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芥川龍之介

……奴を殺して良いのは、僕のみ。

芥川龍之介

それ以外はけして赦されない。

芥川龍之介

それに、奴はフラフラとどこかへ行ってしまう。

芥川龍之介

それゆえ、縛り付けておかねばならぬ。

心底嬉しそうな表情で芥川は笑む。

このように笑う芥川を中原は見たことがなかった。

中原中也

だから、芥川幹部で幸せを感じさせて、芥川幹部により絶望させるのか……なかなか狂ってやがるぜ

太宰治

そんなことを言う中也も、敦さんの絶望した顔、見たいと思ってるんでしょ

太宰の言葉に中原は笑う。

中原中也

もちろん……あの人を殺したいと言い出したのは俺だからな。

少々、芥川の眉が動いた気がしたが、さほど気にしなかった。

あれは二年前の出来事。

敦がポートマフィアから抜け出したあの日。

中原は敦に己の気持ちを伝えようとしていたのだった。

だから鍛錬を済ませ、夜ご飯を作って、任務に向かっていた敦の帰りを待っていたのだが、

……いくら待っても敦は帰ってこなかった。

敦の身を案じた中原は敦はポートマフィア本部へ向かった。

本部では

“敦が裏切った”

という声で溢れていた。

中原は絶望した。

あんなにも大切な弟子として扱ってくれていたと思っていたのに、

こんなにも簡単に裏切られてしまうのか、と絶望した。

そしてだんだんと敦に対する恨みが強くなっていった。

ここまでも敦を思う気持ちを孕ませておいて、

孕ませた本人は霧のように逃げていってしまうのか。

そう思えば思うほど憎たらしくてたまらなかった。

そこからどのようにかつての師に復讐してやろうかと考えた。

いや、復讐ではない。

もう二度と自分から逃げられないようにしてやろうと思ったのだ。

半殺しにして四肢でも折ってしまおうかと思った。

だがそうすれば二度と敦から抱きしめてはもらえない。

だから犯してしまおうかと思った。

だがそれで中原を恐れてしまったら元も子もない。

次は薬物でも飲ませてしまおうかと思った。

だが薬ばかりに執着してしまう敦は見たくなかった。

他にもっと考えた。

だが中原だけを見てもらえる方法などなかった。

太宰治

なら、僕と共に計画しない?

太宰治

これでも相棒だし、同じ人を好いてる敵同士、手を組まない?

太宰の提案は中原の願望すべては叶いそうにはなかったが、

中原中也という人を見てもらえる計画は練れそうだった。

中原中也

……ああ、わかった。

中原中也

だけど、俺はあの人の心をぶっ殺してしまいたいんだ。

太宰治

それならいい。僕もあの人を殺してしまいたいんだ!

太宰治

そうしたらあの人は僕たちに縋るしかない……!

そして太宰は中原より早くポートマフィアに属していたこともあり、仕事が早かった。

実は一ヶ月ちょっとで計画は練れてはいたのだが、敦のため、二年間という歳月を与えた。

敦の心を

殺すために。

もし、これを、この気持ちを、敦が知ったらどんな顔をするだろうか。

驚くだろうか。

軽視するだろうか。

いや、きっと絶望する。

今見ている幸せが仮初であることにも絶望するだろうが、

その計画を立てたのが自分の弟子であったという事実には、ひどく落胆し、ひどい裏切りを味わうだろう。

だが、これこそが中原が敦から受けた裏切りの傷なのだ。

痛みなのだ。

だから、師である敦にも痛みを味わってほしい。

もっといえば、自分よりも苦しい目に遭って、自分に縋ってくれればなおいい。

中原中也

……ずっと愛していますよ

この選択が間違いだなんて思わない。

いや、思わせない。

後悔もしない。

だって、こんなにも気分が高揚するのだ。

こんなにも愛してやまないのだから。

いつだって、世界は闇に包まれている。

何が正解で何が不正解か。

考えることすらも莫迦らしくなるような、そんな邪念ばかりが敷き詰められている。

そうなれば、愛されたい、という願いですらも、

結局は邪念であり、なに一つ正解ではない。

尤も、信じるだなんて行為は、愚か極まりなく、

自身を危険に晒すだけである。

なに一つとして褒められたものではない。

なに一つ、報われない。

なに一つとして、報われないのだ。

長いお話でしたが、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

楽しんでいただけたら幸いです。

もし、リクエストがありましたら、このコメント欄にお書きください。

優しいあなたの殺し方

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コメント

6

ユーザー

え、最高すぎます、、、神??? めっちゃ好き

ユーザー
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