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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

冴内蒼空

………へっ?

蒼空の間抜けな声が響いた。

可愛シエル

何?

冴内蒼空

え、っと……え?

シエルの言葉が 上手く飲み込めない。

心拍数が上がっていくのがわかる。

膝の上で握り締めた掌は じんわり汗ばんでいる。

可愛シエル

可愛シエル

そういう話じゃなかった?

シエルは蒼空の様子に首を傾げる。

冴内蒼空

聞き間違い、ですか…?何か、聞き間違っちゃいけないワードが…聞こえた、気がして…

冴内蒼空

時に……なぜ、可愛さんは承諾してくださったんです…?

可愛シエル

………………あの、落ち着いて欲しい

何とも言えぬ圧に シエルは微妙な表情で返す。

冴内蒼空

あっす、すみません……

緊張をどうにかするため、 手元にあるアイスティーを ぐいっと飲み干す。

激しい動悸はまだ続くが それでも幾分かはましになった。

冴内蒼空

あ……いきなり話しちゃったことがダメだったんだろうな、っていうのは分かってるんだけど、その……すごく嫌そうだったから…

冴内蒼空

服を着てほしいって、言ったこと…

冴内蒼空

だから、何で良いって言ってくれたんだろう、って…

冴内蒼空

………あっ!いやっ!すごく嬉しいんですけどっ!

可愛シエル

………

可愛シエル

すいませーん、アップルパイくださーい

店員

かしこまりました

冴内蒼空

なんか…ごめんなさい。気になっちゃって…

可愛シエル

わたし着なくていいけど

めんどくさそうに吐き捨てられ 蒼空は慌てた。

冴内蒼空

え!やっ!すごく、嬉しいです…っ

冴内蒼空

あ、見てもらって分かったと思うんだけど、作ることに重点を置いていて…

冴内蒼空

普段着ているような服っていうよりは、フリルが付いてたり袖がバルーンっぽくなってたり、作り甲斐がある服っていうか…!

冴内蒼空

…けどこの子たち、作ったとこまでは良かったんだけど……

冴内蒼空

女装する趣味はもちろんないから僕が着るなんてこともないし…

冴内蒼空

かといって捨てるなんて出来ないし……

店員

お待たせしました

可愛シエル

はーい

蒼空の言葉が止まらなくなった頃 シエルの頼んだ アップルパイが運ばれてきた。

ここのアップルパイは ひとつひとつ焼き立てで 隣にバニラアイスが添えられている シエルのお気に入りだ。

シエルは器用にパイを切ると アイスと合わせて口に運んだ。

可愛シエル

(うま~~~~)

冴内蒼空

でね、今まではもちろん作って満足してたんだけど、

蒼空の喋りは止まらない。

冴内蒼空

可愛さんの存在を知って、僕が作った服が似合うかもしれない!って思ってから、この子たちはこのままで幸せなのかなって思うようになって…

冴内蒼空

この子たちを着てあげることがこの子たちの幸せなのかなって…

可愛シエル

(あ~おいしいな~)

可愛シエル

(てかそろそろソシャゲのライフ全部溜まってない?)

可愛シエル

(確認したすぎるな…)

何やら話は続きそうだったが、 繰り返される話にそろそろ 興味を失ったシエルは 蒼空の目を見て問いかけた。

可愛シエル

でー、どうするの?着るの?着ないの?

冴内蒼空

…!

冴内蒼空

着て…っ、着てほしいです着てください!

蒼空はガタッと音をたて 元気よく立ち上がって叫んだ。

店内がシーンと静まり返る。

冴内蒼空

目の前のシエルも目を丸くして 蒼空を見上げた。

シエルは驚いたのだろう、 口がぽかーんと開いている。

冴内蒼空

(やっちゃった~~~~!!!!)

冴内くんと可愛さん

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