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これは1年前の話である
近藤
ふっふふふーん(鼻歌)
近藤
(本を手に取って表紙を見る)
近藤
んーむ。恋愛小説かぁ...
近藤
最近、恋愛ばっかりだし、たまにはミステリー読まねぇとなぁ
読書好きの近藤は日頃から本屋に行くのがマイブームだ
今日もいつも通り、駅近の小さな書店に来た
近藤
(再び本を取り表紙を見る)
近藤
んー
近藤
(なんか違うなぁ)
近藤
(本を戻す)
？？？
あら、買うのやめちゃうのですか？
近藤
？
近藤
あぁ......はい。ビビっとこなかったので
？？？
ビビっと？
近藤
(いきなり声掛けてきてどうしたんだろうこの人は)
近藤
あ..はい。表紙を見て、1回ビビッときたら読んでみることにしてるんですよ。分かりません？ビビっとくるの
？？？
......分からないね(きょとんとしてる)
近藤
あぁ、そうっすか。なんかすんません(愛想笑い)
？？？
そういう選び方もあるかもしれないね
近藤
(......)
？？？
この本は？ビビっとくる？
近藤
......いや、全く
？？？
ふーん。そうかい(口を尖らせる)
？？？
これ、私の1番のお気に入りなんだけどなぁ
近藤
あぁ......なんかすみません。まじで
？？？
ふふふっ。(軽く笑う)
嘘よ。冗談
嘘よ。冗談
？？？
本に1番とか2番とか順位をつけるものじゃないわ
近藤
(......)
？？？
確かにこの本はお気に入りのやつだけどね
？？？
(その本を近藤に手渡す)
近藤
へ？(本を受け取る)
？？？
それ、読んでみてよ。面白いわよ
「裁きの罪」と書かれた。いかにも堅苦しそうな本を手渡される
近藤
えぇ、まじっすか
？？？
「ビビっとこない」から嫌かしら？
近藤
えっと......まぁ
？？？
確かに、この本は手を出しずらいかもね
？？？
表紙がこんな堅苦しかったらね
近藤
......
？？？
でもね。表紙って物語を表面上で見た、ただの絵なの
？？？
本好きのあなたなら中身を追求するべきだと私は思うわ
近藤
俺が本好きってよく分かりましたね
？？？
ふふふっ。だって、あなたのこと、ここで何回も見たことあるもの
？？？
相当本が好きじゃないと、ほぼ毎日ここには来ないでしょ？
近藤
ははは(爆笑)
そりゃそうだ
そりゃそうだ
近藤
(「裁きの罪」をぎゅっと握る)
近藤
分かりました....これ、読んでみます
？？？
ふふふっ。良かった。
凄く嬉しいわ。是非、感想聞かせてね
凄く嬉しいわ。是非、感想聞かせてね
近藤
うぃーす！(レジへ向かう)
？？？
待ってちょうだい
近藤
ん？
？？？
あなた、名前は？
近藤
......近藤
？？？
下の名前を教えてほしいのよ
近藤
あぁ.....その。
？？？
どうかしたの？
近藤
.....照美
？？？
ふふっ。(吹き出す)
見た目の割には可愛らしい名前してるのね
見た目の割には可愛らしい名前してるのね
近藤
うるせぇ！
？？？
それじゃ、またどこかで会ったら
近藤
あいよー
近藤
(急いで振り返る)
近藤
そういえば、あんたの名前を....
近藤
あれ？
その場にはもう誰もいなかった
近藤
......ふっ。
なんだったんだ。あの人は
なんだったんだ。あの人は
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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