テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
体育館の匂いは、変わらなかった
ワックスの汗と、少し湿った風
シャトルが床に落ちる音だけが、やけに響く
?
突然後ろから声がした
振り返った瞬間、息が止まった
jp
そこにいたのは、
赤髪を揺らして笑う――緑川龍勢(みどりかわ りゅうせい)だった
ur
jp
ur
龍勢は、一瞬だけ目を細めて、それからいつも通り笑った
jp
軽い調子
でも、どこか違和感があった
ur
近づく
手を伸ばす
――触れられない
ur
笑うしかなかった
jp
龍勢は、少しだけ困ったみたいに頭をかいた
jp
言葉が、やけにゆっくり耳に入る
jp
体育館の音が消える
あの日
ur
jp
最後の試合、負けて
ur
悔しくて、
jp
jp
jp
ur
jp
jp
ur
jp
ur
jp
でも二人で笑って帰った帰り道
jp
ur
jp
ur
ur
ur
jp
龍勢はシャトルを拾い上げるふりをして、空を掴んだ
jp
宇俚は、ぐっと歯を食いしばる
ur
jp
龍勢は、いつもの調子で笑う
でも、その目だけは少しだけ真剣で
jp
ur
jp
ur
図星だった
ラケットを握る手に力が入る
ur
jp
龍勢は楽しそうに笑って、それからふっと視線を逸らした
jp
ur
jp
その一言に、胸が締め付けられる
jp
ur
jp
ur
jp
ur
馬鹿みたいだった
でも、断われなかった
シャトルが、宙を舞う
音はしない
でも確かに、打ち合っている感覚がある
息が上がる
足が動く
jp
ur
笑いながら、叫びながら
あの頃と同じ時間が、そこにあった
――でも
龍勢の動きが、少しずつ淡くなる
ur
jp
ur
jp
あっけらかんとした声
jp
胸が強く痛む
最後の一打
宇俚のスマッシュが決まる
ur
jp
龍勢は悔しそうに笑って、でもどこか満足そうだった
jp
ur
一歩、近づく
触れられない距離
jp
龍勢が、少しだけ言い淀む
珍しい
あの、ふざけてばかりの龍勢が
jp
時間が止まる
ur
jp
そう言った龍勢の声は、震えていた
ur
jp
ur
言った瞬間、視界が滲む
ur
jp
龍勢は、いたずらっぽく笑った
その姿が、風に溶けるみたいに揺れる
jp
ur
jp
体育館を出ると、夏の空気が広がっていた
オレンジ色の空
少しぬるい風
並んで歩く
触れられないけど、隣にいる
jp
ur
jp
笑い声が、やけに優しい
ur
jp
ur
jp
ur
海が見えてくる
jp
jp
ur
jp
ur
jp
ur
jp
龍勢が立ち止まる
jp
ur
分かっていた
でも、認めたくなかった
jp
ur
jp
その言葉に、宇俚は顔を歪める
ur
jp
少しだけ、寂しそうに笑って
jp
そのとき初めて、波の音が聞こえた気がした
ur
jp
それでも龍勢は笑った
jp
最後に一歩、近づく
jp
その瞬間、体が透けていく
ur
どんだけ叫んでも、もう遅い
ur
声だけが、残った
一人、海辺に立つ
でも、不思議と前を向けた
ur
小さく笑う
空を見上げる
ur
夏は終わる
でも――
あいつは、まだどこかで笑ってる気がした