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幸子

そもそも新月なんて映せるのかな?

幸子

目に見えないモノをどうやって映すんだろ…

幸子

だから、上手くいかない人が多いのかな?

首を傾げて一人ブツブツ呟く。

幸子

うーん…

幸子

まず、言葉の意味を調べてみようかな

スマホを取り出し操作する。

幸子

えっと……水鏡っと…

水鏡とは…水面に姿がうつって見えること。水面に姿をうつして見ること。

幸子

次に、幻影っと…

幻影とは…まぼろし。幻覚によって生ずる影像。心の中に描き出す姿。

幸子

……

幸子

水盆の水面に新月を映せば真実が見え

幸子

間違えれば幻に襲われる…ってことかな…?

幸子

新月は影に隠れて見えないだけで

幸子

お月様が消えたわけじゃないから

幸子

映すことは不可能じゃないけど…

幸子

映ってることは確認出来ないよね

幸子

………

幸子

間違えるってことは

幸子

新月じゃないお月様を映したり

幸子

新月がちゃんと水面に映ってない場合を言うのかな…

幸子

………

幸子はしばし黙って水盆を見つめる。

幸子

取り敢えず、お水を入れてみようかな

幸子

えーっと…台所は…

幸子は立ち上がり、

廊下へ続く障子を開けた。

幸子

それにしても広い家…

幸子

こんなところに一人でいるなんて……

幸子

私なら寂しくて耐えられないなぁ

廊下を進み、

台所を探す。

ふと、

何か聞こえて足を止める。

幸子

(この部屋からだ…)

そっと障子を開けると

そこにはたくさんの骨董品が並べられていた。

幸子

(すっごい!)

木箱に入ったままのモノや

机の上に無造作に置かれた陶器、

畳に敷かれた布の上に並んだ置物、

屏風や掛け軸も見られた。

”あら、子供だわ”

”誰の子?”

”見かけない子だな”

”でも、あの子…”

”妙なモノが…”

複数の声が聞こえる。

幸子

あ、えーっと

幸子

こんにちは

幸子

もし、私の声が聞こえたら

幸子

教えて欲しいんだけど…

幸子

永見伍蔵さんがどこに行ったか…

幸子

知りませんか?

”ながみ いつぞうって?”

”ほら、あのチビでハゲの”

幸子

(酷い言われよう!)

”ああ…骨董品買うだけ買って何しない奴か”

”そういえば、ここ数日見てないわね”

”水盆を手に入れたとかなんとか言ってたけど”

”どうせあの胡散臭い骨董屋から買ったんだろ”

幸子

その胡散臭い骨董屋って

”!!”

”声、聞こえるのか?”

幸子

はい、一応…

”え、じゃあ今までの会話…”

”さっきチビハゲって言ったのも…”

幸子

聞こえてます

”あちゃ~…”

幸子

あ!でも、別にそれを告げ口するつもりはないので

幸子

それに、今、永見さん行方不明ですし…

”………”

幸子

あ、で、その胡散臭い骨董屋って油崎っていう名前ですか?

”いいや”

”ユザキじゃないな、オレはあいつのとこに居たから知ってる”

”確かにフケって言わなかった?”

”ああ、そんな名前だったな”

幸子

フケ…

”大したことない品をあれやこれやとウソぶいて高値で売り付けるんだ”

幸子

なんと…

”どうせあの水盆も良いように言われて買わされた口だろ”

幸子

…ふむ…

幸子

ありがとう、教えてくれて

”いや、別に…”

”それで?持ち主がいなくなったってことはオレたちどうなるの?”

幸子

それは、わかりません…

幸子

他の人のところに行くことになるかもしれませんし…

”そう…”

”せめてもう少し日当たりのいいところに行きたいなぁ”

幸子

(悪いヒトたちじゃあなさそうだから)

幸子

(祓う必要性はないよね)

幸子

じゃ、私はこれで

”おう”

パタンと扉を閉めて、

幸子は廊下を進む。

その先に台所があり、

幸子は手桶に水を入れて

水盆の元に戻った。

幸子

………

水盆の中に水を張り、

じっと見つめる。

幸子

変化無し……かな

幸子

声も聞こえないし…

幸子

気配も無い…

幸子

うーん…

幸子

偽物ってこと?

