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桃心情

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……

紅く染まった空を見上げて俺は決心した

屋上のフェンスを乗り越え身を投げた

___その時

ダメッッ!!

見知らぬ男の人に腕を掴まれた

涙目になりながら細い腕で必死に俺の事を助けようとしていた

なん……で……?

もう、2度とッッ!

大切な人を失いたくないの……ッ"ッ"

大切な…人……

名前も知らない君は俺のことを"大切な人"と言った

きっと、何もかもを失った俺が1番欲しかった言葉だろう

絶望の中に小さな希望が見えた気がして

俺は腕を握り返した

ッッ!

そして腕に力込めて何とか足を地面に付け、フェンスを乗り越えた

はぁ、はぁ……

華奢な体で俺の体を引き上げるのがよほど大変だったのか

元から体力が無かったのか、 いずれにせよ彼は荒い息を繰り返していた

えっと……大丈夫……?

その問いに答える前に彼は"良かった"と言った

……

今は現実も、嫌なことも、一旦忘れよ……?

俺は言葉を失った

"全てを忘れてしまいたい"

ずっとそう思っていた

そんな考えを見透かされている気がして驚きを隠せず彼を見た

……あ、えっと……?

無言で彼を凝視してしまったため、彼は困ったように眉を下げた

あ……ごめん

ふふっ 大丈夫だよ

……そうだっ!

彼はマジックのように……いや、魔法のようにチョコクレープを取り出した

え……?

どうぞっ!

動揺をひた隠しクレープを受け取った すると、彼は笑顔を見せた

甘いものでも食べて、元気出しな?

あ……ありがとう

いーの!それに君、クレープ好きでしょ?

と、笑顔で続けた

え……?なんで知って……?

ニコッ

じゃあね

まッッ……

彼は綺麗な青髪を揺らして消えていった

あ、名前聞いておけばよかったかな……

そんな事を考えながらクレープ____一番好きなスイーツのクレープを見つめていた

でも____ッッ

やっぱり君と

重ねちゃうんだよな____

翌日の昼下がり

なんとなく、彼を探していた

しかし、名前も知らない相手をどう探していいか分からず、諦めかけてベンチに座った

それにしても彼は一体何者なんだろう?

今までの行動を思い返す

名前も知らない俺を助けて、"大切な人"と言って、クレープだけ渡して帰って行った

考えれば考えるほど謎だ

そんな俺の思考を遮るように明るい声がした

ふふw君は憂鬱そうな顔だねw

……貶してる?

さーねw

やっぱり何を考えてるか分からない不思議な人だ

何悩んでんの〜?

え?別に何も……

嘘〜?めっちゃ怖い顔してたのに?

信じられない、と言った表情でこちらを見てくる

……そんなに?

思わず顔を顰めた

うんww

あ!そうだ!

いいこと思いついた、と言わんばかりの表情でこちらを見つめる

気分転換しよ?

気分転換?

訳が分からず聞き返す

うんっ!じゃあ行こっか!

彼は俺が1度も通ったことの無い狭い道を迷いなく進んでいく

え……どこ行くの?

行ってからのお楽しみっ!

なんだそれ

ふふっいいでしょ〜

あ、目瞑ってくれる?

……?

俺は言われるがまま目を瞑る

冷たい手で手首を捕まれ、そのまま前へ進んでいく

数分進んだところで立ち止まった

着いたっ!

目、開けていいよ

目を開くと

…え……?

思わず目を見開いた

そこには、見たことも無い大自然が拡がっていた

この街に、こんな場所があったなんて……

……綺麗

でしょ〜?

……こういう場所って落ち着くよね〜

な、落ち着く

全部……嫌なことも全部忘れられる

目を細めて、そう、零すように呟いた

"どうしてそんな顔を?" "どうしてそんなことを?"

そう聞きたかったけど、寂しげで、それでいて冷たい目をしている彼に聞くことは出来なかった

……どうしたの?ニコッ

あ……名前聞いてないなって思って

彼を見つめていたことを誤魔化すように言った

彼は一瞬キョトンとしてから

明るく笑った

名前?僕の名前はね〜

"葵"だよ

あおい……

ねっ!この前のクレープ美味しかったでしょ?

と、にんまりと笑った

あれめっちゃ美味かった!

ありがと!

ふふ(​ *´꒳`*​)良かった〜

ねぇねぇ!こっち行こ!

わかった!

少し奥へ進むと机と椅子がある場所に来た

ね、紅茶好き?

あ、めっちゃ好き!

俺がそう答えるとふわりと笑って紅茶をいれてくれた

どうぞ〜!

