桃心情
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桃
紅く染まった空を見上げて俺は決心した
屋上のフェンスを乗り越え身を投げた
___その時
?
見知らぬ男の人に腕を掴まれた
涙目になりながら細い腕で必死に俺の事を助けようとしていた
桃
?
?
桃
名前も知らない君は俺のことを"大切な人"と言った
きっと、何もかもを失った俺が1番欲しかった言葉だろう
絶望の中に小さな希望が見えた気がして
俺は腕を握り返した
?
そして腕に力込めて何とか足を地面に付け、フェンスを乗り越えた
?
華奢な体で俺の体を引き上げるのがよほど大変だったのか
元から体力が無かったのか、 いずれにせよ彼は荒い息を繰り返していた
桃
その問いに答える前に彼は"良かった"と言った
桃
?
俺は言葉を失った
"全てを忘れてしまいたい"
ずっとそう思っていた
そんな考えを見透かされている気がして驚きを隠せず彼を見た
?
無言で彼を凝視してしまったため、彼は困ったように眉を下げた
桃
?
?
彼はマジックのように……いや、魔法のようにチョコクレープを取り出した
桃
?
動揺をひた隠しクレープを受け取った すると、彼は笑顔を見せた
?
桃
?
と、笑顔で続けた
桃
ニコッ
?
桃
彼は綺麗な青髪を揺らして消えていった
桃
そんな事を考えながらクレープ____一番好きなスイーツのクレープを見つめていた
でも____ッッ
やっぱり君と
重ねちゃうんだよな____
翌日の昼下がり
なんとなく、彼を探していた
しかし、名前も知らない相手をどう探していいか分からず、諦めかけてベンチに座った
それにしても彼は一体何者なんだろう?
今までの行動を思い返す
名前も知らない俺を助けて、"大切な人"と言って、クレープだけ渡して帰って行った
考えれば考えるほど謎だ
そんな俺の思考を遮るように明るい声がした
?
桃
?
やっぱり何を考えてるか分からない不思議な人だ
?
桃
?
信じられない、と言った表情でこちらを見てくる
桃
思わず顔を顰めた
?
?
いいこと思いついた、と言わんばかりの表情でこちらを見つめる
?
桃
訳が分からず聞き返す
?
彼は俺が1度も通ったことの無い狭い道を迷いなく進んでいく
桃
?
桃
?
?
桃
俺は言われるがまま目を瞑る
冷たい手で手首を捕まれ、そのまま前へ進んでいく
数分進んだところで立ち止まった
?
?
目を開くと
桃
思わず目を見開いた
そこには、見たことも無い大自然が拡がっていた
この街に、こんな場所があったなんて……
桃
?
?
桃
?
目を細めて、そう、零すように呟いた
"どうしてそんな顔を?" "どうしてそんなことを?"
そう聞きたかったけど、寂しげで、それでいて冷たい目をしている彼に聞くことは出来なかった
?
桃
彼を見つめていたことを誤魔化すように言った
彼は一瞬キョトンとしてから
明るく笑った
?
"葵"だよ
桃
葵
と、にんまりと笑った
桃
桃
葵
葵
桃
少し奥へ進むと机と椅子がある場所に来た
葵
桃
俺がそう答えるとふわりと笑って紅茶をいれてくれた
葵
桃
なんで葵はこんなに俺の好みのものをくれるのだろう
桃
桃
葵
桃
率直な疑問をぶつけた
俺と同じじゃないよな、と加えて
少し目を伏せてから悪戯っぽく笑った
葵
桃
葵
俺らは笑いながらこの雰囲気を楽しんだ
葵
桃
葵
桃
公園に着くと、葵は何故か俺の顔を見て笑った
桃
葵
桃
葵
葵
桃
葵
俺の声を遮るようにそういった
桃
葵は頬を緩め口角をあげた
葵
目を見開いた
葵は教えていない俺の名前を呼んだ
桃
__なんで俺の名前を?
そう言おうとしたが強い風が吹き、収まった頃には
彼は消えていた
それから2週間
葵は1度も姿を見せなかった
それどころか、翌日に葵と行った大自然のカフェなどがあるあの場所に行こうとしたが、
どこにも見当たらなかった
どくん、と心臓が嫌なはね方をする
彼のいた証拠が全て消えているのだ
桃
……あれ?
桃
後ろ姿しか見えなかったがあれは間違いなく、葵だ
葵は気づくことなく、立ち去ろうとしてしまう
桃
グイッッ
咄嗟に腕を掴んで引っ張った
葵
葵は困ったように瞳を揺らしていた
桃
焦って腕を掴んだが、何を話せばいいか分からず押し黙る
葵
桃
良い話ではない事は分かったが、断るという選択肢など俺にはなかった
2週間前に来たこのカフェスペースに来た
___俺一人では来ることのできなかったこの場所に
葵
彼はキッパリとそういった
桃
葵
葵
葵
葵
ニコッ
彼は悲しそうに笑った
違う
俺が見たいのはそんな顔じゃない
作り笑顔なんて見たくない
自分勝手なのは分かってるけど
でも
でも!
葵の心からの笑顔が見たいんだ
葵
その言葉だけで十分だった
言いたいことを理解してしまった
桃
なんでもう会えないなんて言うの?
本当はそう言いたかったけど、今の俺にはこれが精一杯だった
葵
もう会えない……会っちゃ行けないの……ッ"ッ"
桃
葵
ごめんね、桃くん____
桃
気づいたら君の名前が口からこぼれ落ちていた
葵
葵の声が震えた
呆然とした様子で俺を見つめる
葵
彼は取り繕うように明るく言った
やっぱり"君"は嘘が下手だ
桃
葵
葵
桃
言いたいことはあるはずなのに肝心の言葉が出てこない
バタッッ
桃
葵の……青の唇がゆっくり動いた
"僕も好き____"
彼は目を閉じた
桃
この時も
"魔法"と言った事も
この笑顔も
これも
"あの時"言ったこの言葉も
これも
これも
これも
これも
全部
桃
今もどこかで人が○んで
空は、世界は紅く染まっている
気付いたら俺の頬も涙が濡らしていた
2度も、俺の前から
青は居なくなったんだ
思い出の写真と、独りになった俺と、戦争で荒れ果てた世界を残して____
❦ℯꫛᎴ❧
コメント
5件
やっぱり原稿読んでから見ると良いな✨
過去一長いお話が出来ましたね、はい( ˙-˙ )そして謎作ですね( ˙-˙ )( ˙-˙ ) 午後からアニメイトに行ってくるのだぁぁぁぁ!((テンションどした? もしかしたら買ったもの紹介するかもなのだぁぁぁぁ!(´。✪ω✪。 ` )