会社から駅に向かう道中に
新しくできたケーキショップ
気にはなっていたけれど いつも人が多くて敬遠していた
だから購入したことはなかったが
珍しいことに 今日は店内には客が少ない
きりやんは店のドアを開けた
甘い香りの歓迎を受けて
きりやんはショーケースの中を覗く
宝石のようなフルーツに彩られ クリームの衣装をまとったケーキたち
どれも美味しそうに見える
いろんなケーキを6種類と シュークリームとプリンを6個ずつ
それらが入った箱を 大切そうに手にしたきりやんは
友人たちと暮らす家を目指して 足を踏み出した
いつからだったか
新しいスイーツショップを見かけると チェックするようになっていた
皆と暮らし始めてからは お土産に買うことが当たり前になった
それもこれも
好きな人の喜ぶ顔が見たいから
スイーツを見て目を輝かせる
嬉しそうにスイーツを頬張る
美味しいと言って喜んでくれる
そんななかむの姿が 可愛くてたまらなくて
スイーツを買って帰ったり
時間が合えば 一緒に食べに出かけたりした
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だけど今
好きな人との距離が微妙に変化した
ぎこちない彼の姿
困ったような顔
自分に対してどう接すればいいのか 悩んでいることくらいわかる
周りの状況に流されて
冷静な判断ができなかった 自分が情けない
少なくとも あの場で告げるべきではなかった
そんな後悔は毎日のように襲ってきて
きりやんもまた
なかむに対して どんな態度で接すればいいのか
それすらもわからなくなっている
告げてしまえば
関係が壊れることくらい わかっていたはずなのに
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そう呟いて
きりやんは 星の見えない夜空を見上げた
唐揚げが揚げ終わり 6人分のお皿に盛りつける
そのタイミングでドアが開き ぶるーくは顔を上げた
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帰宅したばかりのきりやんの手には スイーツが入っているとおぼしき箱
それを見てぶるーくは微笑む
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そう言いながら きりやんは箱をテーブルに置く
そしてキッチンに向かい冷蔵庫を開けた
その時
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ダイニングに入ってきたなかむは
テーブルに置かれた箱を見て 目を輝かせる
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ぶるーくに視線を向けたなかむは
彼の隣にきりやんがいることに気づいた
そして視線をうろつかせた後に
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と固い笑顔を見せた
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こちらも固い表情を見せる
間に挟まれたぶるーくは
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と心で呟いた
居心地悪いのか
それを払拭するためか
なかむは箱の中を見ながら なぜかスイーツについて饒舌に語りだし
それに対してきりやんが 「あぁ」とか「へぇ」とか返す
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あの突然の告白の余波は大きい
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そう言い残して きりやんは自室へと向かった
その背中を見送ったなかむは 大きく息を吐いた後
困ったような顔をして リビングのソファへと腰を下ろす
ぶるーくはなにも言えないまま
ただひたすらに夕飯の支度を続けた
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帰宅したばかりの きんときの部屋に押しかけて
ぶるーくは 先刻の出来事を語る
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洗濯物を片付けながら
きんときはぶるーくに相づちを打つ
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クローゼットの扉を閉めて きんときは腕を組んでぶるーくを見た
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唇を尖らせたぶるーくは ラグの上に座って天井を仰いだ
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きんときの言葉に ぶるーくはぐうの音もでない
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ぶるーくは恨めしそうな顔で きんときを見る
きんときは大きなため息をついた
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きんときは困ったように 軽く頭をかいた
そして
大型犬のように
目をうるうるさせながら 自分を見るぶるーくから視線を反らした
自室に戻ったなかむは デスクの椅子に座り
カレンダーに目を向けた
きりやんから告白されて
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その間に きりやんからのアクションはなく
自分もなにも返答していない
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とはいえ
今の宙ぶらりんな状態も
きりやんとの間の微妙な空気も
なかむにとっては面白くない
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幸いここには いつでも話せる友だちがいる
答えがでなくていい
このモヤモヤした気持ちを吐き出したい
ただ誰かに聞いてほしい
なかむはため息をついて
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と呟いた
皆で囲む食卓は和やかな雰囲気で
弾む会話に なかむときりやんのぎこちなさも薄れ
なかむにもきりやんにも
自然な笑顔が見られる
食後に出された6つのケーキ
いつものようにじゃんけんで 自分の食べたいケーキを選んでいく
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嬉しそうに笑って ケーキを頬張るなかむ
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その笑顔を見るきりやんの表情も とてつもなく嬉しそうだ
そんな2人の姿を見て
お前が逃げてんじゃねぇよ
お前がしっかり押していけよ
シャークん以外の3人が
きりやんに対して そう心の中で呟いたのは
言うまでもない
コメント
2件

おぉ〜!!医者編がついに始まったんですか!?やっぱりここはそう簡単にいかないか…。それもまた医者らしくていいですね。医者は特にすれ違いがありそう…。そこがいいんですけどね! 更新ありがとうございます!次回も楽しみにしております♪