テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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第1話 - あ

2023年11月29日

#スカッと

タナカトシキ

ケイコ

アンリ、最近全然連絡よこさないけど大丈夫なの？

ケイコ

生きてるの？

アンリ

急に何なの？

アンリ

生きてるに決まってるでしょ？

ケイコ

決まってるって…

ケイコ

分かんないじゃない

ケイコ

音沙汰が無かったら心配するでしょ

アンリ

そりゃそうでしょ…

アンリ

私ももう大人なんだよ？

アンリ

ずっと親と連絡とるわけにもいかないって

アンリ

それに、私が家を出て何年が経ってると思ってるの？

ケイコ

何年経ってもアンリは私の子供なの

ケイコ

だから連絡は時々よこしてね

アンリ

気が向いたらね

ケイコ

また、そんな良い加減な返事して…

ケイコ

ところで、ミライは元気にしてる？

アンリ

元気に決まってるでしょ

アンリ

何？

アンリ

何でそんなこと聞くの？

ケイコ

何って…

ケイコ

自分の孫のことなんだから気になるに決まってるでしょ

ケイコ

最後に会ったのが、もう1年前なんだから気になるでしょう

アンリ

もうそんなに経ってる？

アンリ

よく覚えてるね

ケイコ

覚えてるに決まってるでしょ

ケイコ

あなたが突然離婚するって言ってきた時に会ったのが最後なんだから

ケイコ

むしろ何で覚えてないのよ…

アンリ

しょうがないでしょ

アンリ

あの時は離婚の手続きとかで忙しかったんだから

ケイコ

それはわかるけど…

ケイコ

本当に大丈夫なの？

ケイコ

ミライはちゃんと学校に行けてるの？

アンリ

だから大丈夫だって

アンリ

いちいち心配しすぎだから

アンリ

ちゃんとやってるに決まってるでしょ

ケイコ

でも、やっぱりアンリも仕事しながら家事と育児をするのは大変でしょう…

ケイコ

まだアンリも小さいんだから

アンリ

何？

アンリ

私が離婚したのが悪いって言いたいの？

ケイコ

そんなことは言ってないじゃない

ケイコ

なんでそう、悪く捉えるのよ…

アンリ

お母さんがしつこいのが悪いんでしょ

アンリ

こっちだって仕事で疲れてるんだよ？

アンリ

毎日毎日残業でさ…

アンリ

お母さんの相手してられないの

ケイコ

そこまで言わなくても良いじゃない…

ケイコ

まぁでも憎まれ口が叩けるならまだ大丈夫そうね

アンリ

憎まれ口って何？

アンリ

私は忙しい合間を縫ってお母さんの相手をしてるの

アンリ

それなのにそんな言い方ないんじゃない？

ケイコ

そうね

ケイコ

ごめんね

ケイコ

離婚があって落ち込んでるんじゃないかと思ってたけど

ケイコ

問題なさそうで安心したわ

アンリ

1年も前なんだから、当たり前でしょ

アンリ

というか、そんなこと気にしてたの？

ケイコ

そりゃそうよ

ケイコ

アンリは意外と繊細なとこがあるから…

アンリ

意外とって…

ケイコ

暫く引きずるかと思ってたわ

アンリ

私ももう子供じゃないんだよ？

アンリ

子供産んで離婚も経験して強くなるんだよ

ケイコ

まぁ、いつでも困ったことがあったら連絡してきてね

アンリ

そうだなぁ…

アンリ

毎月の仕送りを増やしてほしいかな？

ケイコ

バカなこと言わないでよ

ケイコ

私だって毎月大変なんだからこれ以上は無理よ？

アンリ

え〜

アンリ

ケチだなぁ

ケイコ

ケチじゃありません！

ケイコ

金銭面以外なら協力するから

ケイコ

その時は遠慮せずに頼ってね

アンリ

