らんが病室を後にしてから、誰一人として口を開かない
それぞれ…考える事があるんだろうな、と自己解決する
正直言って、俺も結構しんどい
"みこと"と"らん"。
二人同時に考えなければいけない事があると
やはり精神にくるものがある
一つはみことの今後の活動について
いつ頃回復するのか目処が立ってない今
リスナーに期間を設けた活動休止を発表するのは危険だろう
本当の事…事故の事をちゃんと話すべきだろうか…
そこはちゃんと、みことの意見を尊重したい
二つ、らんの精神状態
今のらんに対して、どのような接し方をすれば正解なのか…
俺達だって、傍観者は嫌だ
できる事なら助けたい
でも…
俺達に…何ができる…?
話を聞くにしても話してくれない
救うにしても方法が見つからない
らんの事が…わからない、何も
こさめ
いるま
こさめ
こさめ
こさめ
俺と同じ気持ち。
俺だって今できる最善を尽くしたい
みことの場合はメンタルケア
らんの場合、は…
すち
暇72
いるま
みこと
みこと
いつもの天然キャラが嘘のように
か細く、まるで天敵を前にした小動物のような声
みことは何も悪くないのに。
こさめ
みこと
暇72
みこと
静かに音を立て、扉が閉まる
俺のせいだ
みんなが帰った後一人、自分を咎める
元はと言えば、俺が道に飛び出したのが悪い
らんらんが…あんな事をするきっかけを作ったのは…
こんな時間に呼び出してしまった俺に全部の否がある
メンバーのみんなには無駄に悩む事を増やしてしまった
迷惑かけてごめんなさい…
仕事を増やしてごめんなさい…
押し付けてばかりでごめんなさい…
こんな俺で…ごめんなさい
こんな事を考えていると自然と涙が溢れてくる
改めて、普段どれほどの人に助けられているか
支えられているかを実感できる
でも俺は…その人達にちゃんと返せてる?
迷惑ばかりかけて、負担を増やしてばかり
こんな自分…大っ嫌いだ…
…少し…眠ろう
…あれ、ここって…?
俺、寝たはずじゃ…
もしかして夢…とか?
でも意識あるし…
何処か奇妙な雰囲気を纏ったこの空間
一体何処なんだろう… まるで異空間に飛ばされたみたいな感覚。
夢にしてもリアル過ぎる
自分の意志で動けるし…
俺は病院に居たはずじゃ…?
頭に出現し続けるハテナマークを他所に
どこからか…声がする
誰かが…泣い、てる…?
それはまだ幼く、か細い声だった
辺りを見渡しても姿は見えない
近くにいるのに遠く感じる存在
まるで…らんらんみたいな。
正直、子どもの泣き声はあまり得意ではない
過去の俺と…重なってしまうから
俺の家族はみんな優しく、
「ただいま」と言えば「おかえり」と返ってくる
そんな暖かい、大好きな家族だった
でも…
俺が5歳の誕生日だったかな
その日、お父さんとお母さん
二人共、「すぐ帰って来るから待っててね」と言い残し
俺一人、家に残された
…そう
永遠に。
親は帰っては来なかった
まだ幼い俺には何が起こったのか分からなかった
白い服を着て、目を瞑り横たわる二人を見つけ、
二人を起こそうと側に駆け寄ると
周りの大人はみんな
「可哀想に」
そう言って憐れむような目で俺を見る
優しくて大好きだった二人が居なくなった
もう戻ってくることは無い
二人と言葉を交わせる時は来ない
それだけ伝えられて
叔母さんの家に預けられた
そこからが、俺の本当の地獄とも知らずに。
…駄目だ
そしてまた、この記憶を同じ引き出しの奥底に閉じ込める
もう二度と…開ける日が来ないことを願って。
そんな事を考えながら歩いていると
今度は子供の歌う声が聞こえてくる
無邪気な、今を精一杯生きているような活き活きとした声
…でも
子供の声が段々と小さくなっていく
何故か好奇心が生まれ、子供の声に耳を澄ます
「…助けて」
途切れ途切れながらも、そうはっきりと聞こえた
みこと
やっぱり、あれは夢だったらしい
荒くなった息を整えようと肺いっぱいに空気を吸う
結局、あの子供は誰だったんだろう
何かを必死に訴えてくるような。
やはり、夢に変わりはないからか
少しずつ記憶が薄れていく
何故か大切で、忘れてはならないような気がする
机に置いてある紙とペンを手に取り
素早く手を動かす
さっき見た「夢」を忘れないために。
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