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太宰

今は妊娠9ヶ月半ば。

太宰

お腹もかなり大きくなり胎動も収まったかと思うと

太宰

次は後半つわりに襲われた。

太宰

中也ぁ。

中也

んだよ。さっさと食え

中也

俺はもう行くぞ?

珍しく夕方に出かける中也。何処へ行くのかと聞くと『買物』と一言。

矢張り。私が身籠ってから中也の生活力が一段と伸びたような気がする。

中也がポートマフィアに入った頃一度一緒に料理をしたことがある。勿論嫌々だ。

彼はまず小麦粉をひっくり返し、よろけて、ガスコンロの火をつけて粉塵爆発。その次に卵を全部ひっくり返し、何故かフライパンが溶けた。

そんな中也は今和食は勿論、中華、イタリアン、フランス、韓国、その他もノーレシピで作れるようになり、タイムセールは逃さない人になった。

太宰

中也どれぐらいで帰ってくる?

いつものお礼として少しだけ甘えてやろう。

中也

小一時間ぐらい。

太宰

三十分。

中也

は?いや。無理だろ。

太宰

お願い。

中也

っ。有り難いが無理なものは無理だ。

中也は乱暴に私の頭を撫でた。

中也

大人しく待ってろ。できるだけ早く帰ってきてやるから。

太宰

わかった。待ってる。

中也

おう。

中也

何かあったすぐ言えよ。

太宰

わかった、わかった。

中也

分かってねぇだろ。

太宰

まぁまぁまぁ。

そんなこんなで中也を送り出して、15分。少し吐き気が増して来た。

太宰

つわりの後にもつわりがあるなんて…

太宰

生き地獄…

でも。もうすぐ逢える。中也の子供に逢える。そう思うだけで胸がいっぱいになる。気の所為かもしれないがちょっとだけつわりも楽になる。

太宰

そういえば最近少しお腹が張るような。。。

太宰

でも予定日まだ2週間先だし…

太宰

何かあったらどうしよう。

中也が帰ってきたら相談しよう。

此後地獄より辛い地獄を見ることも知らず私は放って置いた。

ベットルームで私の大好きな本を読みながらまったりしていると痛みに襲われた。

太宰

いった。待って…これやばいやつ。。。

本能的に危険だと察知し中也に電話しようと思ったが携帯はダイニングテーブルにあることを思い出した。

太宰

ほんっと。立ち上がれないんだけど。

太宰

ゔぅっ。

森さんの拷問より痛い。銃で撃たれたときより痛い。中也に殴られたときより痛い。私が生きてて感じたことのないような痛みで小パニック

壁伝えで頑張ってリビングまで行こうとしている間に徐々に痛みが和らいで行った。

太宰

痛く…無くなった?

動けるうちに急いで携帯を取りに行き森さんに電話を掛けた。然し一向に出ないのだ。

おそらく密会中か、スマホが壊れたのか、壊したのか、壊されたのか(5代目)戦闘中か。

出ないのなら仕方ない。また後で電話しよーと私のマイペースが発揮された。

ただいま~

太宰

中也!

太宰

おかえり中也。

太宰

遅かったね

中也

ったく。スーパーの中で強盗入ってきて…

太宰

もしかして退治したの…?

中也

仕方ねぇだろ。

太宰

お疲れ。ところで今日の晩御飯は何かね?

中也

豆腐ハンバーグ。

太宰

わぁ。ヘルシー

ずきっ。

また痛みが襲ってきた。

太宰

たっ。楽しみぃ

中也

どうした?ぎこちねぇぞ?

太宰

何でもないよ。

夫婦だというのに私は何故か中也を心配させまいと痛みがあることをことごとく隠した。

私はソファに座りクッションを抱いてうつ伏せた。此れなら顔をしかめても見えないし少々なら痛みで唸ってしまっても問題はない。

太宰

一時間の間に3回ほどの痛み。

太宰

二十分間隔。

太宰

少し早すぎるような。気づかなかっただけか?

