ポケモンリーグの廊下は、 何度通っても背筋が伸びる。 チャンピオンランクになった今でも、 それは変わらなかった。
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???
聞き慣れた関西弁に 私ははっと顔を上げる。
そこに立っていたのは、 四天王のチリちゃんだった。 腕を組み、いつもの落ち着いた表情で こちらを見ている。
アオイ
チリちゃん
チリちゃん
気もするけどなw
軽く笑うその仕草に、 胸の奥が少しだけ熱くなる。
チャンピオンとして認められたはずなのに、 チリちゃんの前に立つと、 どうしても最初に戦った日の 緊張を思い出してしまう。
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チリちゃんは用件を 単刀直入に切り出した。
チリちゃん
アオイ
チリちゃん
名前が上がっとる
アオイ
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。 候補___その二文字が、 遅れて胸に落ちてくる。
アオイ
わ、私が!?
...ですか?
チリちゃん
チリちゃん
あまりあっさり言われて、 アオイ戸惑いながらも首をすくめた。
アオイ
チリちゃん
チリちゃんはきっぱりと言い切った。
チリちゃん
ここに呼ばれとるんやろ?
その言葉に、背中を押される気がした。
___数日後。 場所はポケモンリーグ近くの開けた場所。 指導という名目ではあったが、 チリちゃんはほとんど何も指示を 出さなかった。
チリちゃん
チリちゃん
見とくだけや
その言葉どおり、 チリちゃんは一歩引いた位置で腕を組み、 私のバトルを静かに見守っていた。
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勝敗が決まったあと、 チリちゃんはゆっくりと近ずいてくる。
チリちゃん
アオイ
チリちゃん
褒めとるんやで
ふっと笑うチリちゃんの表情は、 四天王としてではなく、 一人のトレーナーのそれだった。
そのことに気づいた瞬間、 私の胸は少しざわめいた。
夜。休憩所で並んで腰を下ろし、 二人で遠くを眺める。
チリちゃん
珍しくいつもよりも チリちゃんの声は低かった。
チリちゃん
追いつかれるん、
ちょい怖なったわ
チリちゃん
しれんけどな
私は言葉を失った。 ずっと遠い存在だと思っていた人が、 そんなことを言うなんて。
チリちゃん
チリちゃんは視線を逸らし続ける。
チリちゃん
チリちゃん
ここまで来たんやから
私はぎゅと拳を握り、まっすぐ答えた。
アオイ
戦える場所に立ちたいです
肩書きじゃない。立場でもない。 ただ、同じ場所に。
チリちゃんは一瞬だけ目を見開き、 そして困ったように笑った。
チリちゃん
ずるい子やなぁ
数日後、リーグから正式に 「四天王候補としての継続評価」が 通達された。
報告を終えた帰り道、 私の隣にはチリちゃんが立っていた。
チリちゃん
ちゃんとした席で
待っとるで
その言葉に私は思わず振り返った。
アオイ
また、戦ってくれますか?
チリちゃん
チリちゃんは少しだけ目を細める。
チリちゃん
チリちゃんも強うならんと
あかんなぁ
チリちゃん
アオイ
アオイ
私は笑って前を向いて歩き出す。
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その背中を見ながら、 チリちゃんは小さく呟いた。
チリちゃん
追いつかれそうやな
それでも、悪くないと思った。