幸子

だったら、永見さんは……どこに?

幸子は水鏡に映った己の顔を見つめる。

幸子

あ、次の新月っていつなんだろう

スマホを取り出し調べる。

幸子

あ、来週だ

幸子

来週?

幸子

ってことは前回の新月は……

幸子

………

幸子

先月……

"水盆を買って一週間連絡が無かったら…"

"数日前に来て探したけど…"

幸子

そう油崎さんは言ってた

幸子

ざっくりとだけど話をまとめると

幸子

水盆を使ったのは二週間前…ってこと?

幸子

そうなるとどう考えても新月じゃない

幸子

新月じゃないのにどうして使ったんだろ

幸子

???

幸子

……もしかして

幸子

そもそも水盆は使っていない、とか?

幸子

そうなると

幸子

永見さんが行方不明になった理由は

幸子

他にあるってことに……

そう呟いて幸子は再び立ち上がった。

幸子

よし、もう少し家の中を見て回ろう

そして、また廊下へと出たのだった。

幸子

あちこちから気配を感じる…

彼女は廊下のT字路に立ち、

ぐるりと辺りを見渡す。

幸子

本当にたくさんの骨董品があるんだなぁ…

幸子

これだけ多いと

幸子

何が原因で行方不明になったのか…

うーむ…と小さく唸りながら、

家の中を彷徨う。

永見伍蔵氏だけが生活していると言っていたが

使われていない部屋は

どこも綺麗に片付けられていた。

幸子

綺麗好きなおじさんだったのかな

そんなことを言いながら廊下を歩き、

ふと、

足を止める。

幸子

……

幸子

嫌な気配…

そして、

襖に手をかける。

”おや、見ない顔だね”

声が聞こえて振り返ると、

掛け軸に描かれた女性の目が動いた。

”興味本位でそこを開けたらいけないよ”

”まぁ、わたしの声なんて”

”聞こえちゃいないんだろうけど”

幸子

聞こえてますよ

”え!!?”

幸子

初めまして、私の名前は中村幸子

幸子

貴女のような付喪神の声を聞くことが出来るの

”そうかい…”

女性はゆっくりと目を細めた。

幸子

この部屋に何かあるんですか?

”ああ、あるよ”

”ここのハゲが買い集めた”

”曰く付きのもんがね”

幸子

……曰く付きのもの…

”そう、悪いもんだ”

”あのハゲもこの部屋に入ったきり”

”出てこないしねぇ”

幸子

え…それっていつのことですか?

”さぁ?”

”時間なんてわかりゃしないさ”

”少し前、としか言えないね”

幸子

そうですか…

幸子はチラリとスマホに視線を落とす。

幸子

(先生が何も言って来ないと言うことは)

幸子

(危険なことは起こらないはず…)

”入るのかい?”

幸子

少し、覗くだけです

そう言って

幸子はそっと障子を開けた。

幸子

あ…

六畳ほどの窓の無い部屋。

幸子が開けた襖の隙間から差し込んだ光が

部屋の中にある

真っ黒な器と

その奥に座る

男性にあたる。

俯いていた男性が

ゆっくりと

顔を上げた

その瞬間

パンッ!

幸子

!!

襖が物凄い勢いで閉じられた。

幸子

(か、勝手に閉まった……)

幸子

(ううん、たぶん、先生が…)

”何か見えたのかい?”

幸子

男性がいました

”え?”

幸子

あと、黒い器…

”…そりゃ、水盆だろ”

幸子

水盆?

”ああ”

”ハゲが嬉しそうにその部屋に運び込んでいたのを見たよ”

幸子

それって、もしかして

幸子

下に小さな足がついた?

”ああ、そんな感じだったね”

”真実を映す水盆だって”

”ハゲは言ってたよ”

幸子

……

幸子

(じゃあ、あれが…)

幸子

(本当の”水鏡水盆”)

引きこもりの呪術師・幸子

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