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クリスマス
俺にとってのクリスマスは
バイトの時給がよくなる
街に人が増える
それぐらいのことでしかない
冬なんて大っ嫌いだ
その寒さが俺から全てを奪っていくから
エイジ
エイジ
エイジ
エイジ
エイジ
エイジ
エイジ
そういってサンタの格好をした女の子達が走っていく
トナカイ姿の俺はその場で在庫確認をしたりおまけの梱包をしたりする。
正直俺もクリスマス目前にこんな風にシャンパン売っても売れないだろうなぁって思っちゃうけど。
しばらくその作業をして肩凝ったなぁなんて一息ついてたらどこからか声が聞こえた
柔らかくて特徴的で冬を温めてくれそうな声。
声のする方向に行ってみたら寒さでかじかむ手でピックを持って、 鼻を赤くして一生懸命歌うその人。
洋楽だからなんて言ってるかは分からなかったけど純粋に綺麗な声だと思った。
彼女の歌を聞いている人は俺を含めて数人しかいなくて、その中でもトナカイ姿で歌を聞く俺を周りの人は怪訝そうな視線を向けたけど気にしなかった。
歌が終わってチップをギターケースに入れたかったのにトナカイの格好だったからお金を持っていなかった。
〇〇
俺より遥かに背の低い彼女にトナカイの耳を付けてあげた。
エイジ
俺がそう言うと真っ赤な鼻の彼女は
〇〇
と戸惑った顔でありがとうございますと言った。
今日はシフトは入っていなかったけど彼女の歌を聞きに駅前まで来た。
彼女はやっぱり今日も歌っていた。
こんなに魅力的に歌うのに行き交う人達はそのまま行き交う人で終わってしまう。
彼女の魅力を感じる暇も無いくらい毎日忙しいのかな、ぼんやりなんて考える。
歌が終わって、今日はちゃんと持ってきたチップを彼女のギターケースに入れて帰ろうとしたら、彼女の方から声をかけてくれた。
〇〇
エイジ
〇〇
〇〇
そういって昨日俺が付けたトナカイの耳を差し出す彼女
エイジ
〇〇
とさっきとは変わって柔らかく微笑んで言う彼女
ああ、もしかしたら彼女に魅力を感じるのはこの笑顔なのかもしれない。
その笑顔は俺の胸の真ん中に居るその人にそっくりだった。
エイジ
〇〇
エイジ
〇〇
〇〇
自販機の前で温かい飲み物を飲みながら彼女と話していた。
エイジ
〇〇
エイジ
〇〇
エイジ
エイジ
〇〇
エイジ
〇〇
エイジ
今までこの話は滅多に人にしなかったけど彼女になら言ってもいいような、そんな気になった
エイジ
缶のカフェオレは下に味が残ってるから後味が悪い。
でも久しぶりに外で飲むカフェオレはなかなか悪くない。
エイジ
こんなにもスラスラ言葉が出てくることに自分でも驚いた。
エイジ
〇〇
エイジ
自分の誕生日も、彼女の誕生日も、そしてクリスマスもある。昔はそんな冬が1番好きな季節だった。
エイジ
〇〇
エイジ
〇〇
エイジ
〇〇
エイジ
〇〇
そう言って俺の手を引いて彼女は走り出した。
冷たい追い風たちが頬に当たって痛かったけど久しぶりに生きている感じがしてよかった。
最初にいた場所に戻ってギターとピックを持った彼女が言った
〇〇
“君を守りたくて 涙に変わる前に もう一度 願う程に届かない crystal 100年先になっても 次の1歩は君とがいい Can I be your one? 星一つない雪の夜空 some day,some day...”
エイジ
トナカイさんのために、と歌ってくれたその曲は胸の奥深くから響いた
前も、今も、そしてこれからも彼女のことは何ひとつ忘れられない。
指輪を付けても俺の独りよがりって分かっているのに外せないし、声も笑顔も香りも抱き締めた時の感覚もまつ毛の長ささえも、全部全部忘れられない。
“100年先になっても 次の1歩は君とがいい”本当にその通りだ。
今でも時々あの時一緒に死ねたのならどれだけ良かったかと思うけど、そんなことを望むやつじゃなかったよね、そんなこと言ったら本気で怒られちゃうよって思い留まってた。
過去の傷を癒すためにも新しくスタートをきってみれば?と他の人は言う、でも俺は聞き流す。そしてこれからもきっと聞き流す。
だって、 “It's always you, It's always you, crystal snow”