太陽の光を反射する 水の色をしたサイダーと
そこに閉じこめられた ちいさな泡たち。
混ぜられた炭酸は 自由になろうと、
とろりとした液体を ゆるゆる昇っていく。
ぱちぱちと弾けて 消える様子は
見ているだけなら、
すごく綺麗なままなのに。
今日も空は蒼色で
いつになく 白い太陽が 放つ光は、
まるで スポットライトの ようだった。
会話の流れが 恋人同士みたいで
途端に鼓動がやかましくなる。
手をぱたぱたと仰いで 風を送ってみるけど
目を細めて手をかざす 彼の横顔のほうが ずっと眩しくて
ふたつの意味で あつい。
口のなかでは攻撃的で、
針みたいな鋭さで 私を刺してくる。
私が痛いってこと 気づいてないから
無邪気に君は 笑ってくれて、
君のキモチを 知っているから
歪んだ私は 損得ばかりで。
こんなに 対照的なんだから、
遠のいてくのは 当たりまえだね。
ベンチに座る 私たちの距離が 思いのほか近くて、
手を伸ばせば 届きそうだな
なんてことを思った。
なんでも似合うから、 とか言おうとしてやめて
無意識に俯いて 言葉を探す。
彼の好きな色を 選んで着たなんて
彼の傍には いけないからなんて
絶対に間違いだから、 言わなかった。
正解なんて よくわからないし
何がいちばん 届くのかなんて、
教えてくれると 思ってたんだよ。
今日も空は蒼色で
いつになく 白い太陽が 放つ光は、
まるで スポットライトの ようだった。
期待してしまう私に 彼が差しだしたのは
涼やかな見た目のガラス瓶だった。
宝石みたいに あちこち光る 水色のなかで
ちいさな気体が踊っている。
ぽん、という音で 蓋を開けた彼は
一気に半分くらい 注ぎこんだ。
瓶のなかで揺れる クリスタルを呑んでみた。
舌の上で、 丸い刺激が跳ねていた。
幸せな甘酸っぱさが 猛烈な苦味に変わる。
泡の粒が一斉に棘になり、 容赦なく暴れだした。
よく考えれば、 甘いものは苦手なはずなのに。
浮かれてしまった 自分がいやになる。
白い太陽光は スポットライトだけど
ステージに立つのは 私じゃない、
今日伝えたかったことも 無意味だったんだ。
だから、せめてもの抵抗をしたくて。
ざらつく心から声を絞りだした。
甘ノ寂レジスタンス
コメント
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すうさん、初めまして! とても素敵な表現に心打たれました✨ 『炭酸』を用いて主人公の恋心や三角関係の切なさを表していて、とても素敵なストーリーでした🤭💭 もし、すうさんがよろしければフォローしてもよろしいでしょうか……?
今回もとても素敵なお話でした…😳✨ ほの花さんも言っていましたが「揺れるクリスタルを呑む」という表現…いつも予想のつかない素敵な表現に驚かされます✨ ところですうさん…!! フォローありがとうございます…! 憧れの方なのですごく嬉しいです…これからもよろしくお願いします🙇♂️