テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

嫌いだったあなたへ

一覧ページ

「嫌いだったあなたへ」のメインビジュアル

嫌いだったあなたへ

2 - 似ている人

♥

6

2025年07月20日

シェアするシェアする
報告する

加柴 沙里

ねえ茄奈、新しい研修の先生、どうだった?

放課後、教室で荷物をまとめながら、沙里が小声で尋ねてきた。

今日初めてやってきた教育実習生──菅岡奈名子。

まだ一言しか話していないのに、茄奈の中では妙なざわつきが残っていた。

小斎 茄奈

…なんか、変な感じだった

加柴 沙里

変って、どこが?

小斎 茄奈

わかんない。でも…上堀に、ちょっと似てた

加柴 沙里

…は?

沙里は思わず笑いかけて、それからすぐ真顔に戻った。

加柴 沙里

まさかとは思うけど、“転生”とか考えてないよね?

小斎 茄奈

…いや、考えてないけど。でも、仕草が。笑い方とか、目つきとか

加柴 沙里

いやいやいや、いくらなんでも飛躍しすぎ

加柴 沙里

若くて優しそうだったじゃん、あの人

小斎 茄奈

うん。優しそう…だった。でも…“目”が笑ってない気がした

茄奈はそう言ったあと、自分でもなぜこんなに警戒しているのか分からなくなっていた。

相手は何もしていない。

ただ自己紹介して、にこやかに微笑んだだけだ。

小斎 茄奈

(だけど…どうしてこんなに気になるんだろう)

翌朝、ホームルームの時間。

菅岡奈名子が担任の横に立って、挨拶をした。

菅岡 奈名子

これから3週間、みなさんの様子を見させていただきながら、勉強させてもらいます

その声はやわらかく、語尾まで丁寧だった。

クラスの空気も穏やかで、特に男子たちは早くも好意的な目で彼女を見ている。

男子生徒

やっぱキレイだよな、研修の先生って

男子生徒

前の年も可愛かったよな〜

男子たちのささやきが教室の隅でこだましている。

その声に、茄奈は思わず目を細めた。

小斎 茄奈

(なんか、また“男子に甘く、女子に厳しい”先生になる気がする…)

そんな嫌な予感が、胸に残る。

3時間目、現代文の授業中。

菅岡奈名子は後ろから見学していたが、途中で突然、話に加わった。

菅岡 奈名子

たとえばこの文章の“違和感”って、誰が感じているんでしょうね?

その問いかけに、生徒たちは黙り込んだ。

一瞬、張りつめた空気が教室に広がった──が、

菅岡 奈名子

…小斎さん、どうですか?

と、茄奈の名前だけを、ぽつりと呼んだ。

一瞬、背筋が凍った。

小斎 茄奈

(なんで、私?)

茄奈は、ほとんど手を挙げたこともないタイプだった。

答えに自信があるわけでもない。目立ちたいと思わない。

小斎 茄奈

え、あ、えっと…語り手…、ですか?

菅岡 奈名子

はい、正解です。よく気づきましたね

菅岡は穏やかに笑った。

だがその“穏やかさ”が、どこか──上堀のそれと、重なって見えた。

褒めているのに、じんわりとプレッシャーをかけてくるあの感じ。

小斎 茄奈

(やっぱり…似てる)

胸のざわめきが、もはや「気のせい」と言い切れなかった。

放課後。

茄奈が靴箱の前で靴を履き替えていると、菅岡奈名子が近づいてきた。

菅岡 奈名子

小斎さん、今日の答え、すごくよかったです

小斎 茄奈

あ、はい…ありがとうございます

菅岡 奈名子

私、初めての教育実習なんです。まだ慣れてなくて。いろいろ教えてくださいね

笑って、頭を下げてきたその姿は、やっぱり──“普通の先生”だった。

でも。

小斎 茄奈

(私は…忘れない。上堀も、最初はそうやって笑ってた)

そう、思い出した。

最初は優しかった。けど、少しずつ“本性”を見せていった──あの頃と同じように。

その夜、茄奈は夢は見た。

夢の中で、菅岡奈名子が黒板の前に立っていた。

教壇の上で、見下ろすような笑顔で言う。

…小斎さん。また校則、破ってますね

その声は、まぎれもなく──上堀登代子の声だった。

この作品はいかがでしたか?

6

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