はいはい

アンリ

私明日も早いから

アンリ

おやすみ〜

〜1ヶ月後〜

ケイコ

アンリ、今月分の仕送り送っといたわよ

ケイコ

確認しておいてね

アンリ

お母さんありがとう！

アンリ

いつも助かります！

ケイコ

はいはい

ケイコ

どういたしまして

ケイコ

こういう時だけ調子がいいんだから

ケイコ

普段は全然連絡よこさないくせに

アンリ

まぁまぁ、それは良いじゃないの

アンリ

そんなふうに小言ばっかり言ってると小ジワが増えるよ？

ケイコ

余計なお世話よ

ケイコ

ところで、アンリ

アンリ

何？

ケイコ

あなた、ミライのスマホから前の旦那の連絡先を勝手に消したんだって？

アンリ

うん、消したね

アンリ

でも、それ大分前の話だよ？

アンリ

離婚してすぐぐらいのこと

アンリ

何でそんなこと知ってるの？

アンリ

っていうか今更…

ケイコ

先日、ミライから前の旦那の連絡先知らないかって聞かれたの

ケイコ

私は連絡とったことなかったから連絡先知らないわって言ったんだけど…

ケイコ

何でそんなことしたの？

アンリ

何でって…

アンリ

当然でしょ？

アンリ

私たち、もう離婚したんだよ？

アンリ

それに私が親権持ってるんだよ？

アンリ

いつまでも前の旦那の連絡先持たれてても困るって

アンリ

それに連絡とられてても嫌だし

ケイコ

気持ちもわかるんだけどね…

ケイコ

ミライにとっては父親でしょ？

ケイコ

勝手に消すっていうのはやりすぎなんじゃない？

アンリ

いや、やりすぎじゃないでしょ

アンリ

勝手に2人が連絡取り合ってたら…って考えたら無理

ケイコ

実際に連絡とってたわけじゃないでしょ？

アンリ

でも、お母さんに連絡先聞いたってことは連絡する気があるっていうことじゃん

アンリ

そういうの本当にやめてほしい

アンリ

お母さんは注意してくれてないの？

ケイコ

別に注意するようなことじゃないでしょ？

ケイコ

ミライにとっては今でも父親なんだから

ケイコ

連絡を取りたいって思うことは自然なことだと思うわよ？

アンリ

そういう綺麗事はいいから

アンリ

私が母親として嫌だって言ってるの

アンリ

私はもう忘れたいのあんな奴のこと

アンリ

もう大嫌いなんだから

アンリ

というか人として無理

ケイコ

まさかそうやって子供の前でも言ってるの？

アンリ

だったら何？

ケイコ

何じゃないでしょ…

ケイコ

たった1人の父親なのよ？

ケイコ

ミライの前で貶すようなことはしないであげて

ケイコ

一緒に居た時はすごく懐いてたんだし

アンリ

はいはい

アンリ

わかりました〜

ケイコ

絶対わかってないでしょ…

ケイコ

本当にそういうのは子供の教育上よくないことだからね？

ケイコ

１度ミライと話してみたら？

アンリ

何を？

ケイコ

わざわざ連絡先を聞いてくるなんて

ケイコ

父親が恋しいっていう以外にも理由があるかもしれないじゃない

ケイコ

そういうことを話会えたらお互いにモヤモヤしてるものが晴れるかもしれないじゃない

アンリ

うーん

アンリ

時間があったらね

アンリ

じゃ、私仕事に戻るから

〜１週間後〜

ミライ

おばあちゃん、起きてる？

ケイコ

あら、ミライ

ケイコ

ずいぶん早起きね

ケイコ

まだ、お日様も起きたとこよ？

ケイコ

どうしたの？

ミライ

ヤケドしちゃったの…

ミライ

痛いよ

ミライ

どうしたらいいの？

ケイコ

ヤケド！？

ケイコ

どうしたの？

ケイコ

何か熱い物でも触っちゃったの？

ミライ

うん、今日遠足なんだけど

ミライ

お弁当作ってて…

ミライ

それで熱いお鍋触っちゃったの

