海斗
窓
辺に立って,眼下に広がる緑の山々を見下ろしながら,私は,今日もまた この村に来たことを後悔し始めていた。
「ほら! あそこに見えるのがうちの畑だよ!」
私の隣に立つ女性が指差しながら言う。その声は興奮気味だ。
彼女の示す先に目をやると,なるほど確かに一面に緑が広がっているのが見える。
しかし……だからどうしたというのだ?
「あの奥に見えるのが私の家よ。それからね――」
彼女はなおも言葉を続ける。
いい加減うんざりしてきた。
「ねぇ君,さっきから何を言っているんだ?」
私がそう尋ねると,女性はキョトンとした顔になった。そして不思議そうな表情を浮かべたまま言った。
「え? 何って言われても……自分の住んでいる場所の説明をしているんだけど」
当たり前のことを聞くんじゃないとでも言いたいのか,少しだけ不機嫌になる女性。
「それは分かるけどさぁ。君はどこに住んでいるんだい?」
すると,今度は彼女が呆れたような顔をした。
「何よりもまず,善悪を見分ける力があるようにせよ」(プラフムタート)との父の教 えを受けたデーヴァハヌディードラ王は,3 人の息子たちを教育するよう命じられ, 3 人の息子たちはそれぞれ,ビーマ,チャンドラプトゥラ,カーリダーサとなる。ビーマは クリシュナ(クリシュナーガ),チャンドラプトゥラはアーディジャバナーラ,カーリダーサ はナラシンハとなり,各々国を統治した。
一方,母サティヤワティによって,パーンドゥはサンヒターとして教育を受け, 後にヴィヤーサと呼ばれ,パーンドゥの息子ダルマはヴィデーニヤ,シッタータはスッタラーナ, そしてヴィカルパはビーマの父である。
ある日,ダルマはパーンドゥに,自分は実はヴィヤーサの子であると告げる。パーン ドゥはダルマが自分を殺しに来るに違いないと考え,彼の前では食事をせず,水浴びもしな かった。しかし,パーンドゥはその晩,寝ているところを何者かに襲われて殺される。
この事件を知った人々は,パーンドゥを殺した者は誰かと互いに疑いあい,その結果, パーンドゥの子たちは,それぞれ自分の父の殺害者を父として憎むことになる7)。