に手を当てて、ドキドキが落ち着くのを待っていると、加瀬くんが
加瀬功太
と思い出したように声をあげた。
加瀬功太
加瀬功太
広崎梨奈
加瀬功太
コクコクと頷いて返事をすると、加瀬くんがふわりと微笑んでくれる。
広崎梨奈
そう考えるだけで、ふわふわと気持ちがはずんでくる。
加瀬功太
ぽり、と鼻の頭をこすって、加瀬くんが照れたようにつぶやいた。
加瀬功太
広崎梨奈
ぶわっとまっ赤になりながら、小さな声でつぶやく。
広崎梨奈
加瀬功太
私を見下ろす加瀬くんの耳は、私と同じように赤くなっていた。
広崎梨奈
放課後、家に帰って自分の部屋の床にぺたりと座る。
ベットにもたれながら、私はため息を吐いた。
なんだか胸が苦しい。
加瀬くんのことを考えるだけで、 「きゅん」 と胸がうずいて切なくなる。
今日も学校で会って言葉をかわしたのに、もう会いたくてたまらない。
加瀬くんの声が、ききたくなってしまう。
恋をする女の子は、ちょっぴりよくばりになるのかもしれない。
広崎梨奈
広崎梨奈
広崎梨奈
広崎梨奈
思い切ってメールだけでも送ろうとスマホに手をのばしたとき、フッとあの一年生の女の子のことが頭をよぎった
広崎梨奈
『元カノ』でないことは加瀬くんの言葉から知ることが出来たけれど、
どうしてあの女の子とおそろいのキーホルダーをもってるのかは、まだ聞けていない。
でも今は、嫉妬とかそういう感情を加瀬くんに見せたくない。
大好きな加瀬くんと、やっと気持ちを通わせることが出来たんだもん。
今はその甘い余韻にひたっていたい。
スマホを手にとった私は、結局メールを送るのはやめて、かわりにWebの小説投稿サイトで公開している日記を開いた。
恋助さんから私にメッセージが届いてる。
恋助さんは、私の好きなWeb小説家だ
心理描写が丁寧に書かれた彼の恋愛小説は、男女問わず人気がある。
以前、小説を読んでコメントを送ったことがきっかけで、ときどき私の恋の悩みをきいてくれている。
私の相談内容は、Web上の日記に書きこんで、恋助さんも利用している小説投稿サイトで公開することになっていた。
日記を読んだ恋助さんがその日記にコメントを送るという方法で、私にアドバイスをしてくれる。
もちろん誰に読まれてもいいように、加瀬くんや私の名前は出していない。
ちなみに私のユーザーネームは『ヒナ』だ。
『ヒロサキ リナ』 の最初と最後の二文字を合わせて『ヒナ』。
恋助
恋助
恋助
モヤモヤしていた私は、日記にキーホルダーの事を書き込んだ。
ヒナ
ヒナ
ヒナ
ヒナ
ヒナ
ヒナ
ちょうど私の日記を読んでくれていたようで、すぐに恋助さんからメッセージが届く。
恋助
恋助
恋助
ヒナ
ヒナ
ヒナ
広崎梨奈
広崎梨奈
広崎梨奈