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1人の少女が大空を飛んだ。
私はそれを目撃した。
両手を広げた彼女は
笑顔で涙を流していた。
だけど翼はすぐに折れた。
彼女は急降下した。
だけど笑顔を絶やさなかった。
最期に瞼を閉じて言った。
『さようなら』
と
リサ
AM8:09
それは夢だった。
学生も辛いと
学生である彼らは言う。
大人はとても辛いと
大人である彼らは言う。
理不尽な世の中。
理不尽な社会。
生きていく為にはどうすればいいのか…
生きたくなくなった人はどうすればいいのか…
空を飛んだ彼女…
あの姿が脳裏に浮かぶ。
何故。
ゆっくりと身体を起こし
ベッドから飛び降りた。
そして、服を脱ぐ。
久しぶりの外出だった。
誰もいない。
驚くほどに誰もいない…。
車も通らない。
音がない。
静寂…
静寂だった。
でもこれは驚くべき事ではない。
いつもこの調子だ。
私には何もみえていない。
よくわからないけど、
本当にみえていない。
賑やかなスクランブル交差点だって…
誰一人いない…
ただの静かな道。
リサ
私は1人だった。
ずっとこの世界に閉じ込められている
1人でしかない…
ここに来たのは5年前
目が覚めたらこんな感じで
音がない、誰もいない…
何もなかった。
私は何者で…
どうしてこうなったのか…
誰も教えてくれなかった。
ただ。
ここにいる意味を…
見つけないと始まらないと…
そう思い込んでいた。
気がつくとある中学校の前に来ていた。
古びた校舎。
正門には"危険"のカラーテープが 張られている。
リサ
ここを、私は知っている…。
来る度に思っていた。
何かを感じていた。
でもいつもここで足が止まってしまう
中に入ってそれを確かめたいのに…
足が動かなくなる。
でも今日は違った。
ビリリッ
カラーテープを剥がし、
正門をくぐってみた。
リサ
そう、一見ただの廃校なのだ。
だけど、
私にとっての何かであることは…
確かだった。
私は校舎へと足を踏み入れた
古びた校舎ということもあり、
中はホコリ臭く、蜘蛛の巣だらけだった
リサ
前に進まなきゃ…
私が1人ここに居る意味を…
探さなきゃ…。
とある教室の前で、私は足を止めた
『202』
中学二年生の二組の教室だ。
中を覗こうと、引き戸に手をかける。
重い手応えと鈍い音がどこか懐かしい
だけどその懐かしさは…
どこか怖かった。
思い出したいのに…
思い出せない。
思い出そうとすると…鳥肌がたった
今はまだ…目の前のことに集中しよう。
私は教室の中に入った。
リサ
そして絶句したのだ。
『8.9』
そう赤く大きく壁に描かれていた。
それだけではない…
黒板や、残された机。
至るとこに赤い文字があった。
『殺人鬼が死んだ。』
『このクラスの女子が全員死んだ』
『殺人鬼は死んで正解だった』
『クラスの女子は屋上から飛び降りて 死んでいった』
『殺人鬼も飛び降りて死んだ。』
『笑顔だった。』
リサ
リサ
夢でみた少女の事だった。
あの子がたくさんの人を殺した。
だから殺人鬼と呼ばれていた。
でも、…
彼女は笑顔だった。
何故……
私には疑問があった。
なぜ私がここを懐かしむのか…
この教室に引き寄せられたのか。
未だにわからない。
きっと、私は殺人鬼を知っている。
殺人鬼が誰なのか…
それを知れば私はここから抜け出せる
そう確信した。
ゆっくりと教室をあとにする。
リサ
4階まで上がると、 そこはもう屋上だった
屋上へと繋がる扉があるのだが
それが開かない……。
きっと…
危ないから閉鎖されているのだ
これだと何も掴めないままだ。
また1からになってしまう。
屋上に行けば何かわかるかと思ったのに
リサ
私はため息をついた。
飛び降りた彼女は涙を流していた
どうして何人もの人を殺したのだろう
きっと理由はなかった。
いじめの主犯が殺人鬼で
いじめられた人々は屋上から飛び降りた
なんて残酷な世界だろう。
ふと目を凝らすと
扉の端になにかが赤く書かれていた
『殺人鬼は誰だ。』
意味がわからない言葉だった。
ここにいた生徒達は彼女を知っている はずなのに…
いや、この字は、……
リサ
今私はここに何か書いただろうか
いいや、書いていない。
ペンなどどこにもないのだ。
それに、少し消えかかっている
これは古い。
リサ
きっと私も屋上で死んだんだ。
そう考えずにはいられなかった。
ガチャ
リサ
ふいに扉の鍵が開いた。
きっと、私が死んだという考えが
あっていたのだ。
これが正解だったんだ。
ゆっくりと扉を開け、
外に出てみた。
風が心地良い…
普通の屋上。
リサ
リサ
リサ
そして、
リサ
私も殺人鬼にいじめられたのか…
だが屋上に立っても
何も怖くない。
なんでだろう。
もしかして…私は……
足もとに落ちていた小石に、
また…赤字で何か描かれていた
『殺人鬼の名は…』
そこまでしか書かれていない。
私は小石を拾い、砂を払う。
いや、
どうしてもここまでしか書かれていない
消えているわけでもないだろう。
そして、
リサ
なぜ私の字があるのか…
とても不快だった。
けれど、これはなにかのヒント。
ここにいた私が書いたのだろう。
殺人鬼を知っているのに…。
一度飛び降りてみよう。
そう思った。
フェンスを乗り越え、向こう側に立つ。
ビューーーッ
風が強かった。
私は心で決めた。
飛び降りたらわかる気がした。
右足を宙に伸ばし、 体重を右足にかける。
すると右足が空を切った。
私の身体は傾き、ゆっくりと落ちていく
何故か涙がでた。
悲しくなかった。
ふと何かが見えた…
クラスの男子
202に、誰かがいる。
私を見て、指をさす。
リサ
今になって、全てが見えた。
ざわめく声と、
悲鳴と、
風の音が…。
聞こえた時。
嬉しかった。
涙を流しながら…
笑っていた。
目を閉じた。
そして言ってみる。
彼女(あの時)と同じ台詞を
リサ
地面に落ちる前に…
誰かが見えた。
同じように涙を流して、
笑顔でこちらを見る。
私がいた。