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霧が、やさしく町を包んでいた。 山に囲まれた小さな町ーー白露町。

朝の空気はひんやりとして、 川のせせらぎと下駄の音が混ざり合う。

白銀ひかり

おはようございますー!

白い髪を朝霧に揺らしながら、 ひかりは薬草の包みを抱えて歩く。

声をかければ、返ってくるのは 決まって同じ反応だった。

町の人

今日も元気だねぇ、ひかりちゃん

町の人

また働きすぎじゃないの?

白銀ひかり

だ、大丈夫ですよー

笑われて、からかわれて、 それでも足は止まらない。

ひかりの周りには、 自然と人が集まっていた。

路地の角で、 転んだばかりの子供が 膝を押さえている。

子供

いたい……

ひかりはしゃがみこみ、 そっと手を伸ばした。

白銀ひかり

ちょっとだけ、触るね

白い指が膝に触れた瞬間、 熱がすっと引いていく。

赤みが消え、子供はきょとんと 目を輝かせた。

子供

あれ……いたくない!

白銀ひかり

よかった

それを見て、周囲の大人たちは誰も驚かない。 ただ、いつもの光景として笑っている。

ーーそれが、この町の日常だった。

甘味処の前。 暖簾を整えていた女性が、 ひかりに気づいて手を振る。

朝霧ほのか

ひかり、おはよう

白銀ひかり

ほのかさん!おはようございます

ほのかはひかりを見下ろし、 ふっと息をついた。

朝霧ほのか

ほんと……優しすぎるんだから

その声は冗談めいていたけれど、 一瞬だけ、視線が伏せられる。

朝霧ほのか

……ほどほどにしなさいよ?

白銀ひかり

答える前に、 ほのかはもう笑顔に戻っていた。

町外れの小さな神社。 掃き清められた境内で、 一人の老人が立っている。

柴宮玄蔵

………

白銀ひよりが町へ戻っていく背中を、 じっと見つめる。

柴宮玄蔵

……最近、夜が長い

低く落とされた呟きは、 朝霧に溶けて消えた。

家へ帰ると、夕餉の準備の匂いが 鼻をくすぐる。

包丁の音、笑い声、火のはぜる音。

白銀ひかり

ただいま

変わらない日常。 変わらない温度。

それがどれほど大切なものかをーー この朝の彼女は、まだ知らない。

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