ケイコ

大丈夫？！

ケイコ

ヤケドしたならママに言ってお薬塗ってもらいなさい

ミライ

ママいないの…ずっと…

ケイコ

え？

ケイコ

ずっと居ないってどういうこと？

ミライ

言えない…

ミライ

ママがおばあちゃんには言うなって言ってるから

ミライ

言えないの

ミライ

言ったらママに怒られるから

ケイコ

大丈夫よ

ケイコ

その時は、おばあちゃんが代わりに怒られてあげるから

ケイコ

どうしてずっと居ないの？

ミライ

どうしてかはよく分かんないの

ミライ

パパが居なくなってすぐくらいかな…

ミライ

ママは私が起きる前に家を出て

ミライ

私が寝る時間になったら帰ってくるの…

ケイコ

え？

ケイコ

ってことはミライが学校の準備とかご飯の準備をずっとしてたの？

ミライ

うん…

ケイコ

そっか、ミライはいい子だね

ケイコ

この前、パパの連絡先を聞いてきたのはそういうことが続いてるから会いたくなったの？

ミライ

うん…

ケイコ

そっか、わかった

ケイコ

少し待ってて

ケイコ

すぐにおばあちゃん行くから

ケイコ

ヤケドの薬も塗ってあげるね

ミライ

うん、待ってる

〜その日の夕方〜

ケイコ

アンリ、今どこにいるの？

アンリ

何？

アンリ

最近、連絡多いんだけど…

アンリ

普通に今家だけど

ケイコ

嘘でしょ

アンリ

へ？

アンリ

嘘じゃないけど…

ケイコ

まだ家に帰ってきてないでしょ？

アンリ

え…

アンリ

意味わかんない

アンリ

なんで見てもないのにそんなこと分かるの？

ケイコ

だって、家にいたらそんなに悠長なこと言ってられるわけないもの

アンリ

どういうこと？

ケイコ

家に娘がいないのよ？

ケイコ

普通の神経してる母親なら血眼になって探してるはずじゃないの？

アンリ

は？

アンリ

何言ってんの？

アンリ

娘がいないって…

アンリ

ミライがいないの？！

アンリ

一体どういうこと？！

アンリ

何処に行ったの？！

ケイコ

やっぱり知らなかったんじゃない…

ケイコ

家には居ないってことよね

アンリ

今はどうでもいいでしょ！

アンリ

家に居ないってどういうことよ！

ケイコ

今、ミライは私と一緒にいるのよ

ケイコ

それで、前の旦那さんの家にお邪魔してるわ

アンリ

え？

アンリ

一緒に…？お邪魔…？

アンリ

なんで？！

ケイコ

保護してもらったのよ

ケイコ

子供の面倒を見ない母親からね

ケイコ

私はその付き添い

アンリ

どういうことよ？！

アンリ

何で！

アンリ

ミライが何か喋ったの？！

ケイコ

そういうことを言うってことは自覚があったのね…

ケイコ

自分が母親として最低なことをしてるっていう自覚が

アンリ

喋ったのね…

アンリ

あれだけ、おばあちゃんには言うなって言ったのに

アンリ

はぁ…

アンリ

最悪…

ケイコ

最悪なのはあなたでしょ！？

ケイコ

小学校に入って間もない娘を1人家に残して何をしてたんですか！！

アンリ

何って…

アンリ

仕事だよ…

ケイコ

嘘つくのも良い加減にしなさい！！

アンリ

は？

ケイコ

新しい男の家に入り浸ってたんでしょ！？

アンリ

証拠もないのに良い加減なこと言わないでくれる？

ケイコ

証拠ならあります

アンリ

え？

ケイコ

なんで、このタイミングで元旦那と私が連絡を取ってると思ってるの？！

アンリ

そういや、何で？

アンリ

お母さんは連絡先も知らなかったはず…

アンリ

引っ越した後の住所は元旦那に伝えてなかったし…

アンリ

何で？

ケイコ

あなた、元旦那と娘を会わせてなかったようね？

ケイコ

