幸子
幸子
幸子
首を傾げて一人ブツブツ呟く。
幸子
幸子
スマホを取り出し操作する。
幸子
水鏡とは…水面に姿がうつって見えること。水面に姿をうつして見ること。
幸子
幻影とは…まぼろし。幻覚によって生ずる影像。心の中に描き出す姿。
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子はしばし黙って水盆を見つめる。
幸子
幸子
幸子は立ち上がり、
廊下へ続く障子を開けた。
幸子
幸子
幸子
廊下を進み、
台所を探す。
ふと、
何か聞こえて足を止める。
幸子
そっと障子を開けると
そこにはたくさんの骨董品が並べられていた。
幸子
木箱に入ったままのモノや
机の上に無造作に置かれた陶器、
畳に敷かれた布の上に並んだ置物、
屏風や掛け軸も見られた。
”あら、子供だわ”
”誰の子?”
”見かけない子だな”
”でも、あの子…”
”妙なモノが…”
複数の声が聞こえる。
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
”ながみ いつぞうって?”
”ほら、あのチビでハゲの”
幸子
”ああ…骨董品買うだけ買って何しない奴か”
”そういえば、ここ数日見てないわね”
”水盆を手に入れたとかなんとか言ってたけど”
”どうせあの胡散臭い骨董屋から買ったんだろ”
幸子
”!!”
”声、聞こえるのか?”
幸子
”え、じゃあ今までの会話…”
”さっきチビハゲって言ったのも…”
幸子
”あちゃ~…”
幸子
幸子
”………”
幸子
”いいや”
”ユザキじゃないな、オレはあいつのとこに居たから知ってる”
”確かにフケって言わなかった?”
”ああ、そんな名前だったな”
幸子
”大したことない品をあれやこれやとウソぶいて高値で売り付けるんだ”
幸子
”どうせあの水盆も良いように言われて買わされた口だろ”
幸子
幸子
”いや、別に…”
”それで?持ち主がいなくなったってことはオレたちどうなるの?”
幸子
幸子
”そう…”
”せめてもう少し日当たりのいいところに行きたいなぁ”
幸子
幸子
幸子
”おう”
パタンと扉を閉めて、
幸子は廊下を進む。
その先に台所があり、
幸子は手桶に水を入れて
水盆の元に戻った。
幸子
水盆の中に水を張り、
じっと見つめる。
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子は水鏡に映った己の顔を見つめる。
幸子
スマホを取り出し調べる。
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
"水盆を買って一週間連絡が無かったら…"
"数日前に来て探したけど…"
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
幸子
そう呟いて幸子は再び立ち上がった。
幸子
そして、また廊下へと出たのだった。
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・
幸子
彼女は廊下のT字路に立ち、
ぐるりと辺りを見渡す。
幸子
幸子
幸子
うーむ…と小さく唸りながら、
家の中を彷徨う。
永見伍蔵氏だけが生活していると言っていたが
使われていない部屋は
どこも綺麗に片付けられていた。
幸子
そんなことを言いながら廊下を歩き、
ふと、
足を止める。
幸子
幸子
そして、
襖に手をかける。
”おや、見ない顔だね”
声が聞こえて振り返ると、
掛け軸に描かれた女性の目が動いた。
”興味本位でそこを開けたらいけないよ”
”まぁ、わたしの声なんて”
”聞こえちゃいないんだろうけど”
幸子
”え!!?”
幸子
幸子
”そうかい…”
女性はゆっくりと目を細めた。
幸子
”ああ、あるよ”
”ここのハゲが買い集めた”
”曰く付きのもんがね”
幸子
”そう、悪いもんだ”
”あのハゲもこの部屋に入ったきり”
”出てこないしねぇ”
幸子
”さぁ?”
”時間なんてわかりゃしないさ”
”少し前、としか言えないね”
幸子
幸子はチラリとスマホに視線を落とす。
幸子
幸子
”入るのかい?”
幸子
そう言って
幸子はそっと障子を開けた。
幸子
六畳ほどの窓の無い部屋。
幸子が開けた襖の隙間から差し込んだ光が
部屋の中にある
真っ黒な器と
その奥に座る
男性にあたる。
俯いていた男性が
ゆっくりと
顔を上げた
その瞬間
パンッ!
幸子
襖が物凄い勢いで閉じられた。
幸子
幸子
”何か見えたのかい?”
幸子
”え?”
幸子
”…そりゃ、水盆だろ”
幸子
”ああ”
”ハゲが嬉しそうにその部屋に運び込んでいたのを見たよ”
幸子
幸子
”ああ、そんな感じだったね”
”真実を映す水盆だって”
”ハゲは言ってたよ”
幸子
幸子
幸子
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