凛
こんにちはー...
眞乃
……!いらっしゃいませ!!
凛
……っ。
凛
(なっ……んだあの殺人的な笑顔!!可愛すぎない!?やばいでしょっ……。)
眞乃
お好きな席、座ってください。
てこてこと私の方へ歩いてきて、にっこりと笑いながらそう言った。
凛
はい。ありがとうございます。
眞乃
……来てくれて嬉しいです。(ボソ)
凛
……〜〜っ!!
私の耳元におもむろに口をちかづけ、小声でそう言った。
凛
(やばいやばい…あの子ほんとに…あぁ……心臓が…いくらイケメンでも女の子よ……あの子は…女の子なの。私が好きになってもあの子は…)
凛
私を好きになるなんて、ありえないから……。(ボソ)
かたりとカウンター席に座り、美波ちゃんではなく、いつも元気いい挨拶をしてくれる男の店員にチューハイを頼んだ。
凛
……なぁんで私の事なんかいちいち覚えてんのかなぁ。
凛
(ここの店、結構人多いと思うんだけどなぁ…私みたいな歳の女も結構来てるし……。)
眞乃
ふふ、お姉さんが面白そうだからですけど?
イケメン女が私の目の前にハイボールを置き、目を細めてそう言った。
凛
わっ…!!ご、ごめんなさい。聞こえてました?
眞乃
確かにここの店は繁盛してるしね、お姉さんと同年代の女の人も来ます。
凛
まっじかぁ心の声が……。
凛
(心の声出てたんかよ私のバカ!)
眞乃
あははっ!私がお姉さんの事気に入っちゃっただけです!男運が壊滅的にないお姉さんっ?
凛
っもおおお!その呼び方やめて!!
凛
(ほんとに、笑い方似てるなぁ)
眞乃
……どうしたんです?そんな寂しい目して。会社でなんかありました?いや、今日は無かったのか。あそこの定食屋いましたもんね。
凛
へ?いや、別に……
店員
おい!美波!仕事しろー!
眞乃
あっ!すみません!
凛
…大丈夫ですよ、行ってきて下さい。
眞乃
すみません。また声かけさせてくださいね。
凛
(あーあ。店員さんにも下の名前で呼ばれてるんだねー。最近の女の子は男の子に結構下の名前で呼ばれるのかな…。)
凛
…ふぅん。なんか…ムカつくな。
凛
……えっ。
凛
(私今ムカつくって言った?!え、なに、普通対象の女の子が下の名前で呼ばれててムカつく?)
眞乃
お待たせしました〜!
私は、他のお客さんへ砂ずりのアルミ焼きを持って、笑顔で机に置く彼女を眺めた。
凛
……っはぁ、嘘でしょ?
眞乃
……!
凛
好き……。
眞乃
え……。
ハイボールを飲み干して、ガタリと席を立ち、急いで会計へ向かった。
凛
(あぁ、嘘でしょ。1番ありえないと思ってたのに。冗談の想像だったのに。聞こえてないよね。もうこの店には来れない。年下の、しかも女。最低最低最低!)
店員
380円になりまーす。
凛
すみませんハイボールだけで。
店員
え?あぁいえいえ。美波も喜びますし。あ、美波って言うのは……
眞乃
美波!美波……眞乃って、言います。LINE、交換して下さい。さっきの、私に言ったのかは分からないですけど、でも。あぁもう、言葉が……!
凛
……えっ…あ、ごっ……ごめんなさい。お釣りいりません!!
店員
えっちょっと!!
凛
死にたい死にたい死にたい。今すぐ死にたぁぁぁあい!!
凛
(恥ずかしすぎる、振られたくない。なんでLINEなんか聞いてきたの?!聞こえてたのに、なんで。それに……)
近くの公園までダッシュで走り、足を緩め、立ち止まる。
凛
…美波って…下の名前じゃなかったんだ。美波……
凛
眞乃……。
眞乃
っはい!
凛
っへぇ?!
眞乃
はぁ……はぁ…まじ、ほんと、足速すぎ。
凛
...な、なんで...。