寧々
─♪〜〜♬︎....
ワンダーステージ前の木々の中にわたしの声がすぅ、と溶けていく。
それがなんだか心地よくて、ほうと息を吐いた。
寧々
ん....結構いい感じかも。
類
随分と気持ちよさそうに歌っているね?寧々。
寧々
っ!?
寧々
びっ、くり、した....もう、類!
類
フフ、すまないね。歌姫の歌を僕が止める訳にはいかないだろう?
寧々
...別にいいのに。
類
さて、先程の寧々の歌は今日のショーの発声練習かな。
寧々
うん、そう。
寧々
お客さんには完成した歌、聴いてもらいたいし。
類
...やっぱり寧々は努力家だね。
寧々
それは類も一緒。
寧々
ほら、類は機材の確認したくてはやく来たんでしょ。早く始めた方がいいんじゃない?30分もしたら2人も来ると思うし。
類
フフ、寧々にはお見通しだね。僕も確認作業に入るとしようかな。
寧々
ん。わたしここで歌ってるから、BGMにでもすれば?
ステージの真ん中を陣取って、少しにんまり笑ってみせると類は目尻を下げて優しく微笑んだ。
類
それはそれは。随分と贅沢なBGMだね。
有難く聴かせてもらうよ。
有難く聴かせてもらうよ。
寧々
ふふ、任せて。昨日ちょっときになったところ、完璧にしてきたから。
ふぅ、と一息ついて、息を吸い込む。
ほろほろと空気に溶けやすいように。 でも決して脆くはならないように歌声を響かせた。
えむ
寧々ちゃ〜ん!類く〜ん!!
少し遠くから聞こえてくる、天真爛漫が似合いすぎるえむの声ではっと歌い出してからどれほど時間が経っていたかを実感する。
寧々
おはよ、えむ。
えむ
うん!おはよう!
えむと距離が縮まったと思ったら、ぽすりと小さな衝撃。
寧々
わたしに頬を擦り寄せて来るのが可愛くて、つい桃色ののまぁるい頭を撫でた。
えむ
えへへ...今日もがんばろーね!寧々ちゃん!
寧々
うん。お客さん、いっぱい笑顔にしよう。
司
おーい!寧々ー!えむー!リハーサルを始めるぞー!!!
寧々
うるっさ....
寧々
わかったから!そんな大声出さないでよね!そんなに大声じゃなくても聞こえるから!
寧々
もう...えむ、行こ。
えむ
うん!司くんに向かって〜...しゅぱーつ!!
ぐわぁぁ!という断末魔を横目に歩こうとすると、木々の間に何かがきらりと光った...気がした。







