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僕の葬った物語(Remake)

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僕の葬った物語(Remake)

1 - 僕の葬った物語(Remake)

♥

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2019年06月06日

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又来あすかさま主催

空想コンクール 参加作品

『僕の葬った物語』

物語葬儀屋さん

貴方の物語を

供養します

なんだこれ......?

なんとなく、何気なく

新聞をぽーっと見ていたら

そんな文面が、僕の目に入った

物語の葬儀って

どういうことだ

......

......

えー

しばらく、考えてみる

んー

分からない...

幾ら、考えても

自分の読解力、洞察力をもっても

理解までには至らない

一応物書きだから

想像力は
豊かだと思うんだけどなぁ...

*090-XXXX-XXXX*

思考停止になった僕は

小さく所載されていた電話番号に

直接問い合わせることにした

☎︎がちゃ☎︎

女性

はい、こちら

女性

"ストウリイ"です

ストウリイ

この葬儀屋さんの名前みたいだ

物語=STORY、ストーリー

"ストウリイ"

単純だけど、分かりやすい

抜群なネーミングセンスだと

僕は思う

今朝の新聞を見て

電話しました

女性

あぁ、そうですかそうですか

女性

お電話いただき
ありがとうございます

相手は、声色の温かい女性だった

安心感のある、ゆったりした声だ

僕が声フェチであれば

録音しておきたい声百選に

間違いなく選出するだろう

まぁ、それはそれとして

あの

女性

はい、何でしょう

物語の葬儀って

一体なんです?

僕の純粋な疑問を

彼女にぶつけてみる

話を聞いた感じでは

このサービスは

アーティスト向け

中でも作家向けのものらしい

例えば

伸び悩みの スランバーアーティストは

自らの作品を殺すことによって

気分をリスタートできるとか

例えば

愛着のある作品が ボツになった時には

その悲しみ、愛しみと共に

作品を弔って

それを「永遠の作品」に 仕立て上げるとか

若干

嗜好性の強めなサービスではある

まぁでも

面白そうだな

丁度

僕にもそういう作品は

たくさんある

登場人物やストーリーに 愛着はあるけれど

続きがどうしても"書けない"作品だ

ごろごろと

僕の本棚に眠っている

悩むことなんてないな

ひとまず行ってみるか

ストウリイ

本棚を漁って、三作四作

愛を込めた 未完成の作品を背負って

物語葬儀屋とやら場所に

僕は行ってみることにした

女性

ようこそ

女性

立花さんですね

女性

お待ちしておりました

どうも......

古い民家に、可愛らしい女性が

ぽつんと佇んでいた

なんだか、日本ではないような場所だ

ふわり

異世界に来たような気分

これ、全部

供養作品?

女性

ええ、そうですよ

部屋の至る所まで立ち並ぶ本棚には

ズラリズラリと

書籍が整然と収納されている

見たことのない作品ばかりだ

女性

一度、未完成作品を

女性

本の形にするんです

女性

そうすることで、一つの作品に成る

女性

本が"成仏"するんです

女性は、にこにこと微笑む

"本の成仏"

たしかに、原稿、データに 埋葬されるよりかは

書籍として形に残した方が

本としても嬉しいだろう

女性

こちらは"西尾 霏々 様"の作品です

女性

こちらは"北山 白露 様"の作品です

女性

こちらは――

へぇ

有名な人も、来るんですね

女性

手前味噌ではありますが......

女性は照れながら言う

この仕事に 誇りを持っているのだろう

僕も、思う

ステキな仕事だと

女性

女性

こちらは"須藤 里依 様"の作品です

あぁ

須藤さんの作品は僕も好きですよ

僕のセンスでは到底書けないような

バッドエンドストーリーの展開を広げる

憧れの作家の一人でもある

須藤里依

へぇ

やっぱ知らない作品ばかりだ

感嘆の声を漏らす

自分の作品が 彼女らと同じ本棚に並ぶこと

そう考えると 嬉しくてたまらない

あっ

僕はバッグの中を漁り

詰め込んだ四つの作品を取り出した

持ってきましたよ

作品

大好きな未完成作品なので

どうか供養をお願いします

女性

はい、かしこまりました

女性は、僕の大切な未完成作品を

大事に受け取ってくれた

女性

四作品、ご査収しました

女性

金額は七万二千円でございます

少し高い

けれど、それでもいい

金額が気にならないほどに

気分が晴れやかに成ったからだ

うん

こういう、感性の磨き方も

悪くないと

僕はそんなことを

心から想った

女性

どうぞ

え?

何故か、女性は僕に

七万二千円を差し出した

女性

"素敵な作品"に出会えた感謝として

女性

お受け取りくださいませ

この物語葬儀屋さんは

すなわち

ボランティアで運営しているみたいで

可哀想な作品をどうにかしたいと思った

一人の人格者、某作家が建てた

メモリアルホールなのだとか

その作家が

彼女らしい

彼女は素敵な作品と出会えたら

気持ちとして、時々

このようにお金を渡すようだ

まぁ

そんなこんなで

無事供養した作品は

七万二千円として 僕の手に戻ってきたのだった

後日談ではあるけれど

僕は、本屋でのんびりと 過ごすのが好きで

この日も、近所の書店で 本を物色していた

かわいらしいポップや表紙

おどろおどろしい作品

整然と、そして律儀に並ぶ本は

どこか命があるようで

やっぱり本って良いなぁ

なんて、思うのだ

そういえば

この間連絡が来て

ストウリイに供養した僕の作品も

"一つの本"として成仏したよう

供養して良かった

本当に......

また1からスタート

作品をたくさん作るぞ!と

意気込む

ん......?

ふと、新刊の棚を見ると

須藤里依の新作があった

自分本位ではあるけれど

今ではより一層 親近感が湧いてくる

小説家、物書きの繋がりって

こうやって形成されていくのかと

感慨に耽る

予告なしの出版か

どれどれ

......!?

中身を見て、驚いた

僕の供養したはずのストーリー

アイデアが

全て、その作品の中に詰まっていた

僕の愛した登場人物

ハッピーエンドにしたかったけれど 出来なかった物語が

この一瞬で

バッドエンドに染められた

......

須藤里依

スドウリイ

......

ストウリイ

あ......

あの、女......

目の前が、真っ暗に成る

僕の七万二千円は

僕のストーリーは

あの女の

スドウリイの

〇億円に成るのか

あぁ、成仏

この作品はいかがでしたか?

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コメント

15

ユーザー

深いですね..💭個人的に物凄く好みです✨ 私、1からスタートしますのでよろしくお願いします🙇‍♀️ 奥花です!

ユーザー

華灯さん コメントありがとうございます(*´◒`*) 物書きの世界では、パロディとかリスペクトといった形で存在しているのかもしれません✨

ユーザー

衝撃の結末ですね!まさかアイデアを盗むとは…。でも、物書きの世界には、よくある?ことなんでしょうかね…。

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