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辛い人へ

1 - 存在意義証明方法

♥

10

2023年02月11日

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う"……ひくっ

碧海

え、奏大丈夫?

碧海が屋上に行くと、1人の先客が嗚咽を漏らしていた。

……あ、だいじょうぶ…です。

その女の子は、泣き腫らした赤い目で無理やり笑顔をつくった。

碧海

僕でよければ、話聞くよ?

……っ

……その…

彼女がゆっくり口を開いた。

お母さん……私のこと嫌いなの

家に帰れば、いつも殴ってくる…

テストの点数が悪ければ、怒鳴ってくるの…

お父さんは、私がちっちゃい時に亡くなっちゃって…

だから、ずっとお父さんの分まで生きようとしたけど……

もう耐えられなくて

碧海

そっか…

碧海

奏は、頑張り屋さんだ

う…っ……うぅ……

碧海

でも、頑張ってもお母さんに認めて貰えないの辛いな

碧海

けど大丈夫

碧海

僕が全部認めてあげる

へ…?

碧海

図書室で毎日朝早くから勉強してるの偉い

碧海

辛くても頑張ってて偉い

碧海

誰かのために一生懸命なのも偉い

碧海

お母さんは、奏のこと嫌いかもしれないけど

碧海

僕はそんな奏ちゃんが大好きだ

…っ…ゔぅ……っ

碧海

大丈夫。奏はちゃんとやることやってるから。

碧海

けど、あんまり頑張りすぎるなよ?

碧海

倒れちゃったら、それこそ大変だから。

ん……気をつけます。

碧海

あんまり泣いちゃうと、目、もっと腫れちゃうぞ?

碧海

はい、ハンカチ

碧海

まだ使ってないから、安心して

……あ、りがと…

碧海

どういたしまして。

碧海

また何かあったら、いつでも言うんだぞ

うん…ありがとう

先生

授業で間違えてばっかりだ……

先生

生徒は話を聞いてくれないし

先生

聞いてくれてるとしても、碧海くんだけだよ

碧海

せ、先生?

先生

あ、ああ、すまんな

先生

どうした?

碧海

いえ、先生がプリント集めて職員室に持って来いと仰ったので

先生

ああ、ありがとな

碧海

いえ!

碧海

あの、先生!

先生

ん、どうした?

碧海

先生の授業は楽しいですよ

碧海

それに間違えちゃうことは誰しもありますし

碧海

気にしなくても大丈夫です

碧海

僕、これからも先生の授業、楽しみにしてますね!

先生

ああ…っ…ありがとな

碧海

ちょ、先生泣いてます?

先生

すまんな…涙腺が弱くて

碧海

な、泣かないで下さい!あ、ティッシュあげます!

先生

ありがとな

碧海

いいえ。ちゃんと泣き止んでくださいね

先生

ああ

碧海

では、次の授業が始まっちゃうので失礼します!

先生

ん、頑張れよ

碧海

ありがとうございます

碧海

失礼しました!

部活中

得点係をしていると優樹が独り言のように言った。

優樹

碧海くんは運動できていいよね

優樹

僕なんか、足を引っ張ってばっかりだ

優樹

足も遅いし、シュートは打てないし、鈍臭いし

碧海

そんなことないよ

碧海

優樹は、毎日一生懸命に頑張ってる

碧海

それに辛くても、部活は休まないし

碧海

準備も後片付けもしっかりしてる

優樹

けどそれは当たり前だから…

碧海

けど、当たり前なことでも、レギュラーの先輩たちはやってないよ?

優樹

だって先輩だから…

碧海

先輩だからやらなくていい訳じゃない

碧海

基本のことをちゃんとできてる優樹くんはすごいと思う!

碧海

それに、後輩にも好かれてる

碧海

そういうところは、僕もすごいと思うし尊敬する

優樹

…そんな言ってくれると思わなかった

優樹

ありがとな

碧海

いや、本当のことだからな!

碧海

それに早く一緒にレギュラーになろうな

優樹

ああ、すぐ追いつくよ

碧海

ふふっ、待ってる!

家に着くなり、碧海はベッドに倒れ込んだ。

碧海

はぁ……今日は疲れた

小さく呟いた声は、ひとりぼっちの家に響いた。

碧海

僕のことは……誰が認めてくれるんだろう

そう呟いた途端、眠気に襲われ碧海は深い眠りについた。

次の日の朝

ニュースを見て、碧海は震えた。

『昨日、午後8時頃、○○市のビルから高校生の女子生徒が飛び降りました。警察は家庭で何らかのトラブルがあったとみて捜査を進めています。』

○○市は、碧海の住む市だった。

碧海

……もしかして、奏…

彼女に急いで電話をかけた。

が、いつまでもコール音が続くだけで出る気配が全くない。

と、その時誰かからメールが来た。

碧海

こんなときに…っ

そう思ったのも束の間。

メールの相手は、奏と同じクラスの菜月からだった。

嫌な予感がして、すぐさまトーク画面を開いた。

そこには、昨日奏と話す碧海の写真があった。

菜月

これって、碧海先輩ですよね?

碧海

そうだけど

菜月

奏が亡くなったの知ってますよね?

碧海

やっぱり、奏なのか

菜月

先輩が何か吹き込んだんじゃないですか?

菜月

だって、学校ではいつも通りだったのに

菜月

急にこんなことになっちゃうだなんて

碧海

僕は関係ない

菜月

嘘つかないでください!

碧海

嘘じゃない

碧海

その時はただ相談に乗ってただけだ

菜月

そんなの信じません

学校に着くと、周りからの視線が痛かった。

碧海

(僕が犯人扱いされてるのか…?)

碧海

(いや、僕は関係ない…)

碧海

(何もやましいことはないんだから、大丈夫だ)

碧海の机には、酷い言葉が書き殴られていた。

碧海

……っ…なんで…こんな…

優人

碧海って偽善者だよな

結月

ね、優しいフリして人殺すとか怖すぎ

碧海

僕じゃ、な…

関わったら殺されるらしいな

碧海の親って死んでなかったっけ?

結月

もしかして、それも殺したんじゃ?

ギャーギャーと騒ぎ立てるクラスメイトに、碧海はついに怒りが最高潮に達した。

碧海

僕じゃないって言ってるだろ…

碧海

好き勝手に言いやがって

碧海

奏は勝手に死んだ

碧海

ただそれだけの事なのに、なんで俺が犯人扱いされなくちゃならないんだ…

碧海

ふざけるのも大概にしてくれ

碧海

それからもう、家族のことは口に出さないでくれないか?

碧海

思い出したくもない

碧海はいたたまれなくなり、その場から立ち去った。

優人

なんなんだよあいつ…

結月

ちょ、ちょっとからかっただけじゃんね

ノリ悪〜…

白けた教室が、いつもの雰囲気に戻ることは無かった。

碧海

みんなしてなんなんだ…

碧海

俺がそんなに悪いのか

碧海

俺がいたから、

碧海

俺が全部悪いのか

碧海

どうしろって言うんだよ

碧海

俺のせいにされてもわかんない…

碧海

何もわかんない

碧海

誰かを笑顔にさせたかったのも

碧海

優しく声をかけたのも

碧海

元気になってもらえるように頑張ったのも

碧海

全部全部無駄だったんだ

碧海

俺はいらない存在か

碧海

どうすればいいんだ

そう、うわ言のように呟く碧海の腕には切り傷がどんどん増えていった。

腕を伝ってこぼれた鮮血が白いベッドを赤く染める。

碧海

俺の存在意義は……

碧海

ないか。

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