毎朝通勤の度に
ぶつぶつ言っている一人の男を見かける。
男の近くの壁に寄り掛かり
内容を盗み聞きした。
目の前を女性が通る。
男
豚
と呟いた。
会社員
(なんだただの悪口か。)
次にビジネスマンが通る。
男
人
会社員
(あぁ、まさに普通の人間って感じの人だな。)
別の日、また盗み聞きしてみる。
やつれた男が通る。
男
牛
会社員
(牛?)
会社員
(どちらかと言うと痩せた鳥だが…?)
次に肥満の男が通る。
男
野菜
会社員
(野菜?)
会社員
(豚の間違えだろ?)
会社員
(いや、もしや次に生まれ変わる生き物)
会社員
(すなわち転生を言い当ててるのか!?)
その後、何度も観察するうちに
確信へと変わった。
ある日、思い切って男に
会社員
その能力を身につけさせてくれ
と懇願した
男は私を見つめ
私の頭に手をかざした。
それから男はいなくなった。
仙人だったのだろうか?
はたまた神か?
何にせよ、私は能力を身につけた。
それは期待するものとは違っていた。
単に
その人の直前に食べたものが 分かるだけだった。