面会も一方的に全部拒否してたとか

ケイコ

そんなことしたら誰だって違和感に思うでしょう

アンリ

まさか…

アンリ

元旦那が何かしたの？

ケイコ

そうよ

ケイコ

あなたのここ半年の動向を探ってたんですって

ケイコ

そして、先日ミライの現状を知ったのよ

ケイコ

だから、私に連絡してきて私が保護したのよ

アンリ

なんで連絡できるの？

ケイコ

あなたと結婚してたときに私の連絡先だけは聞いてたみたいだから

ケイコ

まぁ連絡してくることはなく終わったんだけど…

アンリ

ねぇこれってどうなるの？

アンリ

私訴えられるの？

アンリ

ミライの親権は？

アンリ

まさか私が悪いってことにはならないわよね？

ケイコ

この状況でまだそんなこと言うの？

ケイコ

本当、呆れるわ…

アンリ

何よ

アンリ

お母さんは私の味方でしょ？

アンリ

実の娘を差し置いて他人の味方なんてしないわよね！？

ケイコ

バカなこと言わないで！

ケイコ

私は可愛い孫の味方でもあるの

ケイコ

そして、その可愛い孫があなたよりも元旦那を選んだ

ケイコ

なら、私は孫の望みを叶えるよう全力を尽くすだけよ

アンリ

そんなのやだ…

アンリ

ねぇ、お母さん…

アンリ

私どうしたらいいの？

アンリ

訴えられるのも、親権を取られるのも嫌だよ

ケイコ

子供の望みを叶えることを1番に考えなさい

ケイコ

もう今のあなたにできることはそれしかないのよ

アンリ

なんでよ…

アンリ

私は母親なのに…

アンリ

なんでこんなことになるの？！

アンリ

私の味方がいないなんて…

アンリ

最悪！

アンリ

ひどい！

ケイコ

酷いことをしてたのはあなたでしょ！

ケイコ

こんな幼い子供を1人にして自分は他の男の元へ走って

ケイコ

娘が一緒にいる親よりも離れている親を選ぶってどういうことなのか分かる！？

ケイコ

あなたも身をもって辛さを知るべきよ

ケイコ

黙って身を引きなさい！

アンリ

やだ！

アンリ

私が一番ミライを大切に思ってるんだよ！？

ケイコ

大切に思ってるなら娘より他の男に走らないでしょ！

ケイコ

ミライがどんな気持ちで私に連絡してきたかあなたに想像できる？！

ケイコ

絶対に無理でしょう

ケイコ

あなたが起きたらまた居なくなると思うと怖くて眠れない日々が続いていたのよ？！

ケイコ

小学生が！

ケイコ

子供に対してそんな仕打ちができるような人はもう親じゃありません！

アンリ

あ！

アンリ

私から離れて行ったら、お母さんもミライに会うことができなくなるよ？

ケイコ

私は会えるわよ

アンリ

え？

アンリ

何でよ

ケイコ

だって、ミライがおばあちゃんとは会いたいって言うんだから…

ケイコ

それに元旦那さんだって

ケイコ

是非に

ケイコ

って言ってくれるんだから

ケイコ

会うわよ

アンリ

そんな！

アンリ

ズルい！

アンリ

私だけ除け者みたいに！

ケイコ

先に娘を除け者にしたのはあなたでしょう！

ケイコ

もうここには、あなたを必要としてる人はいないのよ！

〜後日談〜

ケイコ

その後、元旦那さんはアンリが浮気していたこと

ケイコ

育児を放棄していたことの証拠を持ってアンリを訴えました

ケイコ

また、受け取っていた養育費を私的に利用していたことが判明し返還命令が出されました

ケイコ

今では、アンリと離れることができてミライも幸せそうに暮らしています。

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タナカトシキ

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