中也

出来たぞー。

太宰

あっ。うん。

やっと痛みが引いてきた。中也が料理している間2回も痛みに襲われた。間違いない。陣痛だ。

中也

味大丈夫か?

太宰

うん。相変わらずのうすあじ

中也

産まれたらラーメン作ってやっから我慢しろ。

太宰

醤油がいい!

中也

わーたっ。

しばらく沈黙が続いた。不自然なほどに静かだった。

中也

太宰。どうした。らしくないぞ?

太宰

ごちそうさま。

太宰

なにが?

中也

飯食うと手前何時も文句言うじゃねえか。

太宰

私だって人間だ。気分が乗らないときだってあるよ。

中也

そうか。洗い物してくる。

太宰

ありがとう

自分でも何故こんなにくだらない意地を張るのかが、わからない。痛くて、辛いのに何故か隠してしまう。

というか引くに引けなくなったような感じ。痛みも間隔も短くなってるのに私はまだ助けての一言も上げていない。

夫としての中也を信頼してないから?いや。きっと大切にしたいから。

太宰

ごめんっ。

太宰

い゛っつ…

私はこっそりマフィアのビルに向かおうとした。今となれば何故あんなことをしようとしたのかわけがわからない。

中也

太宰ー?

中也

デザート食うか?

中也

太宰?

居ない。リビングにはいない。

部屋にも、風呂場にも、トイレにも、収納にもいない。

中也

玄関?買い物か?

太宰は玄関の段差に座り込んでいた。

中也

太宰?どうした?

中也

何でこんなに汗かいてんだ?

中也

…太宰?

太宰

ごめっ…ん

中也

お前。もしかして陣痛きてんじゃねぇのか?

太宰

ちがっう…

また。また変な意地を張ってやがる。怪我したときも、毒盛られたときも。

中也

太宰立てるか?今からボスんとこ行くぞ?

中也

準備するからソファで横になれ

太宰

むりっ。動け…ない。

中也

じゃあ少しだけ待ってろ。

太宰

行かなっいで…ここにいて。

普段痛がらない、泣かない太宰が痛がって泣き目で俺にすがった。

そんな太宰を可愛いと思ってしまった自分を殴りたい。

動けないという太宰を俺は持ち上げてソファまで連れて行った。

中也

ボス。夜遅くに電話すいません

森さん

大丈夫。ところでどうしたのかな?

中也

太宰が陣痛起こして。

森さん

予定日はまだ2週間さきだよ?

中也

ええ。でももう10分間隔で。

森さん

わかった。車で来れるかい?

中也

はい。

森さん

じゃあ。できるだけ揺らさず早く来てね

中也

了解です。

中也

太宰。車乗るぞ。

太宰

無理。動けない。

中也

今は?

太宰

痛いよ!

中也

じゃあほら捕まれ。

中也は私をお姫様抱っこするつもりだ。ここまで隠した私が悪いのだけれどかなり気が引けるが、もう痛みで何がなんだかわからない。だから大人しく運ばれた。

はずだった。

太宰

中也っ…

中也

どうした?

太宰

破水…したかも。

中也

嘘だろ。いいから早くボスのところ行くぞ!

中也

お前と赤ん坊に何かあったらやべぇ。

太宰

うっ…

太宰

ちょと…吐きそう。

中也

えっ?ちょっ待てっ!

中也は駆け足で塵箱を取りに行き私の背中を擦った。

慌てたものの対処はしっかりしていてこんな時でも冷静。普段は私のほうが冷静ダケド。

中也

ボスに来てもらうしかねぇな。

太宰

大っ…丈夫少し…おっ落ち着いたから

太宰

森さんをわざわざ呼ぶことじゃないっよ。

中也

いやいや。

ぷぅぴす

思ったより長くなるので二部ほどに分けまーす

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