初兎
初兎
保健室の先生が僕が熱を出して倒れたこと、そしてつい先ほど目が覚めたこと、全てをアニキに電話で伝えるために保健室を出て行った後。
イムくんが 恐る恐る保健室に入ってきた。
彼の手には僕のバッグが提げられていて、教室に置いてあった荷物を持ってきてくれたんだなと察することが出来た。
彼に声をかけると、イムくんは安堵したようにほっと息を吐いて駆け足で仕切りの中に入ってくる。
ほとけ
初兎
ほとけ
ニコリと笑ってそう言ったイムくん。
心配してくれてたんだと思うと、申し訳なさと嬉しさが同時に僕を襲って、よくわからない気持ちになった。
ほとけ
初兎
きっと先生を呼んでくれたり、保健室まで運ぶのを手伝ってくれたのは、クラスメイトのみんなだったのだろう。
突然クラスメイトが倒れたら絶対に頭の中が混乱するのに、よくここまでやってくれたなと思うと感謝の気持ちが溢れる。
ほとけ
バッグを「はい」と僕が寝ているベッドの上に乗せたイムくんは、ポケットから何かを取り出そうとして口籠る。
その様子にどうしたんだろう、と思った僕は、首を傾げながらも彼の行動をただ静かに見ていた。
ほとけ
「初兎ちゃんにあげる!」と言って渡されたのは__折り紙で作られたウサギだった。
顔はネームペンで書かれていて、顔だけだがなんだかとても愛嬌があるように感じる。
イムくんは照れ臭そうにはにかみながら、この折り紙をくれた経緯を話してくれた。
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
不安そうな表情で僕の顔を覗き込むイムくん。
たとえそんな話を聞いても聞かなくても、僕にとって言えることはほぼ変わらなかった。
初兎
僕が笑顔でそう言うと、イムくんは安心が流れ出たような優しい笑顔になり、自分の胸に手を当てた。
ほとけ
初兎
ほとけ
そんな他愛もない話をしていると、また僕に睡魔が襲ってきた。
コクリコクリと首の上下を繰り返す僕を見て、話し途中のイムくんは「初兎ちゃん、どうしたの?」と顔を覗き込んできた。
初兎
呂律の回らない声で僕がそう言うと、彼は僕の胸あたりに手を置いて半ば強制的に僕の体をベッドに寝かせた。
ほとけ
ほとけ
初兎
少しずつ 意識が夢の中へと誘われていく。
そんな朦朧とした脳内を、ふとイムくんの優しい柔らかな声が聞こえてきて、そっと包み込んだ。
ほとけ
__早く、良くなってね?
初兎
夢の世界から無事帰還した僕は、最初自分の布団の足元になんだか重りのような体重がかかっていることに違和感を持った。
隣には体温計と食べかけのお粥が載ったお盆が僕の勉強机の上に置かれていて、寝る前までイムくんがいてくれたことを思い出す。
初兎
体の重さもだいぶ軽くなって、頭の痛さも今はほとんど無いし、正直そこまで暑さも感じない。
自分の体調が良くなってきたことに安堵しつつ、それでもなお変わることのない足元の体重を確認するため体を起こす。
ものが置かれていると言うよりは、 何か体重をかけられているような・・・・・・。
不思議に思って見てみると__そこには気持ちよさそうにすやすやと眠る、イムくんがいた。
初兎
彼の頭を優しく撫でてやると、それに反応してパチリとイムくんの目が開かれる。
ぼやけた瞳で目を擦りながら彼はこちらを見ると、「あれ?」とまだ眠たそうな声で言った。
ほとけ
初兎
イムくんは大きなあくびをしながら上に向かって背伸びをすると、もう一度僕を見て「うわっ」と声を上げた。
ほとけ
ほとけ
初兎
夢の中では嘘をついたが、今回はちゃんと嘘をつかずに正直に言う。
するとイムくんは「良かった」と笑ってそう言った後、「あ、でも」と体温計を手に取って僕に渡した。
ほとけ
ほとけ
頬を膨らませながら、彼は僕の手に無理やり体温計を握らせる。
もしかして彼が言っているのは、僕が今日夢で見たあの出来事だろうか。
初兎
ほとけ
ほとけ
眉を下げながら心配そうにこちらを見るイムくんに、大丈夫やでと言って体温計を脇に挟んだ。
初兎
ほとけ
初めてかもしれない、1日で熱が下がったことなんて。
ほとけ
そう言って立ち上がったイムくんの手を__僕は彼を立ち止まらせるように握りしめる。
自分でもよくわからい行動に少し困惑しながらも、不思議そうにこちらを見下ろすイムくんを見て自分の気持ちに気づいた。
初兎
ほとけ
イムくんは「僕は別に良いけど」と同意してくれたので、僕はベッドから足を下ろしてゆっくりと立ち上がった。
初兎
初兎
イムくんとなら僕は、どんなことでも乗り越えられる気がしてきた。
どんなに体調悪くたってイムくんがそばに居てくれれば安心できる。
時々うるさいことだってあるけども・・・・・・それでもいつも一緒にいた双子だから、 そのうるささも逆に幸せに感じる。
イムくんと手を繋いでいれば__きっと倒れることだって無いはずだ。
彼は僕にそう言われると、ニコッと微笑んで手を強く握り返した。
ほとけ
初兎
__僕ら二人なら大丈夫。
だって僕たちは最強で最高の、 双子だから。
ほとけ
初兎
ないこ
ほとけ
悠佑
悠佑
いふ
りうら
ほとけ
初兎
リビングで一つの机を囲みながら、みんなで仲良く団欒をする。
すると突然、りうちゃんがニヤニヤとした笑みを浮かべながらイムくんの方を横目で見て、こう言った。
りうら
いふ
ほとけ
悠佑
ないこ
ほとけ
恥ずかしいのか、どんどんと顔が赤くなっていくイムくんを見て、僕は彼の頭をそっと優しく撫でた。
兄弟の視線が僕に集中する。
初兎
初兎
そう言うとイムくんは僕の体に飛び込んでくるようにして、首元に抱きついてくる。
ほとけ
感動のシーンのように抱きしめ合う僕たちに、アニキがポツリと呟く。
悠佑
初兎
悠佑
アニキのツッコミに、ないくんといふくんの笑い声から家族全体に広がっていく。
__あぁ、やっぱりみんなでおるのは幸せやな。
暖かい雰囲気で満たされたリビングを感じて、僕は心の底からそう思ったのであった。
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