一覧ページ

LINE1190

第1話 - あ

2023年09月28日

#スカッと

タナカトシキ

マリ

シュン君、わたし来週からバリ島に行ってくるわね。

マリ

友達のマキをつれて、バリ島にある父のコテージに遊びに行くの。

マリ

いいよね？

シュン

それはかまわないけど。

シュン

お金は大丈夫なの？

シュン

少し出そうか。

マリ

別に平気よ！父が旅費を出してくれたから！

シュン

え。そうなの。

マリ

だって父は会社社長よ？

マリ

旅費くらい俺が出すよって、ポンとお金を払ってくれたの♪

シュン

そっか。

マリ

シュンは起業した時の借金が残ってて、給料も安いんでしょ？

シュン

ああ、まあそうだけど…。

マリ

だから無理しなくていいよ。

マリ

マンションもウチの父が所有している物件だから、家賃も格安だしね。

シュン

それは感謝しているよ。

シュン

しかし、旅行に行く頻度が多くないか？

シュン

今年に入ってから、もう4回目だよ。

マリ

だって、せっかくコロ助が落ち着いて、旅行に行きやすくなったんだよ。

マリ

なのにシュンは仕事にばかり夢中で、どこにも連れて行ってくれないじゃない。

マリ

まあ、お金がないせいもあるんだろうけどさ！

シュン

それは悪いと思ってるよ。

シュン

ただ、去年結婚したばかりなのに一緒に過ごす時間が少ないから

シュン

すこし寂しいと思っただけだよ。

マリ

なーんだ、それなら素直にそう言ってくれれば良いのに。

シュン

そうだね。

マリ

それなら年末にハワイに行こうよ。

シュン

え、年末？そんな高い時期に？

マリ

お金なら父が出してくれるわよ。

シュン

いや、それはちょっとね。

シュン

結婚してまでも親にお金を出してもらうのはどうかと思うよ。

シュン

ましてや遊ぶための金だろう？

マリ

なによ、不満なの？

シュン

いや、そういうわけではないけど。

マリ

だったらそんな言いかたしないでよ。

マリ

文句があるなら父より稼いできてww

マリ

出来ないでしょうけどね！

シュン

なんだよ、その言いかた。

マリ

ゴメンゴメンw言いすぎちゃったね。

マリ

シュンにはもっと頑張ってほしいんだもん。

マリ

せっかくお友達のジン君と立ち上げた小さな会社だもん。

マリ

つぶれないように必死で会社を支えてるのは、分かってるよw

シュン

なんかコケにされてる気分だけど。

シュン

年末のハワイ旅行は自費で行けるようにがんばるよ。

シュン

ジンも、年末はゆっくり休もうって言ってくれてるしね。

マリ

そう、楽しみにしているわ。

マリ

あと、バリ島旅行は1週間の予定だから。

マリ

行く時、空港まで送っていってね。

シュン

え？何曜日？

マリ

月曜日の朝4時出発よ。

マリ

その時間なら空港に行って、そのまま会社に向かえば間に合うでしょ？

シュン

俺はアッシーかw

シュン

朝早いな…。

マリ

まあ、そういうことだから。

マリ

お仕事、ひきつづき頑張ってね。

シュン

分かったよ…。

～2週間後～

マリ

ただいまー、シュン。

マリ

今、空港についたところよ。

マリ

まだ仕事中かしら？

シュン

おかえり、マリ。

シュン

いま仕事が終わったところだよ。

シュン

バリ島から帰ってきたんだね。

マリ

そうなの。疲れた～。

マリ

すごく楽しかったよ。お土産があるから楽しみにしててね。

シュン

そうか。

マリ

ところで、これから空港で夕飯を食べるから、

マリ

その間に、車で迎えに来てくれない？

シュン

え、今から？

シュン

リムジンバスで帰ってこればいいじゃん。

シュン

ウチの最寄り駅まで来るバスがあるよね？

マリ

そうだけどさ、荷物が重いんだもの。

マリ

色々買い物もしたから。

シュン

また、たくさん買っちゃったのか。

シュン

それもお父さんのお小遣い？

マリ

違うわよ、クレカだってば。

マリ

独身の頃に作ったカードなの。

シュン

それも引き落としはお父さんの口座だろう。

シュン

いい加減、親をアテにするのは欲しいんだけど。

シュン

もう独身じゃないんだから。

マリ

なによ、自分の親に甘えてなにが悪いのよ！

シュン

ごめん、それはこの際どうでもいいや。

マリ

え？自分からお金の話を振っといて、いったい何なの？

シュン

実は、マリがバリ島に行ってる間に、君のお友達から電話がかかってきたんだよ。

マリ

友達が家に電話してきたの？

シュン

そう。マリのスマホがつながらないみたいだから、家の電話にくれたんだ。

マリ

誰から？

シュン

マキさんだよ。

マリ

は？

シュン

