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私は裏手の墓地を確認した後、マンション内を確認することにした。
そのマンションは築年数は比較的浅いマンションだが、どことなく薄暗い雰囲気を纏っている様に見えた。
ただ、特別何か異様な雰囲気があるのかと言うとそういうわけでもなく、かなり感覚的な"違和感"に近かった。
オートロックが付いているエントランスで、特定の番号を押して『呼出』のボタンを押すと、マンションの管理事務所に繋がる仕組みらしい。
管理事務所に経緯を説明し、職員の方の同行を条件に、マンション内への立ち入りを許可していただいた。
エントランスを抜けると、各部屋の郵便物がポスティングされるポストが右手に並んでおり、
その脇に住人に向けた掲示物が掲示される掲示板がある。
私はその光景を見て、そのマンションの"異様さ"をつぶさに見たと思った。
関係者以外のマンションへの立ち入りは固く禁じられております
いのちのホットライン 0120-XXX-XXX
NO MORE 自殺
掲示板には、10や20ではきかない数の、自殺抑止に関連した掲示物が掲示されていた。
私は今までいくつかマンションを見て来たが、これほどまでに夥しい数の掲示物を見たのは初めてだった。
職員の方に話を聞くと、どうやら昨日も6階から飛び降りがあったらしく、辟易しているという。
昨日飛び降りた自殺者は、マンションの住人でもない女性で、M橋から2時間以上かかる遠方からわざわざこのマンションを選んで飛び降りたようだ。
話によると、ここ数ヶ月毎月のように飛び降りを含む自殺や変死が相次いでいるとの事で、そういった経緯もあって張り紙を多くしているとの事。
ちなみに、効果は全くないという。
職員の方にお礼を述べ、マンションを出ると、通り雨か分からないが雨が降っていた。
マンション前の一部に水溜りができていたのだが、不気味なことに真っ赤に染まっていた。
まるでそれは血溜まりの様に。
自殺者の血が染み出しているのだろうか。 流石に職員の方に聞き出すことは出来なかった。
