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これは、友人の玲翔の体験談だ
玲翔の自宅の郵便受けに、毎月25日になると奇妙な手紙が投函(とうかん)
されるという
切手の貼られていない白い封筒の中に
赤色の折り紙が小さく畳まれて入っている
開くとそこには子どものような崩れた字で
私に会いに来て
とだけ書かれているというのだ
玲翔のマンションはオートロックだが
集合ポストで郵便受けは1階にあり、外部の人間も立ち入ることは可能だ。
玲翔
久しぶりに飲みに誘われた居酒屋で玲翔はその手紙を見せてきた
気味が悪いが、実害がない現状で
警察に届けても対応は望めないだろうと彼は言う
マンションの管理会社には
玲翔
通話
00:41
電話で話していた事〜
玲翔
と電話し、巡回を強化すると言われたそうだが
管理人も通いで常駐している訳ではなく
そちらもアテにはならないとため息をついた。
玲翔
玲翔
冗談めかした口調も、どこか空元気に聞こえる
惣太
惣太
普通の便せんではなく、「折り紙」を選んでいることが
差出人の正体のヒントなんじゃないかと俺は振ってみた
だが玲翔は、頭を掻くばかりだった。
惣太
惣太
惣太
玲翔
そう言って玲翔は、半ば困ったように
半ば自身の女性遍歴を誇るように笑った
その月の25日の夜、玲翔から電話がかかってきた
玲翔
通話
02:06
電話で話していた事〜
俺が
惣太
惣太
と言ったのを真に受けた玲翔は
有休をとって日付が変わる直前からずっとエントランスで
集合ポストを見張っていたという
玲翔
玲翔
玲翔の声は震えていた
今度は部屋の玄関の隙間に先回りするように
例の手紙が刺さっていたという
玲翔
惣太
玲翔がことのほか怯えているので俺は明るく言ってみせる
惣太
惣太
玲翔
玲翔
惣太
惣太
惣太
惣太
惣太
惣太
玲翔
話しているうちに落ち着いてきたらしい
来月も様子を見て
手口がエスカレートするようならまた警察に行った方が良い
と俺が言って
通話は終わった
その翌月の25日のことだ
仕事が遅くなった玲翔は、家路を急いでいた
玲翔の自宅マンションは大通りから一本入ったところにあるのだが
その、マンションのすぐ前の路地に
黒いワンボックスカーが道を塞ぐように停まっていた
玲翔は舌打ちして
体を斜めにして車の脇をすり抜けようとする
その瞬間
車のスライドドアが開いて
玲翔の体は中に引きずり込まれた
ドアが閉められ、玲翔の背後で声がした
あの子に会いに行こうね
それきり玲翔は失踪した
両親が上京してきて尋ね人のビラを配ったり
友人知人に話を聞きに回っていたようだが
彼が見つかったという話は聞こえてこない
これで玲翔の話は終わりだ
尻切れトンボだが、現実なんてこんなものだ
モカ
モカ
モカ
モカ
モカ
解説
なぜ「惣太」は、「玲翔」から聞けるはずのない
玲翔の失踪時の状況を詳細に語ることができるのでしょうか?
簡単な話で、「惣太」が玲翔を拉致した側の人間だからです。
不気味な手紙にも「惣太」は関わっているのでしょう
「惣太」自身が言っているように手紙とその周辺には
「玲翔」へのヒントらしきものがいくつも仕込まれていたようです
25日という日付、赤い折り紙
そして「別れた彼女じゃないの?」
「死んだ人に恨まれる覚えでもあるの?」という質問
それらから導かれるべき誰かのことを
玲翔はとうとう思い出せなかった
そのことが「惣太」たちに
玲翔を無理やりにでも
「あの子」の元に連れていくことを決意させたのでしょう
モカ
モカ
モカ
モカ
モカ