だから、今回一緒に旅行に行ってるはずのマキさんから、電話があったんだよ！

マリ

な、なんで…。

シュン

こっちが聞きたいよ。

シュン

なんで一緒にバリ島に行ってるはずのマキさんから電話があるんだ？

シュン

マキさん自身は、ひまつぶしに電話をしてくれただけみたいだけど、

シュン

マリとバリ島に行くなんて話は、まったく聞いてなかったって言ってたよ。

マリ

あ、あのね。

マリ

家に電話をくれたのは、高校時代の友達のマキだと思う。

マリ

私が今回一緒に旅行に行ったのは、短大時代の友達のマキだから！

シュン

そんなに同じ名前の友達が何人もいたっけ？

シュン

電話をくれたマキさんも、何のことか分からなくてビックリしてたけどな。

シュン

だって、今年5月の連休に行ったグァムも、マキさんと行ったんだよな？

マリ

そ、そうだっけ？

シュン

今年5月のコトをもう忘れてるのか？たしかにマキさんと行ったはずだぞ。

シュン

そんなに何回も同じ友達と旅行に行けるのかな、と不思議に思っていたけど、

シュン

本当は全然違う人間と旅行してたんじゃないのか？

マリ

違うわよ！友達と行ったのよ。

マリ

ウソなんてついてないわ。

シュン

そうか。それなら信じるよ。

シュン

会社から直接、車で空港に向かうから、お迎えは1時間後くらいになる。

シュン

空港についたら電話するから。

マリ

わ、分かったわ、よろしくね。

～1か月後～

マリ

シュン、わたし妊娠したわ。

マリ

今、8週目だって。出産予定は春になるわ。

シュン

妊娠か。最近2か月以上はご無沙汰だったけど…。

シュン

本当に妊娠したの？

マリ

そうよ。喜んでくれないの？

マリ

最近、ちょっと冷たくない？

マリ

私がバリから帰って来てからずっとよそよそしいよね。

シュン

ちょっと忙しかったからね。

シュン

それに調べなきゃいけないことも色々あったし。

マリ

調べなきゃいけないこと？

マリ

それって仕事が忙しかったから？

シュン

仕事が忙しいせいもあったけど、他にも理由はある。

シュン

マリ、君には男がいるだろう。

マリ

え？

シュン

何度も旅行にいったり、友達との話が食い違っていたり。

シュン

俺の留守中に人を家に上げた形跡があるから、おかしいと思ってたんだ。

マリ

なに、私を疑っているの？

シュン

疑うどころか、真っ黒だよ。

シュン

実は、マンションの防犯カメラを、管理会社に見せてもらったんだ。

シュン

そうしたら、男と一緒に帰宅している君の姿が映っていたよ！

マリ

へ？

マリ

そんなバカな…。

シュン

俺も信じたくなかったよ。

シュン

でも確かに君が、知らない男と腕を組んでマンションに入っていったんだ！

シュン

正直に認めろよ。浮気してるんだろう？

シュン

他にも色々調べてるんだぞ。

シュン

浮気相手の名前は、ケンゾー。職業ホスト。24歳。

シュン

相手の勤務先も分かっているぞ。

マリ

やだ怖い、そこまで調べ上げてるなんて！

マリ

あなた、異常だわ。ストーカーみたい。

シュン

異常なのは君だろ。

シュン

俺の目を盗んで浮気相手と海外旅行に何度も出かけて！

シュン

人が必死に働いている間に浮気とか、あり得ないんだよ！

マリ

ちょ、ちょっと待ってよww

マリ

彼とはタダの遊びよ？

マリ

ちょっと息抜きしてただけで、そんなに怒らなくても。

シュン

息抜き？はあ？

シュン

そんな生易しいことじゃないぞ。君は俺を裏切ったんだ！

マリ

そんなに怒らないで。

マリ

まさか私と離婚するなんて言わないよね？

マリ

だって私と別れたら、今みたいな良い暮らしは出来ないよ？

マリ

住んでいるマンションは父のモノだから、当然シュンが出て行く事になるし。

マリ

父からの生活費の援助も受けられなくなるんだよ？

シュン

あいにく、君のお父さんからの援助は、全部マリが使い果たしただろう？

シュン

マンションに住ませてもらったことは感謝してるよ。

シュン

でも、家賃はきちんと君のお父さんに払っていたし、

シュン

生活費に関しては、俺は一円も使っていないから、痛くもかゆくもないね。

マリ

そんな見栄張っちゃってw

マリ

私と別れたら後悔するわよ？

シュン

いいや、後悔しないね。

シュン

だって俺、来月から社長になるから。

マリ

え？どういうこと？

マリ

社長はお友達のジン君のほうでしょ？あなたは、ただの社員だって言ってたよね。

シュン

ああ、そのことだけど。

シュン

会社の収益が上がって来て、経営も軌道に乗って来たから

シュン

会社を二手に分けて、グループ会社化しようってことになったんだ。

シュン

ジンが新会社を設立して、俺が今の会社の社長になるってわけ。

