高校一年生、初めての夏。
暑い夏と共に鳴く蝉と休み時間に騒ぐクラスメートの声が五月蝿い。
僕は気にしながらも一人ぽつんと 本を読む。
ふと気づくと、僕が聞こえるのは本の文章を読む口だけだ。
同時に窓から囁くように吹いている。 前にある扇風機とマッチしてとても 涼しい。
そんなことを思っていると、横から 一人の女子が声をかけてきた。
女子
何を読んでるの?
僕は本から目を逸さないように、 ゆっくりと口を動かした。
僕
夏が好きな青年が夏休みに色々な思い出を日記に書き記していく物語を読んでるよ
女子
成る程ね。
その本はもう読み終わったの?
その本はもう読み終わったの?
僕
えと...
まだ読み始めたばかりで...
まだ読み始めたばかりで...
女子
あっ!それはごめん!
いつも同じブックカバーだから繰り返し読んでのかなって思ってた。
いつも同じブックカバーだから繰り返し読んでのかなって思ってた。
僕
あぁ、そういうことか
女子
えっと...もし読み終わったら貸してくれないかな?
それを聞いた僕は何を言い返そうか 困っていた。
僕の反応に戸惑っていた女子は、 慌てて僕にこう呟いた。
女子
いきなり初対面で貸してって
言ったら困るよね!無理して貸そうとしないでくれていいから!
言ったら困るよね!無理して貸そうとしないでくれていいから!
女子
その...
君の本に興味が湧いただけだから...
君の本に興味が湧いただけだから...
話を聞いた僕はほっとした。 初めて女子と喋ったので戸惑って しまった。
たしかにこの本は読めば読むほど物語に引っ張られる。
この本に興味を持つことは、本を読むのが好きな人だろうか。そう思った。
僕
読み終わったら渡すよ
女子
いいの?
ありがとう!
ありがとう!
女子は僕に嬉しそうな顔を見せ、一番前の真ん中の席に座った。
多分あの女子の席だろう。
そういえばまだ名前を聞いていない。
わざわざ席まで行って声をかけると また困るので、本を読み終わって 渡すときに名前を聞くことにしよう。
僕は次の授業の支度をしようと本を 閉じた。






