海の一日

波の音が聞こえる

生き物の声や、物音ひとつも聞こえない

波の打つ音だけが自分の耳に入ってくるのだ

でもなんで波の音なんか……

キョロキョロと辺り一面を見渡す

目の前には綺麗な海、砂浜、たったそれだけだった

そうだスマホ！！と思いポケットを漁るが、ポケットには何も入っていない

気を失う前に何があったのか思い出そうとしても何も思い出せない

お酒の飲み過ぎのせい？だとしてもここはどこ？あまりにも見覚えが無さすぎる。

そして何より怖いのが砂浜と海以外に何も見当たらないのだ

どこを見ても海と砂浜が続いていて、何故か終わりが見えない

突然知らない男の人に話しかけられるが、誰なのか分からない

これも記憶が曖昧なせいで思い出せないだけなのか…？

たっつんと名乗る人は、先程すごく驚いていたのにも関わらずすぐに冷静になる

なんだかあまりにも受け入れるのが早いからこちらが驚いてしまう。

もしかしたらこの人は冷静な性格で受け入れるのが早い、とかかもしれない

とは思ったけど、正直そういう人には見えない。

気にしないもなんも、気になるって言ってるんだけどな

自分でも敬語に少し違和感があったから、たっつんにタメ口でいいって言われた少し気が楽になった

あれ

おかしい

俺もしかして、自分の名前以外覚えていないんじゃないの？

そもそも俺今なにしてるっけ

仕事？それとも学生？

俺酒は飲めてたよね、それは頭に残ってる

未成年飲酒では無いはず

ふと我に返ってみると、たっつんが心配してこちらを見ていた

たっつんはおでこが触れるか触れないかの距離でこちらを見ていたのだ

心做しか、たっつんの顔が少し赤くなったような気がした

たっつんは小声でなにかをブツブツと言ってるが、所々しか聞き取れない