実験室と化したその部屋に、アイリとフェリックスは 天井裏の影から静かに降り立った。 冷え切った空気が肉球を突き刺す。 床に散らばる薄暗い光の中で、 ガラスケースに閉じ込められた猫たちが 目に映った。 彼らはぐったりと力なく横たわり、フェリックスの胸はそれを 見るたびに心が痛んでいた
フェリックス
フェリックスは消毒に使う アルコールを見つけ手にいれた
ケースの一つ一つを確認しながら、 ミミちゃんを探し続ける。
そして、一番奥のケースに その小さな姿を見つけた
フェリックス
返事はない
アイリ
力を合わせて蓋を持ち上げるが、 その重さに二匹は必死だった。 しかし、その蓋は予想を裏切り、床に落ちてしまった
ガシャン!!
フェリックス
フェリックスは慌ててミミちゃんを抱きかかえ、 再び天井裏へと逃げ込んだ。
廊下で足音が聞こえた。 ドアが開く音と共に人間の声が室内に響き渡る。
研究員
研究員2
研究員
研究員2
天井裏に隠れたアイリとフェリックスは、息を潜めながら 下の人間たちの様子を伺った。彼らの緊迫した声が、天井裏の闇にこもる。 ミミちゃんはまだ意識がない。フェリックスにとって、 これはただの脱出ではなく、 仲間を救うための戦いだった。
フェリックス
アイリ
アイリ
フェリックス
アイリ
二匹はミミちゃんを連れて静かに部屋に戻った。 そこでミミちゃんを他の猫たちの中に隠し、 フェリックスは部屋を後にした。
アイリ
フェリックス
建物内では人間がミミちゃんを探し回っている。 彼らの足音と声が響いていた。フェリックスは もう一度天井裏へと身を隠した。 排気ダクトを通り、ある場所を目指していた。
天井の暗がりから、フェリックスは音もなく降り立った。 目的地は、煙草の煙が壁を黄ばませた 喫煙所だ。薄暗い光の下で、 置いてあるライターと床に散らばった たばこの吸い殻をひとつ拾い上げた。
次に研究所の奥に隠れる小さな休憩所。そこで フェリックスは、ガスの元栓をそっと抜き取ると シューという音をたてガスが 出てくるのがわかった
フェリックスが休憩所から廊下へ出ると、 監視カメラにその姿が映る
研究員
人間の声が響く。彼らは、 フェリックスの跡を追い始めた。
フェリックスは探し出される前に、近くの部屋へと身を隠した。 しかし、そこも安全ではない。人間たちの足音が迫る中、 フェリックスは息を切らしながら机の上に飛び乗った
その部屋には、古い写真が何枚も飾られていた。 その中の一枚に、子猫を抱える人間がいた
フェリックス
優しそうな女性の手に包まれていたアレクと、 幸せそうな美しい女性。
女性の横には表彰が映されていた 「動物の保護活動への顕著な貢献により、 数多くの生命が救済されました。 この貴重な功績に対し、深く感謝の意を表し、 ここに表彰いたします。」
しかしフェリックスには人間の 文字は読めなかった その時、ドアが開く音が聞こえた
バン!
研究員
研究員2
フェリックスを取り囲む人間達は 持ってきた網で捕まえようとする
ピー!!
「ガスが漏れています」 「ガスが漏れています」
警報音と共にガス漏れを伝える自動音声が響く
研究員
人間の一瞬の隙をついて、 フェリックスは疾風のように逃げ出した。
研究員2
「ガスが漏れています」 「ガスが漏れています」
研究員
研究員2
警報音が響く中、息を切らして休憩所へと走ってくる研究員。 目的地の前、休憩所の入り口には、フェリックスが佇んでいた
研究員
研究員は興奮を隠せずにフェリックスに 向かおうとした
研究員2
その信じられない光景に 全員が息を呑んだ。
研究員
研究員2
その警告も虚しく、フェリックスは何事にも動じることなく、 火のついたタバコを休憩所の方へ投げ捨てた。
ボン!!!
爆発が起きた。強い衝撃にフェリックスと 人間は吹き飛ばされてしまった
フェリックスは体を打ち付けるものの、なんとか配電盤まで行き、 そのカバーを開ける。実験室から持ってきた アルコールを配電盤にぶちまけ、 ライターで火をつけた。
すると火事騒ぎで混乱が広がり、 一切の照明が消えた
その混乱はアイリがいる部屋にも届いた。 照明が消えると
アイリ
アイリは猫たちの檻の鍵を全て開けた。そして、 鉄格子の窓から猫たちを脱出させる。フェリックスは知っていた。 猫が人間より優れている能力は、暗闇でもその道が見えることだった。
薄暗い月明かりの下、逃げる猫たちの姿がほのかに見える。 彼らは自由を目指してそれぞれの道を懸命に駆け抜ける。 フェリックスの作戦は成功した。猫たちはこの研究所の束縛から逃れ、 新たな始まりへと踏み出していた。 つづく
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