電子世界に迷い込んで、のめり込んで、一体化してしまった僕。
チハヤと名乗っていたが、これがなんなのかは最早わからない。
単なるハンドルネームなのか、何かのコードなのか、はたまたノードなのか。
まぁ、少なくとも本名ではないのは確かだ。同時に、この電子世界の中では本名であるのも確かだったけれど。
この世界の中で、ぼくはメルトに出会った。
彼女……だと思われる。性別がこの世界では割とファジーだが、おそらく女性だろう。
この世界において性別というのは、重要性の濃度が場所によって劇的に異なる気がする。
この世界に浸かれば浸かるほど、それは希薄になり、足かけ腰かけであるほど、その執着が消えることはない。
その理由は、おそらくこの世界で唯一できないことが子供を作ることぐらいだからだろう。
つまり、それを許容してこの世界に浸かっている人は、それほど性別に執着がなくなってくるのだ。
僕もメルトも、浸かりに使った人間なのは間違いない。少なくともそれだけは確かだった。
そんなことを考えていると、もういつもの時間だった。
ドアが開く。厳密には、繋がるといったほうが正しいかもしれないけれど。
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
メルト
チハヤ
こうして、今日も他愛のない1日が、この世界でも始まるのであった。