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TABOO

12 - #12 青空

♥

40

2023年08月15日

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8ヶ月後

先生

お久しぶりです

冴月

久しぶり

冴月

受験前日ぶりだね

1週間前に高校を卒業した楓くんは、少し見ない間に垢抜けたように感じる。

家庭教師という名目上、受験が終わってからは会わずにいた。

楓くんの看病に行った日以来、お互いに好きだと伝えることもしていない。

家だと落ち着かなくて

呼び出しちゃいました、すみません

冴月

いいよいいよ

マジで気が気じゃないです

冴月

そりゃそうだよー

冴月

あと2分?

そうっすね、あと少し

楓くんはあの後順調に成績を上げ、予定通り第1志望だった大学を受験した。

今日はその大学の合格発表の日である。

誰もいない公園のベンチで、ふたり肩を寄せ合い、1つのスマホを覗く。

あっ

来た

冴月

おっ

大学のホームページにアップされたPDFを、楓くんが震える指でタップする。

252番です

冴月

252……

冴月

あった!

冴月

え、あった!?

楓くんが両手の拳を高く突き上げる。

冴月

よかった……

勉強を教えていた側からすると、反対に安心で崩れ落ちそうである。

先生

身体の向きを少し変えて見つめ合う。こんなに一緒にいるのに、距離の近さには慣れない。

ありがとうございました

冴月

いえいえ

冴月

結局は楓くんの頑張りだから……

これで僕も大人に1歩近づきました

冴月

ふふ

冴月

そうだね

僕は

やっぱり先生のこと好きです

先生は僕のこと

どう思ってますか?

冴月

冴月

私も好きだよ

ほんとですか

じゃあ

冴月

ほんとに

冴月

5歳上だけどいいの?

同い年だったら

同じ学校行けたかなとか妄想はしますけど

年を気にしたことはないです

先生は

5歳下は嫌ですか?

冴月

嫌じゃないよ

なら

大きく息を吸い、手が差し出される。

付き合ってください

冴月

私でよければ

固く握手をする。

お待たせしました

冴月

うん

冴月

待ってた

冴月

あっ、それでね

冴月

ひとつ私からも報告があるの

えっ

なんですか

手を離して、楓くんが身構えるように表情を固くする。

冴月

私、転職することになった

冴月

楓くんの大学と同じ、東京に

えっじゃあ

塾講師がどうとかも今はもういいってことですか

頻繁に会えるってことですか

冴月

ふふ

冴月

そうだねえ

やったあ

本当はめっちゃ不安だった

けど良かったんですか?

冴月

いいの

冴月

私の意思だから

じゃあお互い新天地で頑張ることになるんですね

冴月

そうだね

えーやったあ

色んなところ行けますね

合格より嬉しいかも

冴月

そんなに?笑

そんなに!

付き合ったらもう我慢しなくていいし

近くにいるなら尚更ですから

無邪気に笑う姿はやっぱりまだ18歳だ。

だけど不安はない。

冴月

せっかくだし、どっか寄って行こっか

焼肉行きましょ!

いっぱい食べて、家帰ったら一緒に映画かアニメかなんか見ましょ!

冴月

わかったわかった笑笑

楓くんが飛び跳ねるように立ち上がって、オーバーサイズのパーカーが広がる。

透き通るような青空が、どこまでも広がっていた。

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