テラーノベル
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春の朝。 学園の中庭は、新入生の声で少しだけ騒がしかった。 まだ制服が身体に馴染んでいない生徒たちが、 地図を広げたり、掲示板の前で立ち止まったりしている。 その端で、ひとりの新入生が困ったように立ち尽くしていた。
ぷちぷち(新入生)
足元。 運搬用の魔力カートが、制御を失いかけている。 積まれているのは、授業用の魔法器具。 このまま倒れれば、 当たれば怪我では済まない。 周囲の生徒は、気づくのが一瞬遅れた。
モブ
言葉が終わる前に、 一人の上級生が歩み出ていた。 じゃぱぱだ。
走らない。 声を張らない。 ただ、距離と角度を見る。 (傾き、三度) (滑り、進行中) (止める必要はない)
短く、低い詠唱。
じゃぱぱ
カートは、 倒れる直前で軌道をずらし、 音もなく地面に落ち着いた。 器具は、一つも壊れていない。 一瞬の静寂。
ぷちぷち(新入生)
じゃぱぱ
ぷちぷち(新入生)
じゃぱぱ
それだけ言って、 じゃぱぱはカートを正しい位置に戻す。
ぷちぷち(新入生)
じゃぱぱは少し考えてから言った
じゃぱぱ
ぷちぷち(新入生)
じゃぱぱ
ぷちぷち(新入生)
ぷちぷち(新入生)
じゃぱぱ
そう言って、彼は立ち去る。
その背中を、 少し離れた場所から見ていた人物がいた。
ひなこだ。
ひなこ
隣にいた新任教師が、小さく息をつく。
ひなこ
教師
ひなこは、微笑んだ。
ひなこ
視線の先。 じゃぱぱは、もう人混みに紛れている。
誰も気に留めない。 でも、確かにそこにいる。
ひなこ
ひなこ
教師
ひなこ
少し間を置いて、続ける
でも――
ひなこ
春風が、学園を通り抜ける。 今日も、何も起こらない。 それが、この場所が守られている証だった。
ー完ー
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