あの大きな機械に気を取られて気づかなかったが、すみのほうに今まで無かった引き戸が取り付けられている
玲奈
こんなの意味が分からない……
男は俺たちの言葉を無視してさらにルールの説明を始めた
謎の男
ゲームがスタートするとまず、この機械がランダムに三人を選択します
謎の男
【A】【B】【センタク者】にそれぞれ割り振ります
謎の男
【A】の人はAと書かれたイスに、
謎の男
【B】の人はBと書かれたイスに座り、
謎の男
【センタク者】は手前の台にあるイスに座ってもらいます
謎の男
そうして……
謎の男
【センタク者】に選ばれた人は、【A】か【B】の人、どちらかを選んで1時間以内に殺してください
郁人
(殺す……?)
郁人
(とても政府関係者が口にするような言葉では無いよな……)
郁人
(いったいこの男は何者なんだ?)
謎の男
殺す方法は、台についている【A】【B】のボタンから殺したい方を選択して押すだけです
謎の男
そして【A】【B】の他に【全壊】と言うボタンがついていますが、
謎の男
これは皆殺しボタンです
謎の男
自分を含め、三人全員が死ぬことになります
玲奈
そんな訳の分からないゲーム、まかりとおる訳ないでしょ!
謎の男
なお、【センタク者】に選ばれた人は必ず1時間以内にボタンを押してください
謎の男
ボタンを押さなかった場合、自分が殺されることになります
郁人
(こんなのヤバすぎるだろ……)
郁人
(もし言ってることが本当なら、俺たちのクラスは今から殺し合いをするってことになるよな?)
玲奈
いい加減にして!
玲奈
私達は他の中学生と違って忙しいのよ!
海
俺のお父さんが黙ってる訳ないだろ
愛実
そうよ!
愛実
だいたい殺すってなに?
海
ありえないだろ
講義の声が大きくなっていった時、四宮君がパンパンっと手を叩いた
蒼斗
下民はともかく、マスター4まで命をかけさせるなんてどうかしてる
蒼斗
僕のお父さんに頼めばお前の首なんか簡単に飛ぶんだ
蒼斗
発言には気をつけるんだな
当然権力も強く、四宮君のお父さんに動かせないものはないだろう
謎の男
これは政府の執行です
謎の男
どんな人が出てこようと、くつがえすことはできません
郁人
(政府が決めたことには誰も逆らえないのか?)
海
そもそも、なんの為にこのゲームをするんですか?
諸星君はマスター4に居ながらあまり権力には興味がないようでつかみどころのないタイプだ
謎の男
このゲームの目的はキミたちに死に対する恐怖心を与えることだ
郁人
(死に対する恐怖心?)
謎の男
キミたちの年代は、死に対する理解や共感性がいちじるしく低い
謎の男
日々テレビでやっている殺人事件や悲惨な事故のニュースを見て何を感じる?
謎の男
きっと何も感じるのとなく、日常を過ごしているだろう
謎の男
だからこそ、虐めによる自殺だったり、SNSを面白半分で炎上させ、
謎の男
他人を追い詰めるようなことが増えている
謎の男
キミたちも……心当たりがあるんじゃないのか?
蒼斗
弱い奴がしいたげられるなんて当然のことだ
蒼斗
権力や地位の高い人間が上に立つ、そして命令をする
蒼斗
そんなのは社会の原理だ
謎の男
それは間違ってはいない
謎の男
しかし、命の重さを知らない今の子供達が大人になった時、
謎の男
国は地獄を見ることになるだろう
謎の男
だから我々は命をかろんじる人間を一掃することにした