ありがとう

なんで葵はこんなに俺の好みのものをくれるのだろう

ゴクゴクッッ

うまっ!

ほんと?嬉し〜!

なぁ、葵ってどこの学校行ってた?

率直な疑問をぶつけた

俺と同じじゃないよな、と加えて

少し目を伏せてから悪戯っぽく笑った

内緒っ!

なんだよw

個人情報なんでw

俺らは笑いながらこの雰囲気を楽しんだ

あ、そろそろ暗くなってきたし、帰る?

そうだな

取り敢えず公園まで行こっか

おう

公園に着くと、葵は何故か俺の顔を見て笑った

俺の顔になんか付いてる?

いや、なんでも?

じゃあなんで笑ったの?w

だって、僕には名前聞いたのに

君は名前教えてくれないんだな〜ってw

あ……ごめん、俺は…

いーよ!別に ニコッ

俺の声を遮るようにそういった

へ……?

葵は頬を緩め口角をあげた

またね、桃くん

目を見開いた

葵は教えていない俺の名前を呼んだ

え……なんで

__なんで俺の名前を?

そう言おうとしたが強い風が吹き、収まった頃には

彼は消えていた

それから2週間

葵は1度も姿を見せなかった

それどころか、翌日に葵と行った大自然のカフェなどがあるあの場所に行こうとしたが、

どこにも見当たらなかった

どくん、と心臓が嫌なはね方をする

彼のいた証拠が全て消えているのだ

なんで……

……あれ?

あ、おい……

後ろ姿しか見えなかったがあれは間違いなく、葵だ

葵は気づくことなく、立ち去ろうとしてしまう

ッッ!待ってッ"ッ"!

グイッッ

咄嗟に腕を掴んで引っ張った

え……

葵は困ったように瞳を揺らしていた

あ……えっと……

焦って腕を掴んだが、何を話せばいいか分からず押し黙る

……話が、あるの。こっち来て?

分かった

良い話ではない事は分かったが、断るという選択肢など俺にはなかった

2週間前に来たこのカフェスペースに来た

___俺一人では来ることのできなかったこの場所に

僕ね……魔法が使えるの

彼はキッパリとそういった

は……?

だからね、この前あげたクレープも

この前の紅茶も

今見てる景色も

全部"偽物"なんだ

ニコッ

彼は悲しそうに笑った

違う

俺が見たいのはそんな顔じゃない

作り笑顔なんて見たくない

自分勝手なのは分かってるけど

でも

でも!

葵の心からの笑顔が見たいんだ

それで、ね…もういろんな物を見せてあげることは出来ないんだ……ッッ

その言葉だけで十分だった

言いたいことを理解してしまった

なん……で…ッッ""

なんでもう会えないなんて言うの?

本当はそう言いたかったけど、今の俺にはこれが精一杯だった

もう……生きていられないの……

もう会えない……会っちゃ行けないの……ッ"ッ"

俺……葵まで失うなんて無理だよ……

……ごめんね

ごめんね、桃くん____

青……ッッ

気づいたら君の名前が口からこぼれ落ちていた

…え……?

葵の声が震えた

呆然とした様子で俺を見つめる

だ、誰のこと〜?

彼は取り繕うように明るく言った

やっぱり"君"は嘘が下手だ

……俺の好きな人……かな ニコッ

そう、なんだ〜

……ごめん、もう、だめ……みたいポロッ

まッッ……ッッ""

言いたいことはあるはずなのに肝心の言葉が出てこない

バタッッ

ッッ!?おいッッ!

葵の……青の唇がゆっくり動いた

"僕も好き____"

彼は目を閉じた

……嘘つかせてごめんな

この時も

"魔法"と言った事も

この笑顔も

これも

"あの時"言ったこの言葉も

これも

これも

これも

これも

全部

強がりだったんだろ?

今もどこかで人が○んで

空は、世界は紅く染まっている

気付いたら俺の頬も涙が濡らしていた

2度も、俺の前から

青は居なくなったんだ

思い出の写真と、独りになった俺と、戦争で荒れ果てた世界を残して____

❦ℯꫛᎴ❧

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100

コメント

5

ユーザー

やっぱり原稿読んでから見ると良いな✨

ユーザー

過去一長いお話が出来ましたね、はい( ˙-˙ )そして謎作ですね( ˙-˙ )( ˙-˙ ) 午後からアニメイトに行ってくるのだぁぁぁぁ!((テンションどした? もしかしたら買ったもの紹介するかもなのだぁぁぁぁ!(´。✪ω✪。 ` )

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