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坂口安吾
ところで今日お三人が此の店に居たのは、
坂口安吾
何かの会合ですか？
織田作之助
此処に来たら太宰が居ただけだ
微睡〇〇
私も行き道に作之助が居ただけ
太宰治
今夜此処に来たら君達に会えるような気がしてね
坂口安吾
僕達に用事があったのですか？
太宰治
別にないよ
太宰治
唯、そうしたら何時もの夜になるかなと思っただけさ
太宰治
それだけ
と、治がグラスを持った手を上へ上げる。
坂口安吾
何に乾杯するんです？
太宰治
何でも良いさ
太宰治
理由が欲しいわけじゃない
織田作之助
…ストレイドッグに
微睡〇〇
…ふふ
作之助の言葉に、私と安吾もグラスを掲げる。
微睡〇〇
ストレイドッグに
太宰治
ストレイドッグに
坂口安吾
ストレイドッグに
カラン
グラス同士がぶつかる、高い音がした。
太宰治
ねえ安吾、其の鞄の中にカメラあった？
坂口安吾
えぇ、仕事用ですが
太宰治
写真撮ろうよ、記念にさ
坂口安吾
記念？
織田作之助
何の記念だ？
太宰治
此処に四人が集まった記念
織田作之助
何時も四人で飲んでるじゃないか
坂口安吾
…幹部殿の仰せのままに
太宰治
恰好良く撮ってよ？此のアングルが男前に撮れる
ｶｼｬﾘ
坂口安吾
僕は良いですよ
ｶｼｬﾘ
織田作之助
お
ｶｼｬﾘ
微睡〇〇
いえい
ｶｼｬﾘ
織田作之助
何故急に写真なんだ？
太宰治
今撮っておかないと、
太宰治
我々がこうやって集まったという事実を残すものが、
太宰治
何も無くなるような気がしたんだよ
ｼﾞｼﾞｼﾞｼﾞｼﾞ…
微睡〇〇
作之助、カメラ
ｶｼｬﾘ
其の通りになった。
其の日が我々の間にある目に見えない何かを写真に残す事が出来る、
最後の機会になった。
───また、四人とは云わずともこうして集まれるように。
私はもう一度此の時代を生きる。
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作品ページ
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