シュン

今の会社も、商品の特許が取れたおかげで年商が10億を超えたんだ。

マリ

ウソ。冗談でしょ！

シュン

本当の事だよ。俺はその、年商10億の会社の社長になるってわけ。

シュン

もちろん、君のお父さんの援助なんて一切受けていないよ？

マリ

それを早く言ってよ！

マリ

なんで私には黙っていたの？私はあなたの妻なのに…。

シュン

出会った頃の君になら、話していたかもしれない。

シュン

でも今の君は、俺の事を格下扱いして、

シュン

仕事にも関心を持ってくれていないようだったから。

シュン

会社の事を話しても無意味だと思ったんだよ。

マリ

そんなコトは無いわよ…。

シュン

とにかく、君は何度も俺を裏切った。

シュン

これから仕事ももっと忙しくなりそうだし、君とはもう離婚する。

マリ

そんな！お腹の子はどうするの。

シュン

それもおそらく、浮気相手の子だろう？

シュン

考えてみれば、もう2か月以上もしてないんだぞ。

シュン

なのに妊娠8週目って、計算が合わないだろ。

シュン

俺が男で、妊娠の知識が無いと思って甘く見ているようだけど、

シュン

俺はそんなことでダマされないよ。

マリ

そんな…。

シュン

離婚届はあとで渡すから。

シュン

財産分与の事とかは、後日あらためて話し合おう。

シュン

お腹の子のコトも、産まれたらDNA検査してもらう。

マリ

え？そこまでするの？

シュン

そうしないと、離婚後に生まれた子でも、元夫の子というコトにされるからね。

マリ

そんな…私、あなたと離婚したくない。

シュン

もう遅いよ、君にはガッカリした。

シュン

俺は新しい幸せを探すから。

シュン

元気な赤ちゃんを産んでくれ。

マリ

そんな…。

～1年後～

マリ

シュン、久しぶりね。

マリ

元気でやってる？

マリ

子供はアナタの子じゃなかったけど、無事に育っているわ。

シュン

そうか。俺は元気でやっているよ。

シュン

今は実家で暮らしているのか？

シュン

まあ、元気そうで良かったな。

マリ

ええ、実家で暮らしているわ。

マリ

でも兄一家も同居しているし、なんとなく肩身が狭くて…。

マリ

赤ちゃんは男の子なんだけど、結局ケンゾーにも逃げられちゃったの。

マリ

「子供を育てるとか、マジ無理」って言われて…。

シュン

そりゃお気の毒に。

シュン

でも実家で世話になってるのなら、いいかげん働けば？

シュン

お父さんの会社で働かせてもらうとかさw

マリ

いまさら働くなんて私には無理！

マリ

ねえ、私すごく反省してるの。

マリ

アナタを裏切らなければ、今でも幸せだったんだなって思うと

マリ

悲しくて夜も寝られないの…。

シュン

へー…。

マリ

だからお願い、やり直そう？

マリ

今度は良い奥さんになるから。

マリ

あなたも社長として頑張ってるんだから、妻が必要でしょ？

マリ

私があなたを支えてあげるわ。

シュン

いや、それは必要ないな。

マリ

え、なんで。

シュン

俺、3カ月前に再婚したんだ。

マリ

へ？

シュン

会社で働いてくれてる、社員の女性と結婚したんだ！

シュン

お子さんがいるバツイチの女性だけど、すごく真面目な人だよ。

シュン

君と違って誠実で魅力的な人だ。

マリ

そんな！私よりいい女性なんているわけが…。

シュン

悪いけど、君よりずっと素敵な人だよ。

シュン

だからもう、連絡してこないでくれ。

シュン

お子さんには気の毒だけど、ご実家の助けを借りていれば、育てられるだろう。

マリ

シュン…。

シュン

じゃあ、元気でな。

シュン

さようなら、マリ。

マリ

信じられない、シュンが再婚するなんて。

マリ

あなたは私のモノよ。

マリ

おねがい、戻って来て…。

～後日談～

シュン

マリはそれっきり、俺に連絡をくれることはなくなりました。

シュン

きっと諦めて、実家で子育てに専念しているのだと思います。

シュン

子供はDNA鑑定の結果、やはり俺の子ではないことがわかりましたが、

シュン

彼女の実家が色々と子育てを助けてくれるでしょうから、

シュン

特に心配もしていません。

シュン

俺はこれから、会社社長として頑張ります。

シュン

新しい妻と、子供のためにも暖かい家庭をつくらないとね。

シュン

そばにいてくれる、大切な人たちをしっかり守っていこうと思います！

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

タナカトシキ

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE1190

第1話 - あ

関連するタグ