凛
……ん…ぃま何時……だ?
ずしりと重たいまぶたを開け、枕元に置いた時計を取ろうとする。
凛
うぐっ……いった…あー?11時?思ったより寝れんかった…。
落ちてきた時計を顔面でキャッチし、ジンジンと痛むデコを抑えながら時計を見た。
凛
……昼もシフト入れてんのかな…。
凛
(……はぁ!?いや、待て。恋する乙女みたいだぞ凛。落ち着け。…好き…ではない!違う!なーにがシフト入れてんのかな…だよ!)
凛
はぁぁ、面倒臭いから恋は保留っつってんじゃん。…とりあえずご飯食べに行こう。昼から酒はやばいよ。終わった大人になっちゃうよ…。
自宅で作るのも面倒臭いので、近くの定食屋へ向かった。
凛
どもー。
見慣れた定食屋のおばちゃんは、のれんをくぐり挨拶をした私をみて、好きなとこ座ってねー、と言ってからそそくさと調理場に戻って言った。
凛
(第二の実家!!)
凛
すいませーん。いつもので。
はいよぉ、と調理場からの声を聞いてから私はスマホを取り出した。
凛
(んー、こう見ると私って結構友達多いよなー。通知が溜まりに溜まっとる。こんな社畜、友達だけが取り柄で、男運悪いし可愛げ無いし。)
凛
……自分で言って悲しくなってきたな。(ぼそっ)
ガラガラ、と扉が開き、のれんをくぐってきたのは若い男の子達。
凛
(あーそっか。ここの近くにデカい大学あったなー。うわぁー元気。キラキラしてる。それに比べて私は20代で荒んだ生活を送って…これ以上はやめよう。つらくなる。)
ゴト、とおばちゃんが机に置いたいつもの、通称生姜焼き定食。
それを見て、手を合わせたところでまたもや大学生と思わしき女の子達が笑いながら店に入ってきた。
凛
いただきます…。
凛
あーうま……ん!?
眞乃
あーね。確かにそれは分かる!
つい、あまり咀嚼出来ないまま、豚肉と米を飲み込んでしまった。
凛
(…イケメン女!!)
凛
っぅ……ゲホッゴホッ!
凛
(飲みこんで詰まった…!!水!)
眞乃
……あ。
凛
(うわぁー目合っちゃったよ。むせて涙目で水飲んでる所で目合っちゃったよ。)
凛
……ぷは。
眞乃
(ペコ)
凛
えっ……あ!
凛
(ぺこり)
凛
(律儀に会釈してくれるのいい子…いい子ぉぉジーンとしちゃう…。)
あれ?美波達じゃん!お前らもここの定食好きなの?なんて、先程の男の子の中の誰かがイケメン女に話しかけた。
凛
(ふーん。美波ちゃんって言うのね?呼び捨てされてんのね?やっぱイケメンであれ、あれだけ顔が整ってたらそらモテるわな。男の子〜顔デレデレだぞー。)
眞乃
あぁ、私は初めて来たんだ。
…あははっ確かに美味しそうだね。
楽しそうに話すイケメン女に少しだけ、ほんの少しだけ……
凛
(イラついちゃうのなぁ…)
凛
……ごくん。ご馳走様でした。おばちゃん、お会計お願いします。
お会計を済ませて、外に出ようとした時、誰かに手を掴まれた。
凛
……え!?なに!?
眞乃
あ、すみません。つい…。
凛
え、えと、なにか?
眞乃
…。今日も、来ますか?
凛
…い、行きます。
ニッコリと笑ってから席に戻ったイケメン女……改め美波ちゃんを見て私ものれんをくぐった。
凛
……ず…ず、ずるいでしょアレは〜っ!!!
凛
(あの男の子達に向けたのより最強の笑顔が見れた…。)
凛
恋なんか絶対…し、しないんだからな…。