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○○
帰りの支度をしていた手が ぴた、 と 止まる . さっきまで音楽の授業があって 、 そのまま教科書を音楽室に忘れてきたみたい .
クラスメイト達の声が遠ざかって 、 廊下には夕日が差し込んでいる .
教室のざわめきから離れて歩く 音楽室前の廊下は 、 どこか静かで 心がすうっとした .
ドアノブに 手を掛けた時 、
澄んだ ギターの音が聴こえた .
○○
小さく軋んだ音ともに 、 ドアが少しだけ開いた 。 中に見えたのは ギターを抱え 、 楽しそうな表情で 指を動かす クラスの人気者 、 伊波ライくんだった 。
inm .
伊波くんが 、 ふいに顔を上げた . 弦をつまんだ指が止まり 、 ギターの音が消える .
気づかれた 、 と 分かった瞬間 、 私は思わずドアから体を引いた .
inm .
そう言って 、 彼が立ち上がる音が聞こえた .
どうしよう . 今さら 逃げるのも 何か 変で 、
私は観念して そっとドアを開けた .
○○
○○
声は少し震えていた . だけど 彼は 、 びっくりするくらい柔らかく笑った .
inm .
○○
inm .
そう言いながら 、 伊波くんは 頬をかいた 。
学校では 明るくて 、 友達も多くて 誰とでも気さくに話す 彼 .
でも今の声は 、 それよりずっと 、 近くて柔らかくて .
まるで私だけに届くような温度だった .
○○
そう言うと 、 彼はちょっとだけ視線を逸らして 呟いた 。
inm .
ギターを抱えたまま 、 彼は照れたように笑う .
その笑顔に 、 少しだけ 息を止めた .
こんな表情 、 誰にも見せたことないんじゃないかな .
気づけば 夕陽は 窓の外に 沈みかけていた .
その日 、 私は教科書と一緒に 少しのドキドキを持ち帰ることになった .
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