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その日は、いつもよりちょっと早く学校に着いた

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朝日が差し込む誰もいない教室はとても新鮮だった

 ︎︎

…はぁ

窓を開けて、綺麗に光る雲をただ眺めた

 ︎︎

このまま時間が止まればいいのに…

その時

「おはよ」

見覚えのある声が後ろから聞こえた

 ︎︎

え、普くん…?

柚木 普

おはよ、◯◯

柚木 普

今日は来るの、早いんだね

 ︎︎

普くんこそ…

 ︎︎

何か用事でもあったの?

柚木 普

いやぁ?

普くんは椅子を引いて座り

少し欠伸をしながら伸びをした

 ︎︎

柚木 普

柚木 普

なに笑

 ︎︎

え?

 ︎︎

無意識に彼の方をじいっと見つめてしまっていた

私は、「なんでもないよ」と言って顔を背けた

柚木 普

ふーん

柚木 普

…なんか、めちゃくちゃ新鮮。

 ︎︎

なにが?

柚木 普

こんな朝早い時間に

柚木 普

教室で女の子と2人きりとか…

頬杖をついて窓の外を眺めていた彼がチラリと目を合わせてきた

 ︎︎

微笑んだ彼は、また少し真剣な顔になって

柚木 普

…◯◯はさ

柚木 普

楽しい?今の生活。

急に何を聞き出したのかと、少し考えてから答えた

 ︎︎

うん

 ︎︎

楽しいよ

柚木 普

そっか笑

 ︎︎

普くんは?

柚木 普

おれ?

柚木 普

おれはもう、すっごーーく

柚木 普

楽しいよ

そう言って笑う彼の顔には

何処か儚げな、悲しいような、何かが埋もれている気がした。

 ︎︎

普くんは立ち上がって、私の隣に来て外を眺めた

やっぱり何故か、すごく虚しそうで

 ︎︎

普くん…

柚木 普

ん?

気づいた時には

普くんの頬に手を伸ばしていた

柚木 普

◯◯…??

笑みを浮かべながら少し戸惑う彼を見て我に返った

 ︎︎

 ︎︎

…ごめ、ん

私は恥ずかしくなって下を向いた

熱い

耳が熱い

心臓の音もいつもより大きい

柚木 普

◯◯

 ︎︎

柚木 普

おーい

柚木 普

こっち見てよ…

私は何だか恥ずかしくて

普くんの声なんて、聞こえなかった

柚木 普

ねぇってば

パチッと目が合った

 ︎︎

あ、え…

手が、

普くんの手が、私の頬にある

あったかい。

 ︎︎

あ、普くん…?

柚木 普

ねぇ

柚木 普

なんで…

 ︎︎

いつもとは違う、ちょっと低い声が心地いい

私は、自分の頬に冷たいものが通ったのを感じた

柚木 普

泣かないで…

彼はその暖かい手で拭いてくれた

 ︎︎

…あれ

自分が涙を流していることに気づいた私は

頬を触って確かめた

拭っても拭っても

頬は濡れたままで。

柚木 普

…◯◯

 ︎︎

ごめん…笑

 ︎︎

おかしいな…なんで……

 ︎︎

なんか、止まんない……ッ

もう視界がぼやけて

何も見えないけど

優しく暖かい手が

頭を撫でてくれていた。

柚木 普

大丈夫だよ…

そう言って、私の背中に手を回して

包み込むように抱きしめてくれた

 ︎︎

…ッ、

普くんの、匂いがする

「ごめんね」

そう小さく呟く声が、確かに聞こえた

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎

 ︎︎

…ごめんね、ありがとう

そう言いながら、彼から離れようとした

柚木 普

まだ…

 ︎︎

柚木 普

こうしてちゃ、ダメ?

 ︎︎

さっきよりしっかりと抱きしめてくる彼の心の空白を埋めたくて

私も手を回して抱きしめた。

︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎ ︎

時間が止まったみたいだった

他の音は何も聞こえなくて。

でもやっぱり何か、

大切な何かを忘れてるような心地がして。

本当に、分からないけど

そんな気がしていた。

なんであの時、急に泣いてしまったのか

ずっとそればかり考えていた

 ︎︎

普くんと…

 ︎︎

ハグしちゃった…

思い出したら恥ずかしくなって

また鼓動が速くなるのを感じた

 ︎︎

はぁ…

このままじゃ、好きになってしまう

いや、もしかすると既に…

自分の気持ちを隠すように、自販機のボタンを強く押した

ー普sideー

︎︎ ︎︎︎ ︎︎︎ ︎

…あの時の涙が忘れられない

柚木 普

はぁ…

今日一日は、そればかり考えていた

柚木 普

俺…

柚木 普

うわ…マジで。

柚木 普

◯◯に、ぎゅーしちゃった…

思い出したら胸が縮まる感覚がした

…◯◯は、嫌だったかな

あの時、◯◯は何も言わなかったから

柚木 普

ふぅ…

俺は自分の額に手を当ててため息をついた

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎

そして、考えたくは無いことを

考えてしまった。

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎

ジュースでも飲んで忘れようと思って

自販機に行った

そしたら

柚木 普

あ…

◯◯が居た

柚木 普

◯◯…

声をかけようとしたが 足がこれ以上先に進まなかった

そしてそのまま、引き返した。

虚構の世界で出会った彼

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